1.《ネタバレ》 私の一番好きな監督であるペンエーグ・ラッタナルアーンの最新作が、東京国際映画祭のコンペ部門で上映されるときき、見に行った。
月曜日の夜9時過ぎから六本木ヒルズで上映という、まことに過酷なタイムスケジュール。
それでも見に行くだけの魅力を感じる監督なので、次の日の撃沈を覚悟して足を運んだ。
本作は、ペンエーグ・ラッタナルアーンが得意とするサスペンスものである。
ハズレは無いと確信しつつも、期待が大きいだけに一抹の不安も。
時間軸が複雑に前後する構成だが、やや分かりにくい。
得意とするサスペンスもので、東京国際映画祭のコンペ出品ということで、賞も狙えるかと思ったが、やや厳しい分かりづらさ。
ただ、こういった時間軸の交錯するサスペンスものって、一般受けもいいので、私の好みとは別に高い評価を受ける可能性はもちろんあるだろう。
結論としては、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督作品で今まで見た中では、最下位という私的な評価だ。
映像はやはりペンエーグ・ラッタナルアーンらしさが抜群に出ていて、特に薄暗い森林でのシーンは、ペンエーグ・ラッタナルアーンにしか撮れないであろう特別な魅力を感じ、わくわくした。
しかし、それ以上に話がくどくて飽きがきてしまった。
話が堂々巡りというか、何が正義で何が悪かをしつこく追い過ぎている。
正義と悪の価値観の逆転に継ぐ逆転を、めまぐるしく描いたという意味で、評価される可能性はあるが、どうにもくどさが目立ち、最後にいつ終わるのか?という致命的な状態になった。
ストーリーテーラーとしてのペンエーグ・ラッタナルアーンの才能には、やや疑問を持ち始めてしまった。
でもこれは決してペンエーグ・ラッタナルアーンを嫌いになったとかではない。
ペンエーグ・ラッタナルアーン監督に私が期待することが明確になっただけである。
ペンエーグ・ラッタナルアーン監督は、飛びぬけたセンスと個性を映像から感じることのできる稀有な監督である。
脚本は平凡な内容でいいので、その独自の映像美を、全面に押し出した作品を見てみたいと思った次第である。