1.《ネタバレ》 極めて“惜しい”映画であることを前提とした上で、とても稚拙で、ダサい映画だったなと、落胆したことは否めない。
全編から滲み出る映画の低予算感を踏まえると、出演陣はちょっと驚くくらいに豪華な印象を受ける。脇役陣は特に名の知れたバイプレイヤー揃いで、それぞれクセの強いキャラクターを演じていたと思う。
まず良かった点から挙げるとするならば、前野朋哉演じる「本田」の一見凡人の風貌から溢れ出る強烈な残虐性とサイコパス感は、悪役キャラクターとしてフレッシュで、恐ろしく、娯楽性に溢れていたと思う。
彼と、組織の秘書役的な手下との間の抜けた掛け合いは、この映画世界の異常性と狂気性を増幅させていて良かった。
彼ら以外にも、各殺し屋コンビの即興的な掛け合いには、独特のユーモアが滲み出ていたので、もっとそれぞれのキャラクター性を活かして、殺し屋たちの見せ場を魅力的に映し出せていたら、映画全体の印象と娯楽性は変わっていたかもしれない。
詰まるところ、最も致命的だったのは、演出面やストーリーテリングを含めた映画作りそのもののチープさだった。
部分的な外しセリフは即興的で楽しかったけれど、本筋の話運びとセリフ回しは、あまりにも通り一遍で面白味に欠けていた。
そこに根本的な演出力の弱さも重なり、主演俳優をはじめとする役者陣の雑で薄っぺらい演技合戦には、正直なところ目も当てられなかった。
つくづく、役者というものは、演出によっていかようにも様変わりするものだなと思った。
加えて、音楽や効果音の使い方においても、的外れで耳障りになってしまっているシーンが多かったように思う。
あるヤクザの親分が石柱を怒り任せに蹴り続けるシーンがあるのだが、何故かボコボコと木製の壁を蹴るような効果音が当てられていて鼻白む。
他にも基本的な距離感や、小道具の使い方などの細々した箇所で「違和感」を感じることが多く、その都度「雑だなあ」と思ってしまった。
劇中、学のない戦闘要員が馬鹿にされるくだりがあるが、監督自身の映画的な学の無さが目に余る結果となってしまっている。
映画のテイストしては、韓国映画の「アジョシ」や「悪女/AKUJO」など、バイオレンスアクションのノリを強く感じたし、監督自身多分に影響されていると思う。
ただ残念ながら、韓国映画の芳醇な土壌によるクオリティーには遠く及んでいない。
部分的なアイデアと、前野朋哉の「本田」だけ輸出して、韓国でリメイクしてほしい。