50.毎夜の寝床。寝息を立て始めた二歳の愛娘の頭にふと手をかざし、発している熱に少し驚く。
幼子が寝入る時にこんなにも熱を持つということも、実際に子を持って初めて知った。
そんな我が子も、もうほんの少し時が経てば、自分の部屋で一人で寝始めるかもしれない。
そして、もしかしたら親が知らない時間に出会った“モンスター”に怯えたり、嬉々とするかもしれない。
そういうとても近い未来のシーンを想像し、重ねると、この映画の感動とそれに伴う価値は殊更に深まる。
僕にとっては、初めて映画館で観た“ピクサー映画”が、この「モンスターズ・インク」だった。
「トイ・ストーリー」に今ひとつハマれなかった僕は、今作を劇場で観るまではピクサーのアニメーションにどこか懐疑的な部分があり、「どうせ大したこと無い子ども向け映画だろう」と完全に舐めきって鑑賞し、ものの見事に打ちのめされたことを良く覚えている。
精巧なアニメーションの動きに魅了されたのではなく、繰り広げられる映画世界に息づくキャラクター達の「演技」に感動した。
もし幼少期にこの映画を初めて観たならば、サリーやマイクは絶対に実在しているということを信じて疑わなかったことだろう。
これは僕にとって極めて重要な映画体験であり、世界中の人々にとっても同様だったろうと思う。
今回、我が子が二歳になったばかりのタイミングで、12年ぶりに鑑賞。
モンスターが「こども」という“モンスター”に遭遇することで巻き起こるエンターテイメントの巧さの“真実味”も充分過ぎる程に理解できる。
感動は決して色褪せることもなく、自分自身の環境の変化に伴い更に深まったことは間違いない。
きっとこの先何度観ても、サリーたちの活躍と、ブーとの出会いと別れに涙が止まらないと思う。