《改行表示》33.《ネタバレ》 バカップルかと思いきや共に好人物でホッとする。大学教授との友情物語かと思いきや逮捕、不法移民、送還と重たい展開に。ここに母親とのロマンスが絡んでくる脚本と、殊更に劇的にしない演出が見事ではありますが、本作は初めて主役を張ったリチャード・ジェンキンスの特筆ものの名演に尽きます。静かな佇まいでありながら喜怒哀楽の機微が滲み出る姿が沁み入るもので、とりわけ母親への恋心に身悶えさせられました。 何故レンタルしたのか思い出せない(情けない)本作は小品でありながら忘れ難い秀作でした。 これだから映画鑑賞は止められません。 |
《改行表示》32.《ネタバレ》 今、最も世界各地でのタイムリーな話題、移民や難民問題を婉曲法で扱っており、テーマとしてはかなり重要と言えるのかもしれない。主人公は、他者との交わりを避け、殻に篭りがちで孤独に生きる大学教授のウォルターという男。彼は学会での出張で、久しぶりにニューヨークの元居た別宅のドアを開けると、そこには全く見知らない男女が住み着いていたという、どう考えてもホラーかサスペンス映画としての要素しか窺えない展開。本作の脚本及び監督であるトム・マッカーシーは、こんな面白い出だしなのに、サスペンスやホラー映画に仕立て上げるつもりはサラサラなく、所謂、不法移民を社会問題として、如何に考えるべきかを真面目にこの映画で提示・考察しているのだ。 自分の領域に否応なく関与してくる他者との関わりの中で、惰性的で不活発だった主人公の意識の活性化と、失っていた社会性の獲得が描かれる。移民・難民は様々な国から豊かさを求め、或いは自国の政治風土を嫌って、又は戦禍を逃れ出国して来る。この映画の主人公、ウォルターは家に居る異邦人のカップルに驚愕しながらも、彼らの事情を知ると、親切にも自宅に住むことを認めてしまう。青年の方はシリアからの不法入国者でタレクだと名乗る、女も同じく不法滞在、セネガル出身でイスラム教だと言う。シリア人の男とセネガル人の女が、米国では法的には存在していないも同然なのに、ニューヨークの他人の家に勝手に住み着き、家族形態の関係を築こうとしていた事になる。 客観的事実を簡潔に述べるとそうなってしまうが、不法入国滞在という事実は、ウォルター個人にとっては問題視すべき事とは見なしていないのだ。そんなタレクとはドラム演奏を教えてもらう関係の時間を通じて急速に親しくなる。もはや友人のようなタレクが、ある日、地下鉄の駅で鉄道警察に逮捕されてしまう。以後、ウォルターは自分の弁護士を差し向けるなど親身に面倒をみる。訪ねてきたタレクの母親も家に引き入れ親身に面倒をみるのだから、ウォルターは決して人間嫌いという訳ではなさそう。心配する母親の思いも受け、釈放に向け奔走するが、個人の想いなど歯牙にもかけず、法の壁が立ち塞がる。 ウォルターはタレクやその恋人、それに母親まで幅広く人間関係を築く事で活力と生きる意味を見出す。ウォルターの視点がこの映画の思想・思惟とするならば、イスラム教国の7カ国からの入国禁止令を発令するなど、忙しく大統領令を乱発中のトランプ氏とは思想信条が対極的。本作は移民問題は閉ざすより開放してこそ社会も活性化に繋がるという、リベラリストとしての隠れた主張があるのかも。駅ホームでの演奏を願ったタレクに代わり、ラストでウォルターがやるせない思いをドラムに叩きつける。どうやらタレクに教わった、魂を込める演奏法を会得したらしい。 【DADA】さん [DVD(字幕)] 6点(2017-02-09 20:49:10) |
31.《ネタバレ》 これを若い頃に見たら多分「つまんね~」で終わると思いますが、オッサンになった今はしっとりとした上級の映画だということがわかります。教授と母親のいわゆる大人の恋もいい感じです。 【イサオマン】さん [地上波(字幕)] 6点(2017-01-01 14:16:20) (良:1票) |
《改行表示》30.明るい映画かと思ったら、暗かったね。 可愛そすぎるよ。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-04-19 17:08:20) |
29.《ネタバレ》 派手さは無いし控えめな演出なんだけど、とても心に残る映画ですね。音楽の素晴らしさを表した、ある意味情熱的なラストは素晴らしいと思います。 【Kaname】さん [DVD(字幕)] 7点(2016-03-30 02:23:51) |
28.アメリカの抱える闇というか苦悩の部分がよくわかる。重いテーマだけど重くなり過ぎず、主人公の人生が少しずつ変わっていく様子も良かった。 【noji】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-03-22 23:23:47) |
