1.TV版「たまこまーけっと」にて、主役たまこ演じる洲崎綾のとんでもないぽわぽわ演技にすっかり魅せられた私にとって、この本作の劇場版は「洲崎恐るべし」と驚愕せざるを得ない出来であった。
主役のたまこは、嫌味さの微塵もない全開のぽわぽわ感を以ってして、その物語をぽわぽふっくらわとした暖かさで包んでいくという、まさしく彼女の愛する「もち」のようなキャラクター。
そんな彼女を影ながら(時にはアカラサマに)懸想する幼馴染キャラこともち造が、たまこに想いを告白することで、半ば永続的に続くかと思われていた「たまこの変わらないぽわぽわ世界」は、ちょっとした変化を見せる。
「もちと愛すべき友人、家族、商店街のメンバーへの愛情」が殆どを占めていたたまこにとって、年相応のイロコイ沙汰は正しく青天のヘキレキ。
散々「もち造からの微かな(アカラサマな)ラブ・フラグ」を、持ち前の天然さでスルーしていたツケが廻ったかのように、彼女の周囲はギクシャクしていく。
世界は変わる。徐々にではあるが、その変化について行けてないと実感する時がくる。焦りが動揺に変わり、急に「お控えなすって」「かたじけねぇ」等と、思いもしないセリフが口から出てくる。
だが、皆がその「青春の岐路」的なモノを乗り越えて、前へ進んできたのだと、たまこは知る。そして、物語の最後にたまこは、そのぽわぽわとした足取りをフル稼働させて前へ踏み出す。
そんな当たり前の紆余曲折を、洲崎綾は絶妙な加減で演じ切ったと、私は思った。ブラボー、洲崎。
…あ。作品の感想としては「この甘酸っぱい世界に酔いしれてしまった私のマッチョさを取り戻すために、筋トレとかしたくなった」である。京都アニメーション、恐るべし。