44.男女の違いにより視点も受け取り方も異なる傑作、名作は数多くあるが、この作品ではそれが著しく表われるのではないだろうか。この映画でのテレンス・スタンプ演じる主人公の男、おそらく幼い頃からイジメられたり仲間はずれにされたりで、一人孤独な生活を送ってきたに違いない。美しい蝶の収集だけがすべてを忘れさせてくれる唯一の楽しみなわけだが、やがて一線を大きく越え狂気の世界へ入ってゆく。視線を斜めに反らしややうつむき加減に歩く姿は、男である私の心情からするとむしろ哀れみを誘い気の毒でもある。(もちろん監禁は許されぬ犯罪です) 監督は万人が認める名作かつ大作である「ローマの休日」「ベン・ハー」などで有名な名匠ウィリアム・ワイラー。しかし個人的には、本作を含め「必死の逃亡者」など社会の闇の部分を斬新な視点と切り口で格調高く描き切る作品こそ偉才振りを発揮していると思うし、また好きですね。それは、常人と常人ではない人間(常人と紙一重かもしれないが)とを対峙させることにより生み出される独特の緊張感、そして監督ワイラーならではの異色心理劇、とでも言えばよいかもしれない。本作に於いても、見る者を困惑させる意外なラストは当時斬新だったに違いなく、それはあたかも将来起こるべく犯罪を予見しているかのようである。ラング作「M」、ヒッチコック作「サイコ」などのお手本があったにしろ、サイコ・サスペンスの傑作であることに疑う余地はない。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-10-22 15:50:11) (良:1票) |
43.別に気持ち悪いクリーチャーや幽霊など出てこなくても面白いホラーは作れるというお手本かと。この主人公は確かに常軌を逸してるが、気持ちが全く分からないって人は逆に少ないんじゃないかと思う。 【ぷりんぐるしゅ】さん 5点(2004-01-21 20:33:02) (良:1票) |
42.育ってきた環境、考え方の違い、現在の状況から決して受け入れあうことの無い男と女。男は一方的な愛で女にも自分を愛するように求める。でも、絶対に男の想いが成就することは無い。男は、心のどこかで気づいていながらも、それを認められない。救いようの無い、絶望と恐怖、そして狂気がそこにある。彼の館には棺だけが増えることだろう。 【pony-boy】さん 7点(2003-12-21 13:29:14) (良:1票) |
41.徹底したイギリスタッチ。ジリジリするサスペンス、ファーストシーン、網を持って蝶々を採ってるテレンススタンプをロングで撮った平和な光景、そしてカメラ、でも採った蝶をガラスの瓶に入れてコルクの栓で、ふたをしてしまう。たったそれだけでドキリとさせる、またこの男のどこか歪んで壊れてしまってる愛情の怖さが、はっきりこっちにも伝わってくる。そして救いのないラスト。今日のストーカー犯罪の到来を予言した不吉な傑作。 【ひろみつ】さん 8点(2003-10-27 23:47:50) (良:1票) |
40.むかしNHKでやってて2回観たの。で、大学の頃ジョンファウルズ(だったっけ?)の原作が新書で出ててそれも読んだの。理解されたい愛されたいって言いながら自己中に暴走してるようで、子供心にも「なんかちがう」っていう違和感を覚えつつ、なんか惹かれるのでした。『ボクシングへレナ』とか『完全なる飼育』なんていうほかの監禁ものに対し、ラストで再びワゴンを流すこちらの主人公には底知れない深い心の闇をかんじるの。そしてそれに対してかすかに共鳴している自分の中の闇の部分に気づくのかもしんない。 でね、やっぱり「恋」と「愛」は別物だなって思うんだよね。 【ごりちんです】さん [地上波(吹替)] 8点(2003-07-26 14:34:35) (良:1票) |
39.テレンス・スタンプ演じる主人公の、常軌を逸した‘生’への拒絶っぷり。そのスタンスを、コレクターというフィルターを通して観察することで、異常は正常に。少なくとも最も現代的なキャラクターとして映る。ストーカーと言ってしまえば、その意味は狭義なものになってしまうのだけれど。 【mijukie】さん 7点(2003-03-06 01:26:53) (良:1票) |
38.他の人の評価を読んでいると、リピート再生にはあまり耐えられないように書かれていますが、私は5~6回以上観ました。(笑)と言うのも主役のテレンス・スタンプにイカレてしまったので、彼のこまやかな、そして独特の演技は、噛めば噛むほど味の出る、スルメのようですよ。主人公フレディの、先進的な流行や進歩的態度、インテリに対する怒りや恨みや嫉妬の狂気じみた感情を、まるごと、そのものとして演じているように思えました。共演のサマンサ・エッガーは、この映画以外では名を知らない女優さんですが、最後の死ぬ所はほとんど、演技を超えてました。ほんとに死んだとしか思えなかった。 【ベリンモン】さん 10点(2002-07-06 00:55:34) (笑:1票) |
