3.《ネタバレ》 ギレルモ・デルトロ監督は評価されている監督だが、今まではちょっとピンと来ない部分があった。個人的にはそれほど評価していなかった監督だが、本作を見れば、彼の世界観の豊かさ、イマジネーション力の素晴らしさには圧倒される。
ギレルモ・デルトロ監督は間違いなく才能ある監督だと確信した作品だ。
アメコミ作品の多くは、ヒーローの苦悩といったダークな面がことさら強調されているが、本作のような能天気でユーモアに溢れており、スケールが大きなファンタジックな作品こそ、コミックらしい面白みを感じられる。
緊迫感が足りない微妙なユルさやバランス感覚が非常に上手いと思った。
昨今のアメコミ作品の中は、中途半端な作品が多く満足できないものが多かったが、本作は満足できる優秀な作品だ。
ストーリー、アクション、世界観、キャラクターいずれにも満足できた。
バトルシーンがあっけない部分があるが、前作同様であり、このシリーズの特徴でもあるので多少は目をつぶれる。
アクションや様々なクリーチャーも見所の一つだが、ヘルボーイたちの人間らしい部分も見所の一つになっている。
誰かを好きになったり、妊娠を悩んだり、だらしのない恋人をしかったり、しかられたりと、彼らは人間よりも人間らしい。
そんなときは、酒を飲んで、歌を歌って、嫌なことも悩みも吹き飛ばすというのも非常に面白い描き方だ。
見る人によってはバカバカしいと思うかもしれないが、本作のコアな部分は『どうでもいいことで悩むヘルボーイやエイブたちの姿』だと思っている。
どうやって世界を救うかということで悩むよりも、どうやって恋人の機嫌を直すか、どうやって好きな人に愛を伝えられるかということで悩むかという点に面白みを見出せるかどうかがポイントになるかもしれない。
彼らとは対照的に、容姿が醜く、自分達と異なるからといって、軽蔑したり、化け物扱いをする人間の浅ましい心を描くことで、何かを感じて欲しいという想いをデルトロ監督は込めたのではないか。
ヘルボーイたちが唐突に人間達に嫌われることに違和感がないわけではないが、“流れ”を考えると仕方のないところだ。
ヘルボーイたちの非常にピュアな心を描くことで、エルフが嫌った人間の心を間接的にも描いているような気がする。
そして、冒頭の教授と幼いヘルボーイのやり取りも素晴らしい。
本当の親子のような姿が描かれている。