1.《ネタバレ》 特攻に出撃しながらたまたま敵が不在であった事で生還できた柳井和臣さんをはじめ、元特攻隊員4名の方々が語る証言は
それぞれ90代でありながら佇まいも語りも明晰で、やはりエリートだと思わせる。
大戦で戦死した日本軍兵士の大半が餓死・病死であったことを踏まえれば、出撃直前まで食事には困らなかったというごく少数の海軍飛行予備学生の方々は
特殊な部類ではあるに違いない。貴重な証言であることは勿論だが。
作品として凡庸なのは、その貴重な証言に対して聴き手のレベルが低いからである。
記念館関係者らしき人物の、戦争は良くない的な半知性的コメントなど、作品の質を下げるだけだろうに。
2015年のこの次節に、あくまで「責任」から眼をそらす。テレビ的で八方美人の無難なインタビュー集に堕している。
作品中盤で、戦死された吉田信さんの日記が紹介される。これが活字のキャプションをナレーションと共に流すという代物なのだ。
恐らくは、旧仮名遣いで書かれた原本では観客には解りづらいだろうとの配慮なのだろう。
全くの余計なお世話だ。それでは、単に文の意味だけを差し出したにすぎないではないか。
肉筆の字面・筆跡に込められた感情を画面に提示させてこそ映画ではないのか。
柳井さんが披露してくれた、遺書替わりのアルバム。その感動的な紙面が一方にはあるのに。