37.これは面白い。そして本当に怖い。ワイラー監督の作品は外さないって本当だ。(ローマの休日,おしゃれ泥棒,大いなる西部,ベンハー)それにしても何かで読んだが,封切り当時主役のテレンス・スタンプがあまりにいい男なので見た女性達が云々・・て本当だったのかな。因みに私は10年近く前,当時付き合っていた彼女にこのVTRを貸したが,「怖かったけど面白かった」という感想しか返ってこなかった・・・。 【koshi】さん 9点(2001-08-18 23:41:56) (良:1票) |
36.新潟での少女監禁事件など、最近では、この映画に描かれたようなおぞましい恐怖が現実化している。しかし、怖い時代になったなあ。サイコ系のスリラー映画がお好きな方でしたら、絶対お勧めです。 【ヨアキム】さん 10点(2001-08-14 12:54:32) (良:1票) |
35.サイコホラーの傑作。ヒッチコックのサイコに匹敵しうる不気味さ。しかも,心理描写がきめこまかく,その閉塞感,絶望感が観る者に迫る。原作も読んだが,これまた傑作です。お奨めします。 【バッテン星人】さん 9点(2001-06-26 08:15:35) (良:1票) |
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34.今見てもショッキングで古びてないですね。同名(原題は違いますが)の作品も90年代に登場していますが、やはりこれには敵わないようです。 【イマジン】さん 10点(2001-02-13 12:30:30) (良:1票) |
33.《ネタバレ》 女性を思慕の対象としてしか見ない男がしでかしたことだから、怖いんじゃなかったのか。最後の独白「(今度は)僕の仕込むことのできるふつうの女を」って、ヤツの嗜好とまるで違うんじゃないの。そこんとこ「?」でしたが、4週間ルールやそれが破綻したときの関係性のくずれなど見応えは十分。 【なたね】さん [DVD(字幕)] 7点(2015-10-12 17:52:40) |
32.《ネタバレ》 私が高校生の頃、日曜洋画劇場で放映され、解説の淀川長治さんが絶賛していたのを覚えています。当時の主人公の吹き替えは、沢田研二さんが担っていました。その後は、ビデオ(字幕)で観て現在に至ります。 実は、この「コレクター」について、私は3つのバージョンにふれました。一つ目は当映画、二つ目は舞台劇(現在も舞台を中心に活躍中の、日本人の某実力派俳優さんが演じていました)、三つ目が原作小説です。 原作小説は、主人公と女子画学生の日誌が交互に紹介される形で展開します。画学生の日誌は、一応、恋愛要素を加えているので女性的な面はありますが、基本的には、当時のイギリスの社会批評のような内容になっています。クライマックスも映画とは異なっています。 一方、映画と舞台劇は、クライマックスを含めた内容や構成がよく似ていました。果たして、【小説を舞台劇にしたものを、ワイラー監督が映画化したのか】、【映画を基に舞台劇にしたのか】は、私にはわかりませんが…。 さて、私にとって、この類の映画としては、唯一、観ることのできる作品です。ワイラー監督は、それまでの作品同様、一定の礼節を備えた心理劇に仕上げ、テレンス・スタンプとサマンサ・エッガーの演技を見事に引き出していると思います。モーリス・ジャールによる、管楽器を主体にした音楽も独特のもので、あまりサスペンスタッチでないこと(と私は感じましたが、サスペンスらしい音楽だと思ったレビュアーの皆さん、スイマセン…)も、私には観やすい一因かもしれません。 ただ、この映画を観た当時「このようなことは、現実にはあり得ない」と考え、【特殊な状況下での二人芝居】として割り切りっていたからこそ、観ることが出来ていました。昨今の世相では、非常に現実味を帯びてしまっており、複雑な気持ちになります…。 さて、採点ですが、ワイラー監督の晩年の傑作として10点を献上します。 【せんべい】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2015-08-23 22:26:45) |
31.当時としては今よりもインパクトのある映画だったと思います。静かな展開ですが残忍性とサスペンス感がジワジワと伝わってきます。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-09-25 19:39:11) |
30.こんなものかという感想。犯人にもヒロインにも感情移入できなかった。恐怖感もいまいちでした。 【竜ヶ沢中段】さん [DVD(字幕)] 5点(2014-03-23 22:36:25) |
