2.《ネタバレ》 タル・ベーラを師事し、29歳の若さで自らの命を絶ったフー・ボー(胡波)監督の初長編映画であり遺作。
監督自ら感じる絶望感と閉塞感を投影するために4時間の長さが必要だったに違いないが、
興行として成り立たないとファイナルカットを巡り、プロデューサーからの激しい罵倒の末の死だった。
それだけにこの映画で綴られている物語は極めて陰鬱で気持ちの行き場のなさを被写体以外ぼかした長回し撮影で表現している。
誰もがささやかな希望を求めながら第三者の自己保身で裏切られ続け、やがて諦めていく。
誰もが自分勝手で余裕すらない社会。
その果てしない心の闇を色の少ない寒々しい映像とシルエットが突き刺さる。
居場所も帰る場所もない者たちが逃避行の末、新しい家族を築こうとするラスト、
希望の象徴である象の姿も見えないまま雄叫びだけが轟く。
意図的にカタルシスを排した終わり方で現実に帰る。
そう、その先に希望があるとは限らない。
ただ、最低最悪の世界でも人知れず自分の人生を紡ぐしかないのだろう。
皮肉にも監督の死がなければ注目を浴びることがなかった、その後味の悪さが残る。
死ぬこと以外に希望はないのかと言わんばかりに。