1.《ネタバレ》 実はほんのりサスペンス風味あり。ネタバレしていますのでご注意ください。
白状すると最後僧侶が鉄砲で無茶苦茶すると思ってました。選挙担当の役人を撃ち殺すか、さもなくば決闘を申し込むか。そのための鉄砲2丁。AK47で地獄絵図ですよ。逆に仏教ぽい。そんな物騒な映画でないのはポスターを観れば分かりそうなものですが、直前まで『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』と本作どちらを劇場鑑賞するか迷っていたため変な先入観があったかもしれません。こんな戯言黙っていれば済む話ですが、そんな殊勝な人間が長文レビューを投稿するはずもなく。いらん前置き失礼しました。
で感想ですが、シンプルにとても良かったです。ブータン初めての選挙。それは勝ち取ったのではなく与えられた民主主義。選挙担当の役人に対して選挙運動が原因で家庭不和に悩んでいる母親が放った「私たちが民主主義を望んだわけじゃない」という言葉に痺れました。民主化、近代化、貨幣価値。善って何?物事の値打ちは誰が決める?問い掛けは実に単純です。でも「当たり前」に染まっている身では気づけない。気づけるはずもない。私にとって有益な学びがある映画でした。かといって説教臭さは一切ありません。ウイットに富む軽やかな社会風刺が実に小気味よく、ハートフルなのに意外とサスペンスなドラマに合っていました。派手な展開こそありませんが(もしかすると序盤は退屈するかも)、しっかりお出汁の効いた旨味たっぷりの物語だったと思います。後味もスッキリで良いオチ。誰も不幸になっていません。流石幸せの国ブータンですね。観られる映画館は限られると思いますが、日本人にこそ是非お勧めしたい映画です。