55.《ネタバレ》 舞台となる「グラスハウス」は雰囲気満点。
ジムにホームシアターまで揃っているし(良いなぁ……住んでみたいな)って思えましたね。
海に面したレストランや、海辺の道路など、美しい場面が多い点も良い。
ヒロインのルビーが夜中にプールで泳ぐ場面なんかは、神秘的でエロティックな魅力がありましたし、ラストのカーアクションも中々迫力あったしで、ビジュアル面の満足度は高かったです。
では、シナリオ面についてはどうかと考えてみると……ちょっと微妙でした。
上述の通り、ビジュアル面には拘りが感じられたんだけど、それが裏目に出てる部分もあるんですよね。
夜のグラスハウス内での場面はともかく、まだ昼間のはずの校舎ですら薄暗い場面ばかりとか、流石に「やり過ぎだよ」って呆れちゃいます。
どうしても薄暗い場面ばかりにしたかったのであれば、そこは脚本でフォローして、不自然さを消すべきだったんじゃないかと。
主人公姉弟にはジャック叔父さんがいるはずなのに「グラス夫妻と一緒に暮らすのが嫌なら、施設に入るしかない」って言われるのも不思議だったし(その後、ジャック叔父さんに引き取られて幸せに暮らしてるとしか思えないエンディングとも矛盾してる)脚本の詰めが甘かった気がします。
それと、主人公姉弟があんまり「良い子」とは思えなくて、応援する気持ちになれなかったのも残念ですね。
例えば、麻薬中毒のエリンがルビーに寄り添うように死んでしまう場面なんかでも、観客は事前に「幼いルビーと仲良しだった頃のビデオを観て、感傷に浸る場面」を知ってる訳だから、ついエリンに同情しちゃう展開なんだけど、ルビーはエリンの死体を気味悪がってるだけなんです。
ルビーは観客と違ってエリンの悲しい一面なんか知らないから当然の反応ではあるんだけど、こういう描き方は、どうしても「感情移入出来ないヒロイン」って印象になっちゃいます。
この映画では最も重要だろう「良い人かと思われたグラス夫妻が、実は悪人だったと判明する場面」あるいは「主犯であるテリーに止めを刺す場面」にカタルシスが欠けているのも、如何なものかと。
特に後者に関しては、テリーが発砲する前に轢き殺してるので正当防衛って感じもしなかったし、もうちょい上手くやって欲しかったです。
「絵を描くのが趣味なヒロインが、防犯装置のパスワードをスケッチブックにメモする」とか、良い場面も色々あっただけに勿体無い。
何より悲しかったのは、せっかくグラスハウスが素敵だったのに、結局そこから飛び出して普通の道路でクライマックスを迎えちゃう事ですね。
せめて最後はタイトル通り「グラスハウス」で決着を付けてくれてたら、もっと良い形に仕上がったんじゃないかなって思います。