1.《ネタバレ》 やられた!やられたチギよ、井筒監督!年初めからこんな素晴らしい青春映画を見せてくれるなんて!もーワタクシはアンタについて行くッチギ!でも実は、結構不安もあったチギ。個人的に井筒作品の中でもケンカ青春モノ(「ガキ帝国」と「岸和田少年愚連隊」)は苦手だったし、ひょっとして「スパイ・ゾルゲ」みたいな妙に啓蒙臭い、説明的な映画だったらどうしよう、と思ってたのだけど、そんなのは全くの杞憂だったチギ。確かに日朝の歴史とかに関して説明的な台詞もあったりしたけど、チッチッチ、そんなアラ探しをしていては本質は見えないチギよ。これは何よりもまず、あっつーい、ぬくーい青春映画であり、恋愛映画なのだチギ。恋を阻む障害を前にした若者が悩み、傷つき、壁を乗り越えようと奮闘する・・・その姿はいつの時代、どこの場所でもある普遍的なテーマだし、この作品はたまたま在日朝鮮人の少女に恋をした高校生の話だったというだけの事。そしてこの映画では沢山ケンカのシーンが出てくるけど、このケンカは往年の名作「トラック野郎」シリーズと同じく、決してただの「暴力」ではなく(その証拠?に鉄棒とかも使ってるけど決して頭は殴ってない)、「祭り」であり「コミュニケーション」であり「生きている証」なのだチギ。だからこそ何度も出てくる頭突き(パッチギ)や飛び蹴りが爽快で感動的で泣けるチギ。若手の俳優の演技もやたら熱いし(特に朝鮮高校の番長役の高岡蒼佑が主役を食う勢いで素晴らしい)、クライマックスシーンも大いに泣けるチギ。そうそう、これは他の井筒作品にも言える事だけど、この作品には絶対的な悪人が登場しないチギ。井筒監督は主役たちだけでなく、例えば朝鮮高校を目の敵にするいかにも体育会系右翼みたいな空手部大西も、或いは毛沢東かぶれのダメ教師も、後に学生運動に傾倒していく主人公の友人もそれぞれ愛情のある描き方をしてるチギ。登場人物たちの未来を暗示するラストに込められていたもの、それは「みんなそれぞれ考え方も違うから、生き方も違うし、時にはぶつかり合ったりもするやろ。でもそれぞれが、それぞれなりに精一杯生きていこうや。そりゃ生きてく中で色んな困難もあるわなあ。そーゆー時はな、パッチギかましたれ!」という力強ーいメッセージ、すなわち「生」に対する強烈な「イエス!」なのだ。おっしゃあ、俺も行くぜ、パッチギるぜ!