3.《ネタバレ》 全くの予備知識無しで観ればそれなりに面白く感じられる作品なのだと思う。
だが、悲しいかな私は1967年(昭和42年)の生まれ、そう、「ベン・ハーと言えば1959年版」、「ベン・ハーと言えばチャールトン・ヘストン」
と言う刷り込みが完璧なまでに出来ている年代なのだ。
だからどうしても本作には中途半端感が否めなかった。
以下、思い付いた事を列記します。
1)ベン・ハーのルックスが普通の人過ぎる。
今思うとチャールトン・ヘストンは本当にはまり役だったのかと思う。
見方を変えれば、俳優さんはこの役を演じると言う事に物凄いプレッシャーを感じていた筈だし、
チャールトン・ヘストンの事を抜きにして考えれば(かなり難しいけど)中々の名演をしていたと思う。
2)イエス・キリストの扱いが軽い
1959年版では敢えてイエス・キリストの顔を正面切って画面に映さない演出に徹していた。
私は仏教徒だが、この演出がイエス・キリストの神秘性を高める事にかなり寄与していたと思う。
翻って本作、イエス・キリストを演じるのは美男の誉れ高い男優さん。
ビジュアル的には現代的で良いのかも知れないが、やや俗物的な扱いになってしまった様に思える。
3)CGだから良いという訳ではない
1959年版でのガレー船のシーンは明らかに模型だったが不思議とチープさは感じなかった。
手作りの模型を如何に本物らしく見せるか、制作陣の熱意が伝わってくる様な描写だった。
本作の場合、3D上映を想定してか遠近感を多用、それも船を見下ろす俯瞰では無く奴隷となったベン・ハーの視点からの描写が多い。
これが私に取っては逆効果だった様で、1959年版の様なスペクタクル感は感じられなかった。
戦車競争のシーンは・・・ 全てセットで実際に大勢の観衆が居る中で撮影された1959年版に勝る映像はこの世には絶対に存在しない。
4)音楽が軽い
冒頭に流れる壮大なファンファーレや、キリスト殉教の際に流れる美しい旋律等、1959年版は「これぞ映画音楽」といえる名曲そろい。
比較するのが間違いなのかも知れないが、本作では音楽から壮大さ・優美さを感じる事はなかった。
とどめはエンドクレジット、この手のテーマの作品に歌詞付きの現代音楽では悲しすぎる。
これでは余韻に浸る事も出来ない。
以上、6点は本作に携わった全ての人達への賛辞として。