11.緑が画面に過剰に溢れてくると、つい用心してしまうところがある。緑を見ると、直線的に「いやし」とか「やすらぎ」がイメージされるので、その手には乗らんぞ、と心構えしてしまったりする。損な性格だ。この映画でもちょっとそうなって、でもまあ、これ緑が主題の映画なのだから仕方がない。黄緑の世界から次第に深緑の奥へと分け入っていく話だ。スイカの赤、焚火の朱、古木の白などが、深緑と対比される。ただその深緑の奥の世界は、やや観念性が強くなりすぎた気がする。映画として出来がいいと思ったのは、前半の黄緑の世界の方だった。田を渡る風、果樹の葉。老人たちが周囲にいたことがけっこう大事で、それが観念に走らせない厚みになっていたのではないか。また全体としてヒロインに統一したイメージが結べなかった。茶畑で鬼ごっこになるあたりの明るさが、私には唐突すぎて感じられた。 【なんのかんの】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-07-21 12:00:55) |
10.《ネタバレ》 確かに、この作品に対して意味不明だとか説明不足だとかいう論評が多いのは頷けます。しかし、この監督さんがやりたいこと、描こうとしていることは、実際にはすごくシンプルでわかりやすいテーマです。それは端的に言うと「横軸の概念」というやつです。昔の人はみんな、横に生きていた。生活は「横軸のスタイル」で、人間関係は「横軸の関係」で、生きる為の知恵や思想はみな「横軸の考え」というものを持ってた。だけど現代人というのは、みんな「縦軸の概念」なわけです。みんな縦で生きてるから、横で生きてた頃の大切なものを忘れかけている。それを思い出させるきっかけは自然や森であり、自然や森というのは人間にとって必然的に殯の要素が備わっている。平たく言うとこんな感じです。だけどこの作品で描こうとしているそれは思念的で「目には見えない」ものですから、それを映像で見せようとするのはなかなか難しい。この作品がどれほどその「目には見えないもの」の可視化に成功しているか。その部分においては、もっともっとやれるところがあるんじゃないか、という、全体としての物足りなさ、不足さを感じずにはいられない。だから、着眼点はいいし、こういう、画で語ろうとする試みは応援したいのだけれど、まだ力量不足な感は否めないのが正直な感想です。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-05-01 00:46:07) |
【Yoshi】さん [CS・衛星(邦画)] 2点(2008-03-24 23:46:37) |
8.シシ神がでてきそうな深い森で、死の悲しみを抱えた二人が惑う。この作品の良さはまだよく分からなかったけれど、とてつもなく悲しいときに見たら心が慰められるのかもしれない。 【さそりタイガー】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-03-10 01:25:38) |
7.いろいろ言われているこの映画だけど、映像だけで何かしらの物語を語ろうとすると、たぶんこんな感じになる。描いているのは、お墓参りの話。しかも、どれだけ大げさに表現したとしても一回のお墓参りで、死者への弔いが完了する訳がない。その意味で、この映画は、はじめる前と終わった後で、とくに死者への弔いにまつわる事態は進行も後退もしていないといえる。むしろ、生き残った人間のどれだけ切実な行為であっても、それが死者に届くことはなくて、生き残った人間自身を癒す方面にしか作用しないのであれば、この映画の主人公二人は自分自身を癒しただけともいえる。「自分で自分を癒すしかない」というこの映画があぶりだす真実は、河瀬監督の表現スタイルをあらわしてもいる。そのことに共感できるかどうかがこの作品を楽しめるかどうかを決める。 |
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6.酷評喧しい作品ですが、そんなに悪くありません。たしかに最初は「『新日本紀行』が始まるのか」という感じだし、状況が掴めなかったり、セリフが聞き取りにくかったりする部分もありました。でも、風景と相まった素朴で武骨なストーリーには説得力があります。それに何より、主人公がいい。久しぶりに、凛とした強さと美しさを持つ女性を見た気がします。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-01-19 01:54:00) |