《改行表示》27.《ネタバレ》 妻を亡くして以来無気力気味に過ごしてきた大学教授がひょんなことから出会ったジャンベ奏者の青年との交流によって変わり始める。ありがちな友情ものかと思われた物語は青年の理不尽な逮捕により別のテーマが浮き彫りになってくる。 9.11以降のアメリカの闇に焦点を当てながらも映画は深刻になりすぎない。もちろん当事者にとっては深刻な展開だがそうなりすぎないのは音楽の存在があるからだろう。偏屈そうな主人公の顔をほころばせたのは青年タレクに教えられたジャンベ。「練習してる?」と逮捕後面会の時に聞く彼が印象的だ。タレクの母親は「あなたたちが好きなものを教えて」と彼の妻に聞き思い出を辿る。そして「オペラ座の怪人」。人は状況に関わらず楽しみや生きがいが必要なのだ。「オペラ座の怪人」の興奮の後に訪れる非情な宣告。あまりのあっけなさにどうしようもない無力感に襲われる。ラスト、主人公は青年が逮捕された地下鉄のホームでジャンベを叩く。大きくなるその音は彼の怒りだろうか。悲しみだろうか。そして日常の轟音にそれはかき消されていく。秀逸なラストだ。この音が「聞こえるか!聞いているのか!」 リチャード・ジェンキンスの演技も素晴らしいがタレクの母親を演じたヒアム・アッバスの存在感も良い。二人の関係を恋愛に発展するかしないかという微妙な塩梅に落ち着けている感じも良く、抑え気味かつ丁寧な演出も好感。しかし、タレクたちの祖国がシリアというのは物語上のこととはいえなんとも言えない気持ちになる。移民というもはやアメリカだけの問題ではなくなったテーマにしても公開当時よりリアリティーを持ってきている作品ではないだろうか。 【⑨】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-01-06 00:39:45) |
《改行表示》26.地味で気を抜くとすぐに記憶から消えてしまう映画だけど しっかりしたいい映画。 |
25.《ネタバレ》 撮影が良かった。いろいろなエンディングの可能性がある中で、かなり渋いところに着地させた作品。甘くしてしまえば「そんなものではない」と抗議されるからね。‥‥わたしもかつてはフェラ・クティの音が好きだったので、そのあたりで惹かれてしまった。主人公は西洋音楽(クラシック)~亡き妻への追憶~をおいて、まさにアフロ・ビートに目覚めるわけだ。彼の書いている論文もまた見直されることだろう。原題の「The Visitor」のダブルミーニングが、この邦題では消えてしまったのが残念。 【keiji】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-02-14 15:42:34) |
24.《ネタバレ》 地味で控えめだけど、いつまでも心が共鳴するような良作。人生に厭いた大学教授の出会う、予期せぬ扉。人と出会い、繋がることの幸福感と、そんな一市民のささやかなつながりすら絶つ9・11後のアメリカの現実。ドラマチックに盛り上げるような演出を控えたドキュメントタッチでまとめているけれども、唯一教授が感情を昂ぶらせるのは願いが叶わなくなったと知る移民局での場面。小役人相手に、どうにもならないことだけど、彼の叫び、憤怒は観る者すべての思いを代弁するように感じた。個人的に好きな場面は教授がストリートショップで店番をせざるを得なくなっちゃうトコ。「手作りです」って。こういう、ふっと笑みがもれるようなシーンを挿入してくる映画がほんと好き。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-09-19 23:54:46) (良:1票) |
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23.《ネタバレ》 その後、R・ジェンキンスを使い、そのとき何をなすべきだったのか。そしてその首尾は?を検証されてもいいぐらいの映画。ストーリー、脚本、編集、演出、すべて好み。しかし、主人公も精神的異邦人、すなわち移民であったと気付かされるところがにくいもんだ。 【monteprince】さん [DVD(字幕)] 9点(2013-08-08 00:59:18) (良:1票) |
《改行表示》22.《ネタバレ》 雰囲気は好き。けど登場人物の行動が優しすぎるというか話を展開させるための行動で、リアリティや一貫性は乏しいかも。最初は偏屈だなーと思っていた主人公に対して愛しさを感じられようになるのは、作り手がやりたかったことが成功しているのでは。 ただ、結局問題が解決できないままで台詞にあったように「我々は無力だ」というまま終わってしまうのが、少し物足りない。優しすぎる登場人物たちなのだから、ハッピーエンドでもよかったのでは(それは作り手がやりたい話ではないのだろうけど ラストの、きっかけとなった地下鉄で太鼓を叩くという主人公なりの問題への向き合い方は良かった。 |
21.《ネタバレ》 アメリカ移民問題を背景に、映画としても見応え。 ウォルターとタレクの楽器ジャンべによる音楽を仲立ちとした友情がメインかと思いきや、後半タレクの母親モーナとの関わりにシフトしていく構成に奥行き。 リチャード・ジェンキンズの抑え目で渋い演技に加え、「画家と庭師とカンパーニュ」にも出ていたモーナ役のヒアム・アッバスがとても魅力的、妻を亡くして心が干からびていたウォルターの心をうるおし、寡婦モーナがウォルターに親しんでいくのも自然。 「オペラ座の怪人」のエピソードが素敵で、異邦人同士のつつましい恋は「ターミナル」を思わせる。 自分の国を抜け出してよその国に住まなければ不幸、という状況そのものが哀しいことだけれど、タレクが米国に来なかったらウォルターがモーナと出会うこともなかった。 主要人物が4人だけで、タレクの恋人ゼイナブがウォルターを警戒するのにリアリティがあり、彼女はとっつきにくいが作品は可愛らしい。 ウォルターとモーナが一緒にならなかったのは、あのラストシーンにしたかったからなのだろう。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-05-08 07:00:02) (良:2票) |
