113.《ネタバレ》 心から求めてる相手と一緒になれない。
片思いじゃなくて両思いなのに、こんなに苦しいことは無いですね。
世間体や、カモフラージュ、子どもの頃から植えつけられた結婚観、それで結婚したとしても、求めてるのは心身ともに愛せる相手。
それは、異性愛者でも同じだと思いますが、この偏見と差別の強いアメリカ南部では、同性愛者が愛を貫くのはほぼ不可能。
二人で過ごした最後のキャンプで、ジャックの「俺たちには、あのブロークバック・マウンテンしかない!」という叫びは痛々しかったです。
イニスが、ジャックの死後、ジャックの実家へ訪ねていき、老いた両親に会うシーン。
遺骨はブロークバック・マウンテンに撒いて欲しいというジャックの遺言に対し、家族の墓に埋葬するという父親。
イニスを暖かく迎え、息子のシャツを黙って持っていかせる母親。
二人とも、薄々ジャックとイニスの関係に気づいている。
拒否する父親と許容する母親の対比が良く描かれていました。
そして何より、そのシャツ。
最初の別れの際、「シャツを山に忘れてきた」と言ってたイニス。
実はジャックが持ち帰ってて、クローゼットに自分の着てたシャツの下にしてハンガーにかけていたことが、ジャックの部屋に行った時にわかります。
自分のシャツで包み込むように。
せめてシャツだけでもずっと一緒になれるように、シャツの袖まで通して。
それを持ち帰り、今度は自分のシャツを上にしてクローゼットにしまいます。
クローゼットの扉の裏にはブロークバック・マウンテンの写真。
そして「永遠に一緒だ」とつぶやくイニス。
死によって結ばれるという結末は好きではありませんが、このシャツのシーンは秀逸だと思います。
主演二人の熱演もあり、見終わってもしばらくいろいろ考えさせられました。