2.《ネタバレ》 始まって1時間はついていけます。世界観の定義付けを隅々まで行います。そのあと1時間はデビッドリンチの頭の中をさまよい歩くかのように映画がブラウン運動を始めます。観客は常に解や手がかりを模索しますが、観客の思った通りの展開とは逆方向を選んでいきます。最後の1時間は脱出にやけになります。全く無関係っぽい伏線たちが、なんとなく何度かリフレインされ、この現象は何かの解なのかもしれないと必死に思考しますが、なかばどうでもよくなります。「好きにしろよ」と思う頃にはなんだかハッピーエンドです。
デビッドリンチなりにそれぞれの要素には隠喩を入れているだろうなという予感と、想定外の展開とで、不思議と寝ないで3時間見れます。眠くはなりますよ。常に重低音のノイズが流れていて、だんだん慣れてくるといい子守歌になってきます。1時間に1回くらいびっくりするシーンがあるので起こされます。
どこかしらにデビッドリンチの一貫したシナリオがあり、それを不器用に不器用に、婉曲に実に婉曲に、一切説明を排除し、表現してるんだろう。そして前向きに積極的に映画を受け止め続ければ、ひっくり返した宝石箱のように散りばめられた妖しい魅力にあふれる伏線が、だんだん方向ベクトルをそろえ始め、実は全て意味のあるシーンに思えてきます。
今回の場合は何か巨大な悩みか呪いから解放されたよろこびが浮かび上がってきました。そこに自信が持てないのが不安ですが、デビッドリンチはそれでよいんだと思います。
なお、めでたく400レビュー達成いたしました。記念すべき400記事。