29.サイコ・サスペンスとして分かりやすい。同じような作品や構図がその後に出ているからだろう。 ただし、こういった古典的な作品はその芸術的(?)な価値観は高いかもしれないが、今の自分にとってはごく普通のそこそこよく出来た映画。 【simple】さん [地上波(吹替)] 6点(2014-02-23 20:25:12) |
28.《ネタバレ》 主人公の監禁までの描写が殆ど無いのはわざとか。いつ凶気をみせるかという緊張感がすごいが、ずっと狂気のままラストまで突っ走る。中盤「リア充爆発しろ」からのルサンチマンの上、「ここまでしても救えない」という絶望感でとにかく突き放してくる感じが、あまりに救いがなくて怖い 【楊秀清】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-03-13 20:02:42) |
27.《ネタバレ》 これは怖いですね。皆さんがおっしゃっているとおり、身近な人間として潜んでいそうといった恐怖や、あるいは自分の中で共感出来る部分に主人公の影を感じてみたりと他人事では済ませられない怖さがあります。何よりも怖いのは最後の最後、主人公とヒロイン(ヒロインと視聴者)の価値観の違いが浮き彫りになる場面からの流れです。女は男に対して自分という人間に対する愛情を疑いもしなかった。加害者と被害者という立場の違いはあっても、同じ人間同士という土俵で話していた。しかし男は女に対して単なる蒐集物としての愛着しか感じていなかった。視聴者の感じていた男の視点に関する違和感がここで明かされ、どんでん返しとなっています。さらに続けて、ヒロインは一体何人目の被害者だったのだろう、という疑問まで浮かんでくる結末には脱帽しました。第一級のサスペンスだと思います。 【kirie】さん [地上波(吹替)] 8点(2011-01-19 23:17:40) |
26.《ネタバレ》 男は社会的不適格者でも病的変質者でもない。元銀行員であり、通常の社会生活は営める。両親がおらず、貧乏で育ち、孤独な青年。人見知りが強く、対人関係が苦手で、人から嘲笑される人生をおくってきた。美人画学生Mに片思いしているが、声をかけることもできず、遠くから眺めて、崇拝しているだけだ。趣味は蝶の採集。そんな男にクジが当り、金持ちになる。地下室のある家を購入。蝶の採集をまねてMを捕獲し、自分への愛が育つのを待つことにする。◆男が欲しかったのは性的関係ではなく、愛だ。あるいは性的不能者なのかも知れないが。いずれにせよ、人間を虫のように扱って監禁し、人間らしく愛してくれというのは無茶な要求だ。愛されずに育ったせいで、愛というものを理解できず、人を真に愛することが出来ない。「ライ麦畑でつかまえて」を読んでも人の心の痛みが分らない。ピカソの画集を見ても、その創造性を理解できない。人に愛されたかったら、愛される人間にならなければならない。男はMを愛しているといってもそれは上辺のことだけに過ぎない。◆好きな女を監禁して、自分の思うようにしたいと妄想するのは珍しくない。この作品では、性的関係は強制せず、「自然に愛が芽生えてくるまで待つ」というところが新しい。愛欲よりも愛情に飢えている。妄想の視点が違うのだ。どのような成育歴により、このような歪んだ精神になったのか、また男が昔からどんなにMを崇拝していたかなどが十分に描かれていないので、単なる変質者に観られてしまう恐れがある。男は常に無表情で不気味、その内面でどれほど愛に飢えているのかを描いていないのが最大の欠点だろう。男の苦悩、心の叫びが見えてこない。不条理、理解不能を前提としながらも、いつしか男に同情してしまうほど人間が描けていれば成功しただろう。男を罰する終わり方にすれば少しは共感できた。◆虚弱な男なので、隙を見て鈍器のようなもので後頭部を殴って逃げ出せば良いと思う。お風呂に入ったとき熱湯をぶっかけるとか、暖炉の焚火を利用して放火するのも良い作戦。廊下を突き落すのもグッド。こういう男は懲らしめて矯正しないとタメ。もっと知的に攻略したいのなら、散歩したいとか、ドライブしたいとか、仮病を使うとかして外に出る機会をつくること。相手は気弱で、すでにかなり譲歩しているので強気に出れば可能。自殺未遂という手もある。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-01-18 19:46:40) |
25.ゾッド将軍ことテレンス・スタンプの一番有名な映画。サイコ・サスペンスの古典でポストモダン文学的かもしれませんが、いい影響より悪い影響の方が大きいのではないのかな。人間の暗部や異常心理を描いた映画は評価されやすいですが、本と違って映画は誰の目にも簡単に触れてしまいますから。これや「サイコ」のような作品は出来がよくてもあまりほめる気にはならないです。 【レイン】さん [地上波(吹替)] 5点(2010-05-27 01:51:58) |