4.17号を最後に計画終了となった筈のアポロ計画には、隠された「18号」の存在があったという導入から始まるフェイクドキュメンタリー。
そのイントロダクションは非常に興味深く、どのような映像世界が繰り広げられるのか、好奇心を駆り立てられた。
映像の精度はとても素晴らしかったと思う。
終始一貫、残された記録映像を繋ぎ合わせた風のフェイクドキュメンタリーの映像の完成度は高く、何故ここまで克明な記録映像が残されたのかという“理由付け”も含めて充分な説得力を備えていたと思う。
念願のアポロ計画に選抜され意気揚々と月面に向かう3人の宇宙飛行士が、目の当たりにする「真実」とは何なのか?
その核心に向けて映画は適度な緊張感と不穏さを伴って、比較的テンポよく展開される。
と、いい塩梅のサスペンスフルな展開を楽しめてはいた。
が、結果的には得られた顛末に対して「満足」とはまでは遠く及ばなかったと言える。
端的に言ってしまえば、物語の核心におけるアイデアが少々ありきたり過ぎた。
アイデア自体がありきたりなので、そこから導き出される映像的な表現も、どこかで観たという印象の範囲を出ず、驚きが無かった。
フェイクドキュメンタリーという手法に固執するあまり、現実感と非現実感の狭間で縮こまってしまっているような印象を覚えた。
この手の展開であれば、どう転んでも最終的に「これが真実かもしれない」と思う人はいないだろうから、もっと思い切った展開に踏み込んでも良かったろうにと思う。
結果的に、特筆する程の娯楽性は得られず、追求したはずのリアリティ感も薄れてしまったことは残念。
ただしかし、試み自体はとても面白かったと思うし、低予算であろう製作費の中で映像的なクオリティーは極めて高かった。
終盤までの緊迫感はなかなかのものだったと感じるだけに、ただただ惜しかったという印象。