1.《ネタバレ》 彼女の名は、ダイアナ・ナイアド。60歳を迎えたばかりのごく普通の初老の女性だ。これまで独身を通し、子供もおらず、唯一の家族は一匹の犬。それでもたくさんの友人たちに囲まれ、それなりに充実した毎日を過ごしていた。特に知り合って何十年にもなるボニーはお互いのことならなんでも知ってる親友同士。そんな彼女は最近、自分の人生に疑問を感じるようになる。「私、このまま普通のおばさんとして平凡に死んでいくのかな」――。そんな時にダイアナが思い出したのが、過去、自分が挑戦したものの失敗に終わってしまったある競技だった。キューバの海岸から一度も陸に上がらず対岸のフロリダまで泳いで渡るというマラソンスイム。そう、彼女は若かりし日、そんな無謀な挑戦を世界各国で行い成功させてきた有名なアスリートだったのだ。だが、60歳を迎えた今、そんな強い海流が行き交いサメや毒クラゲがうじゃうじゃいる海を2日以上かけて泳いで渡るというのは自殺行為に近いものだった。それでも後悔したくない。若き日の自分との約束を果たすため、彼女は大の親友であるボニーとともにそんな無謀な競技に挑むのだったが……。何の予備知識もないまま、ただ名女優アネット・ベニングとジョディ・フォスターが豪華共演ということで今回鑑賞。マラソンスイムなる競技を今回初めて知りましたが、世界にはこんな過酷なスポーツがあるんですね~。何日間も海の波に揺られ続け、食事も排泄も海に浮いたまま、ただひたすら対岸を目指して泳ぎ続けるというもはや常人には理解しがたい競技。いったい何のためにそんなことを?という疑問は言っちゃダメなんですよね(笑)。正直、序盤はそんな思いが強くて主人公に感情移入も出来ず、少し引いた目で観てしまいました。でも、最初の挑戦が失敗し、二度目、三度目と4年もかけてそれでも海へ出ようとする主人公。この狂気とも言える執念、ここまでいくともはや一周廻って応援している自分がいました。アネット・ベニングの鬼気迫るような熱演がそんな彼女の姿に説得力を与えている。クライマックスなんて、この人、ホントに何十時間も泳いできたんじゃないのと思えるような痛々しさでさすが名女優!時に辛辣な言葉をかけながらも彼女を献身的に支える親友ボニーを好演したジョディ・フォスターも素晴らしかったです。この二人のシスターフッド的友情もあくまでさりげなく描いていて好印象。最後、ようやくフロリダの海岸に辿り着いた主人公が周りの大観衆に見守られながらちょっとずつ歩いてゆくシーンはこちらも手に汗握って見守っちゃったよ。「手を触れないで!失格になるから」と周りの観衆に必死に訴えながら長年の親友を待ち受けるジョディ・フォスターがもう泣かせる。いやー、期待せずに観たらこれがなかなかの掘り出し物でした。8点!