《改行表示》20.《ネタバレ》 たいへんな秀作だと思います。派手なシーンは何一つないのに、しかも途中で結末はだいたい見えるのに、最後の一滴(ここが重要)までじっくり味わえました。おそらく低予算ながら、脚本をじっくり丁寧に作り上げれば、ここまでおもしろい作品ができるんだなと。主人公が「開発経済学者」という設定も、ウィットが効いています。それにしても、よりによってシリアとは…。ドラマ上の人物とはいえ、その後の母子の無事を祈らずにはいられません。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-04-19 01:13:55) (良:2票) |
19.人種や年の差を超えた友情が、911テロ後、アメリカで起きている変化によって引き裂かれていく。こういった社会問題を扱った映画制作は大事だし、本国アメリカでヒットした意味は大きいと思う。ただ、何ていうのか…映画的に優等生の型に嵌りすぎていて、やや面白みが薄い気がしないでもない。良い映画だとは思うんだけど…。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-03-23 15:06:37) |
18.この映画はいろいろなエッセンスを含んでいておもしろかった。 【ホットチョコレート】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-24 06:15:28) |
《改行表示》17.《ネタバレ》 今回、扉をたたく人というタイトルにひかれましたが、これはこれで良いと思います。 ただ、実際のところは、扉を『たたかれた人』と いったほうが正しい理解なのでしょうね 赤の他人に優しさを与えたことにより、更に扉をたたく人が訪れる。 それは彼にとって もちろんプラスであるハズ。 そしてそれが人間らしく生きてゆくという機会を与えてくれる人であったということ。 そして出会った彼らと共に苦を感じ、更に出会った彼女と苦を分かち合いながら同じ時を過ごす。 正直、ハッピーエンドを期待する類の作品ではありませんでしたが、記憶に残る重作。 移民ならではの苦悩とアメリカの移民受け入れ体制の現状を知らされた。 こんなところにも〝9・11テロ事件〟のシワ寄せが多大に影響してきているんですね とても心が痛むストーリー とても痛切なドラマです。 【3737】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-22 20:08:03) |
16.《ネタバレ》 ありがちな音楽交流ものかと思って最初はあまり期待していなかったのですが、何気ない地下鉄の1シーンからのドラマの動き方が凄い。前半にその辺の危機的なものを露骨に描いていないからこそ、中盤からの容赦なさが引き立っている。その中で、タレクを着々と画面から消していく手際(そして、ある一点以降はまったく出てこない)、モーナの行く末とそれに対する彼女の決断を「君は再入国できない」の一言で全部表してしまう表現力など、着実なステップを経ながら、秀逸なラストシーンへと至るのである(アップにしないのがいい)。リチャード・ジェンキンスの演技はもちろんだが、作中の人物同様、ヒアム・アッバスの的確なサポート力が、作品の感銘力を強く高めている。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-02-16 02:45:54) (良:1票) |
15.《ネタバレ》 隠れた名作と言わせないで、みんなに見てもらいたいです。クィーンズの街とウォルターが住んでいる世界があまりにも違っていて、収容所のある付近の臭いまで伝わってくるようでした。無駄がなく、落ち着いてみることができます。ラストの彼の怒りが伝わってくる演奏、すばらしかったです。蛇足&下世話ながら、もうウォルターがモーナと結婚しちゃえばいいのに!!!と思いましたがなーー(^_^) 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-08-06 15:15:52) (良:2票) |
《改行表示》14.序盤、奇妙な共同生活の始まりにワクワクさせられるのだけど、物語は次第に深刻な展開を辿る。 それでも、アフリカンビートの軽快なリズムに心が躍り、悲しみをほんの少し和らげてくれる。 特にガラス越しのセッションに希望を感じられたのが良かった。 これはハッピーエンドは望めそうにないと薄々感じ始めた頃に新たな訪問者が投入される展開も自然で好感が持てる。 ウォルターとタレクの友情物語で終わっていても感動的だったとは思うけど、このギアチェンジで終盤はなんとも切ないラブストーリーの様相を見せ始める。 これもやっぱりハッピーエンドは望めそうにないんだけど、2人の節度ある関係性はとても魅力的に感じられた。 深刻な社会問題を描いたテーマはとても重たくて、どちらが正しくてどちらが間違ってるとは言えないのかも知れないけど、扉をたたく人を招き入れる優しさがなければ、物語は始まらないんでしょうね。 それにしても、こんなにも落ち着きのある深い作品なのにジャンベの鼓動に思わず体が反応してリズムを刻んでしまうのは何故なんでしょうね。 ミトコンドリア・イヴから受け継がれたアフリカのDNAが僕にも刻み込まれてるんでしょうか。 【もとや】さん [DVD(吹替)] 9点(2012-06-03 19:19:04) (良:1票) |