2.《ネタバレ》 何が起こるかと心配しながら見ていたが、結果としては変に刺激的なところもなく穏やかに展開し、最後は心に染みる(泣かせる)物語ができている。
幼い頃は一対一で母親に向き合っていればよかった娘も、外部の目を気にするようになって母親と溝ができたりもしていたが、それでもレモネードを大事に飲んだのは、根底的なところで母親への思いは変わっていないという意味かも知れない。かつて自分だけが一方的にされていた心配を、母親のために自分がするようになったのは人格的な自立の兆しに思われる。
またエンドクレジットによるとスナックの客2人は娘の友人2人と同じ名字だったようで、つまり主人公が訪ねた生姜の親爺は、人懐こい感じの友人の身内だったのかも知れない。親一人子一人で孤立することもなく、友人を含めて周囲に見守られる環境ができていたようで、その点でもそれほど心配の必要はなかったらしい。
ちなみに個人的な知り合いで、これから一人娘が思春期に入るシングルマザーのことをこの映画で思わされた。これまでは何の疑問もなく母子で密着してきていたが、やがては次第に親離れ子離れが進んでいくことになる。特に義理もないので他人事だが突き放した気分でもいられない。自分も生姜の親爺くらいの立場でありたいとは思った。
出演者に関して、娘の「彩瑛」役の演者(辻千恵)は20代だが、見事に高校生年代の顔になって見える。個人的には夜に母親を迎えた場面のほか、朝に母親を見送る場面の表情が印象的だった。
その他、撮影場所は鳥取県の旧・気高郡気高町である(2004年に鳥取市に編入)。浜村駅や浜村温泉のある場所はもとの気高町の中心街で、映像に出た鍼灸整骨院もスナックもここにある。見えなかったが日本海に近い。なお「カイちゃんスタンプ」とは気高町内の販促スタンプである。
また娘が行った杉谷神社は、温泉街から直線1.5kmくらいなので歩いて行けると思われる(40m程度の尾根を越える)。この神社のある日光地区は名産「日光生姜」の産地とのことで、地形としては南北2kmほどの谷間であり、町に近いが周囲を山で隔てられた小世界になって見える。谷の奥には鷲峰山(921m)が見えていた。また娘が歩いた一本道は、町の方角から谷を横断して神社に至る通り道のようで、このあたりが風景として心に残った。