2.《ネタバレ》 緊張感に溢れ、重々しくかつ渋めの作風となっており、自分好みの作品に仕上がっている。監督としてのキャリアが浅いこともあるのか、あまり変なところに凝ることなく、オーソドックスで分かりやすい構成ともなっている(リアリティにはこだわっているようだが)。クライムサスペンス、アクション、ラブストーリー、ヒューマンドラマという要素をバランスよく、重厚かつリアルに描き込んでおり、エンターテイメント作品としても人間ドラマとしても、どちらの面からも楽しめられる。アフレックは役柄的にぼんやりしたところはあったが、ジェレミー・レナーが“街”とともに生きるという決意が表れたような演技をしている点も評価できるところ。
父親との関係、幼なじみとの関係、元恋人との関係、現在の恋人との関係、街を仕切るボスとの関係など、自分が住む“街”、自分と切り離すことができない“街”について、あまり多くを語らずに必要最小限に留めているところも好感がもてる。
獄中にいる父親に会って、母親の話をするだけでよい。
幼なじみとは罪を犯し、むかつく奴を殴り、昔話をするだけでよい。
元恋人とはヤッて、泣きつかれるだけでよい。
街に仕切るボスとは交渉して、逆に脅されるだけでよい。
それぞれを詳細には描き込んでいないが、しがらみに絡みつかれていることがよく分かるようになっている。
幹と枝の部分をしっかりと描き、葉っぱのような部分をカットしていることはなかなかの思い切りの良さを感じられる。
エピソードも効果的に使われている。
母親に関するエピソード、自分のために獄中に入ってくれた幼なじみのエピソードなど、実際に描くよりもエピソードとして挿入することの方が心に響き、大きな効果を生んでいるように感じられた。
スケートリンク、土いじり、恋人との会話などもさりげなく描き、それらを効果的に使っている。
ただ、ラストのヒゲ面は多少蛇足かもしれない。
彼が警察に捕まったのか、野垂れ死んだのか、幸せに暮らしているのか、罪を償っているのかといったことはそれぞれの観客の判断に任せてもよいのではないか。
あまり描かないことが効果的だったので、手紙のナレーションだけでもよかったかもしれない。