216.《ネタバレ》 この作品が、後世の武侠映画に与えた影響は大きいのでしょうね。
ただ、それゆえに、現代の目からすると斬新どころか、陳腐にさえ見えてしまうのが残念なところ。
それだけ模倣されてきた画期的な作品という事ではないか、と頭の片隅では感じているのですが、観賞中「これは凄い!」と唸らされる場面には遭遇出来ませんでした。
とはいえ、終始退屈だったという訳では決してなく、壁走りや竹の上を走る場面、剣を使って敵の剣のギザギザ部分を一気に削ぎ落とす場面などは面白かったし、テンションも上がりましたね。
今時はこんなシンプルな、分かりやすい引っ張り上げ方のワイヤーアクションには中々お目に掛かれないという事もあり、何やらストップモーションで動く怪獣を見るような、時代が違うからこその目新しさもありました。
ではストーリーはどうかというと、残念ながら好みとは言い難い内容。
まず、主人公であろうイェンの立ち位置が「悪い事をしてしまって大人に追いかけられている子供」という印象なのです。
善人とは言い難いし、かといって格好良い悪党でもない。
作中の雰囲気からしても、いずれ彼女に罰が当たるという事は随所から感じ取る事が出来るので、彼女に感情移入して物語を追いかけると、酷く居心地の悪い感覚を味わう事になるのですよね。
じゃあ俯瞰で楽しもうと距離を置いて観賞すれば、何だか家出娘が引き返せずにどんどん深みに嵌っていくのを見守るだけのような気分になって、やっぱり楽しめない。
結末もハッピーエンドとは思えず、スッキリしない後味となってしまいました。
好みの映画ではない、と断言出来たら気持ちも楽なのですが、上述のアクションの数々など、面白かった部分も確かに存在しているのが、悩ましいところですね。
著名な竹林での攻防シーンも、非常に緑が印象的で、白い着物が幻想的で、美しさすら感じました。
とかく知名度が高く、エポックメイキング的な作品という事もあり、何とも判断が難しい。
この映画は面白いかと問われたら、素直に頷く事は出来ませんが、そういった諸々を含めて、観る価値はあった映画だと思います。