《改行表示》5.《ネタバレ》 何度もひきつけられそして感動した。意味を理解しようとすることなく自然に生と死を表現していて案外ストレートな作品。 知り合いに理解できない、という人が居たけど何でも起承転結を求めるだけが理解することじゃないと感じた。 ネットで調べてみるとカンヌだとか周りの評価からこの作品へ公平なレビューが出来ていない方も色々いましたが カンヌの名誉ある賞、ということを抜きにして観ても充分素晴らしい作品だった。 邦画としてはとてもいい作品。美しい自然の風景があり目に見えない何かを感じることが出来る。 明確に分かりやすい意味をお探しならハリウッドでもどこにでも沢山ある。 多少難解でもこういう作品があるのはとても良いことだと思う。 萌えの朱雀も沙羅双樹も良かったがこちらも良い。 【05】さん [地上波(邦画)] 9点(2008-01-17 17:19:42) (良:1票) |
4.面白くない。一言これに尽きます。100人中95人は意味が分からずつまらないと言うでしょう。残りの評価する5人は外国人じゃないかな。演技は2人ともがんばっていたと思う。日本人でも意味がわからない作品が外国で賞を取るのは不思議です?北野映画を真似てるんですかね。この監督の作品は明らかに賞を狙いすぎの感があって嫌い。外国のインテリには受けるかもしれない。でも果たして外国人にも内容が理解できるんだろうか?そして自分の私生活も切り売りすればいい。でもこの監督ってそんなに権威なの?内容意味不明、国内興行で成功しない。でも外国で賞取った。マスコミはすごいと言う。この繰り返しですよね。 【たかちゃん】さん [CS・衛星(邦画)] 1点(2007-10-11 12:44:18) (良:1票) |
3.認知症の男の生前の妻との思い出のシーンとか新米介護士とベテラン介護士の車中の会話とか妙にかったるいというか、物語を進めてゆくための説明が不器用というか、かと思うと茶畑でのかくれんぼに代表される美しい画がときおり飛び込んでくるもんだから、私にとっての実に微妙なラインを行ったり来たりしていたのだが、森に入ってしばらくしてから一転。雨が降り、森が森の本性を現したとき、女は「死」に直面する。純粋に「生」を欲する。生きたいという叫びの激しさにたじろいだ。一つの画の衝撃によって他はどうでもいいと思うことはよくあるが、これは画ではなく、生と死というテーマを元に進行していた物語に突然あまりにもテーマそのものの本質みたいなものを露骨に見せたストレートさにびっくりした。そしてそれは新鮮でもあった。もうひとつ言うとそのストレートさを森が許容する。あとはその驚きの余韻にひたっているうちに映画は静かに終わった。もちろん生の象徴であり死の象徴である完全な森の描写によって、画とテーマはすでに直結していたからこそ、そこに驚きと感動があったのだと思う。 【R&A】さん [映画館(邦画)] 7点(2007-10-10 16:27:55) (良:2票) |
2.《ネタバレ》 「殯の森」は、映像の中に両極端に二分する面が実に顕著かつ対照的に描かれていると思います。それは、原風景や水や川や森といった自然の持つ力強さの部分と、認知症の老人と介護士の女性の2人に代表される、この先どうなっていくのかが見えない孤独な心を持った人間の弱い部分です。ドキュメンタリー上がりの河瀬監督がどういう狙いで作られたかは分かりませんが、人間は脆い心を持っており、その拠り所として弱い者同士が惹かれ合うのは至極当然であり、その形は様々あるのだなという事。この主人公2人も、互いに寂しさ以上に互いを必要としている(男は女に死んだ妻を重ね、女は男に自分を必要としてくれている)という部分で惹かれ合い、離れる事ができない関係だったのだと思います。男女が主人公という事でもそこにエロティシズムは感じません。むしろ人間同士の根底の部分での結びつきを感じました。森の中であの認知症の男が亡くなった奥さんの墓を見つけた時、介護士の方は何故泣いたのかな?とか分からない部分も多いですが、世界で認められたこの作品を1度は観ても面白いと思います。感情移入出来るかどうかは、ご覧になる方の置かれている環境によるかもしれません。緑を基調とした作品の景色は文句無く美しいです。 |
1.なかなか頑張っていて、おもしろい映画ではあるのだけれど、認知症のリアリティが全く欠ける点で、しらけてしまうのは、やむをえないであろう。 また、カンヌで受けそうな、インテリ向けの映画という見方もできるし、押しつけの価値意識が鼻につくともいえる。 【みんな嫌い】さん [映画館(邦画)] 4点(2007-09-11 12:44:08) |