7.《ネタバレ》 成り上がり系の映画は嫌いではないのですが、これはいまいち乗れなかったです。
勢力関係も人物相関図も複雑。状況説明、人物描写、背景描写は必要最低限。鑑賞者側に知識、知性、理解力を強く求める内容だと思います。はっきり言って不親切。ずっと頭フル回転で、ついていくのでやっとです。
マリクという人間は嫌いではありません。
入所してすぐ、靴を奪われます。ですがすぐ正面から取り返しに行き、返り討ちにあいます。
彼はきっちり反骨精神のある人間。それでいて、ここは正攻法が通じない場所。そういったことを印象付けるエピソード。
おそらくマリクは、そんなたいした罪で服役しているわけではないのでしょう。
そんな彼が、人を殺さざるを得ない状況に追い込まれてしまい、実行します。終盤では自分のために、立派な暗殺者になってしまいます。これはとてもハッピーエンドとは言えないし、サクセスストーリーとも言えないでしょう。
友人やその家族を大事にする。そういった、弱者への思いやりや優しさを失っていないことがせめてもの救いでしょうか。
逆に言えば、そういった生来善良な人間が、立派な犯罪者に生まれ変わってしまうストーリーなわけです。
マリクが立派な裏社会の人間として出所していく様子に、複雑な気分にさせられました。
内容が内容なだけに、成り上がっていってますよ、ってのがわかりづらい演出、構成になっています。ですのでカタルシスを感じることはありません。2時間30分もかけて、疲労感だけが残る作品。
最初に殺した人間の幻が予言を行うという設定が邪魔でしかなかった。最初は罪の意識から見える幻覚だと思っていたのですが、犯罪を助長するような予言をするあたりそうだとも言い切れず。
これはエンターテイメント作品ではありません。私とは相性が悪い作品です。見る人を選ぶでしょう。