1.おそらく欧米以上に日本でこそ「カルト」なアレックス・コックスが、初めてハリウッドで”雇われ監督”として演出した1作。しかし案の定、プロデューサー側とモメて、編集と音楽を別物に差し換えられて公開されたそうな。まあ、コックスに何を望んで起用したのかは知らないけど、このヘンクツな奇人…もとい「奇才」が、従順に言うこときくワケないじゃん。で、日本じゃコックスが編集&音楽を入れ替えたヴァージョンが公開され、たぶんビデオもそちらの方だと思うのだけど、見てみるとこれが実に「まっとう」な出来映え。ラスベガスのカジノで延々と勝ち続ける青年をめぐる不思議な人間模様が、まるでよく出来た一幕芝居のように描かれていくんですな。それにキャストも、ビンセント・ドノフリオやレベッカ・デモーネイ、ビリー・ボブ・ソーントン、マイケル・マドセンなどの渋い顔ぶれが揃っているし。クライマックスの大銃撃戦と、それに続くラストシーンも実に「クール」かつ良い意味でセンチメンタルな寓話っぽくまとめ、コックス、やろうと思えばこんな上質なエンターテインメントだって撮れるんじゃんと、意外(!)な一面を見せられた思いです。もっとも、ハチャメチャななかにも鋭い世界観や形而上学を吐露するあたりがこの監督の真骨頂と信じる”コア”な向きには、ちょっと物足りないかもしれないけど。