2.《ネタバレ》 とある高級ホテルを舞台に、そこに集う様々な人々の11分間のドラマをモザイク状にして描く複雑な群像劇。この監督の前々作『アンナと過ごした四日間』がけっこう好きだったので今回鑑賞してみました。率直に言うと、さっぱり面白くなかったです。映画って監督の創作スタイルによって主に二種類に大別されると僕は思うのです。それは娯楽性に重きを置いたものと芸術性を重視したもの。前者の場合、作品にもっとも必要なのは徹底的な分かりやすさと有無を言わさぬ面白さ、一方後者に必要なのは多くの観客を置き去りにするくらいの難解さや独創性を有しながらそれでも一部あるいは多くの人の心に残る深いテーマ性です。本作は、恐らく後者。その場合でも映画として物語の中に必要最低限の因果律が働いていなければ駄目だと僕は思うのです。本作には、その因果律を働かせるための必要最低限な情報量が足りていない。たくさんのキャラクターが登場しそれぞれにドラマがあることは分かるのですが、全てにおいて具体性が欠落しているため一向に物語が入ってこない。わざと分かりやすさを排除したというのであれば、それを補うための例えば詩情溢れる豊かな映像美だとか知的好奇心を刺激する独創性などがあってしかるべき。ですが、本作にはそれが一切ない。大して面白くもないお話がだらだらだらだら垂れ流され、最後まで何のメッセージ性も残さずに終わってしまいました。残念ながら、これでは監督の独り善がりというほかありません。正直、芸術性以前の問題です。