5.《ネタバレ》 「レポゼッション・メン」=“回収人”というタイトルの意味を聞いただけでも、このSF映画の大体のストーリーは想像できるだろう。
“人工臓器”の販売が一般化している近未来。高額商品のため、購入者は当然の如くローン支払いとなる。支払いが滞った“滞納者”の前には、“回収人”が現れ、問答無用に臓器を回収していく。当然、臓器の回収はそのまま「死」を意味する。
一流の回収人として活躍していた主人公だったが、ある事故により一転、自分自身が人工臓器の利用者となり、回収人に追われる立場となってしまう……。
まあよくあるプロットだと思う。定石通りに、追われる立場となった主人公は、かつて勤めていた大企業に対峙し、反撃を始めるわけだ。
追っ手や企業の社員たちを次々に殺していく主人公の様は、よくあるヒーロー像に見える。
臓器を巡る独特のグロテスクさと、軽快なアクションシーンが絶妙に融合し、痛快なSFアクション映画だなと好感触を覚え始めた頃、致命的な違和感に気づく。
それは、この主人公の行動には、「正義」が伴っていないということだ。
大企業が展開する人工臓器販売はれっきとしたビジネスであり、その“回収方法”には非人道的な要素が含まれているものの、映画世界の中では、“滞納者”に対するあくまで合法的な“取り立て行為”である。
そして、主人公が置かれた危機的な立場も、あくまで“滞納者”である故の必然的な状況であり、それに真っ向から反発して企業関係者を抹殺していく様には、実は道理が無い。
その不道理を通したまま、映画は結末を迎える……。
「ああ…これは駄作だな」と諦めかけた次の瞬間、このSF映画は「真意」を見せる。
成る程。終盤にかけての強引な展開や、整合性の無さ、ジュード・ロウのおよそ彼らしくない妙に大味な演技や、フォレスト・ウィッテカーをキャスティングしている理由までが、途端に鮮明になる。
まさにSF映画らしい「転回」であり、その真相の領域がいったい何処までを含んでいるのかなどということを考えると、より一層ストーリーに深みが増してくる。
あまり過剰な先入観を持たずに、最後までシンプルな思考で観ることが出来たなら、存分に楽しめる映画だと思う。