5.《ネタバレ》 伊坂原作ものは相性が悪かった。「アヒル」然り「フィッシュ」然り、ドラマの嘘臭さと、偽善が鼻につくからだ。
しかしこれを観て、もしかしたら私は少々読み違えていたのかもしれないと思った。
私は、はじめこの映画のクライマックスの選択、親子の食卓での遣り取りに、またか・・・と正直思ったのだが、ふと作中で胸打たれたある言葉を思い出し考えを変えた。
もしかしたらこの物語は真の信念について描いているのかもしれない。
言葉で言うは容易いが、行いは難し。自分の見たい生き方になれ、である。
少々飛躍するが、たとえばテレビで貧しい国の映像をみて、かわいそうだとは誰もが思うが、なにか行動を起こせる人間は、はたしてどれだけいるだろうか。
法の下では愛する人が傷付けられたときでさえ、復讐することは罪だ。
この映画が問うのはそこかもしれない。
犯罪が許されるとかはもちろんありえないが、主題はそれではない。
倫理や法において正しいかではなく、信念として正しくあれるのか。
先天的に植えつけられた宿命に抗えなくとも、人は環境によって生かされる。
そんなことを考えながらエンドロールを眺めた。