70.《ネタバレ》 歴史モノというのは、作者の主観が入らないと成り立たない。しかし、どう入ろうと大昔の事だから、だれも正確なところは知らないし、真偽で議論になったとしても、議論のための議論となるだけだ。しかし、近い歴史は危ない。そこに関与する人が多すぎる。だから、主観を排除したような、「ドキュメンタリー」風な客観的な方向に傾かざるを得ない。ハートロッカーは特に歴史を述べていないので、作者の方向性を打ち出せた。しかし、本作品ではどうもここでブレがあるように思える。覚悟が見えない。戦争プロパガンダと反戦という両極の物差しの上をあっちにいったり、こっちにいったりしているような感じがする。否、わざとブレているのを狙ったの、と言わんばかりなのだが、もしそうだとしてもうまく言っていないような気がする。監督の中に迷いがあったのではないか、それとも、制作側との妥協なのか。最初の拷問シーンで、私は女だけどこんな絵を取れますわよ、と力んでいるような感じだし、ラストシーンでは、女性の複雑な心は女性しか分からないから、ってスカしているようでもあるし。アメリカは強い、っていいたそうだけど、恨みは永遠に終わらない、っていっているようでもあるし……で、私の読みは、繰り返すが、この矛盾を一切抱えて、さぁみんなどうぞ、この複雑さを取り上げる私の感性が分かるかしら、ってのを狙っているということ。それが、うまくいっていない、と私は言っている。最後のサスペンス的展開はそこを隠したかったのではないか。 【K-Young】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-02-19 20:14:38) (良:1票) |
69.この迫力、ダイナミックな構成はハートロッカーを凌駕する。拡散しがちな題材をこれほどうまくまとめあげる力量はビグローの力だろう。戦場における緊迫感は特に。アラブ人へのCIAの拷問もしっかり描いている(が、)。ジェシカ・チャスティンらの演技も文句の付けようがなく、アカデミー賞ノミネートも納得できる。しかし、しかしである。これでよいのか。何かが足りないのではないか、という疑念を払拭できない。あるいは、何かが「多すぎる」のかもしれない。恐らく後者だろう。この映画が映画らしくしようとすればするほど、そこに回収しきれない何かが滲み出てくる。これを大雑把に陳腐な言葉でいえば「政治」なのだが、もう少し的確な言葉があるような気がする。いずれにせよ、手放しで誉めることができないというのが正直なところである。映画としてはものすごく面白いのだが…。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-02-18 23:08:30) (良:1票) |
68.《ネタバレ》 良く出来ている。見応えは充分以上だ。 この手の作品で政治心情云々を書くのはご法度かも知れない。 だが私は終始「この作品は一体誰の為に・何の為に創ったのか?」と言う思いを拭い去る事が出来なかった。 冒頭の画面暗転~悲惨極まりない9.11の音声だけを聞く事で、観客の心情は自ずとアメリカが被害者で有り、これから繰り広げられる物語はアメリカが憎き敵を追い詰め・倒すまでの出来事を描くのだ という心境にされてしまう。 そう、この作品は明確な位に「勧善懲悪」で有り、善=アメリカ、悪=アルカイダ なのだ。 何故、アメリカがアルカイダの標的なっているのか? という9.11同時多発テロに至るまでの複雑な背景・経緯は見事なまでに切り落とされている。 無論、本作はアメリカが作成した映画なのだからそれも止むを得ないと思う。 だが、本作がエンターテイメント色を排した描き方をしているだけに、徹底して偏った勧善懲悪を描いている事が妙に引っかかってしまう。 アラブ系のCIA情報員が殺された人々や親を亡くした子供達を複雑な表情で見つめる描写はあるが、取って付けた様な印象しか私には持てなかった。 「事実」を映画という形で観客に伝えたいのならば、単純に9.11から本作で描いている襲撃までを描くのではなく、もっと他に映像として後世に残すべき映像が有る筈だし、そもそもこの監督さんは「ハート・ロッカー」の様な骨太の作品を創作できる力量が有るのだから、余計にその様にして欲しかったと思ってしまう。 「その様な作品を観たいなら数多のドキュメンタリーを観ればいい」という意見も有るだろう、また、この様な私の感想がまさに平和ボケした日本人特有の物で有る事は充分に判っているが、期待が大きかった分、敢えて思った事を率直に書かせて頂いた次第。 【たくわん】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-02-18 10:11:51) (良:1票) |
67.《ネタバレ》 自分は好きだが、157分は社会派サスペンス好きでないときついかも。タイトルの最終30分の緊張感は凄い。自分の鑑賞環境では20数人いた観客は自分以外全員50代後半以上。 最後のシーン、マヤの涙で見せる祝福と呪い。長官との食堂のシーン「自分にはこれしかありません」からここにつながるマヤの達成感と喪失感のアンビバレントさ。時代の変化、自分の環境変化を経て、捜査当初のテロ撲滅という大義から、もはや復讐へと変化する作戦の意義。直前のマッチョな軍人男性の中、一人の女性諜報員という対比と強い存在感から一転しての広い飛行機内での孤独な涙は、その強さの裏返しというより、ここまで得た強さ故の喪失感・虚無感に見えた。 公私の区別なく取り組み続けることによってのみ成り立つというこの成功は、アルカイダ側にこれを応用した途端、最後の作戦での婦人をいとも簡単に殺害される環境に反転する。 生きることの困難さを実話にどれだけのせて「映画」とするか、その見本のような作品だと思う。 【楊秀清】さん [映画館(字幕)] 8点(2013-02-18 01:00:34) (良:1票) |
66.《ネタバレ》 9.11のテロからビン・ラディン殺害までが、CIAの活動を中心に語られる。事実のところもあるだろうが、CIAが詳細を明らかにすることはないだろうから、大部分は映画制作の過程で創られたストーリーといえる。そういう点でも、この映画は、事実を土台にスパイ活動を描いた一級の娯楽作品になっている。女性捜査官マヤの視点によりドラマ部分に厚みがある一方、全編に逃げ出したくなるような緊迫感が張り巡らされている。不必要に長く感じられた冒頭の拷問シーンも、後半、拷問が行えなくなり情報の入手が難しくなるというジレンマにつながる。それにしても、主人公のマヤを演じるジェシカ・チャスティンは、自分を消してどんな役柄でもこなせる女優さんですね。関心しました。 【カワウソの聞耳】さん [映画館(字幕)] 9点(2013-02-17 13:22:06) (良:1票) |
65.《ネタバレ》 突入からはサクサク進むのだがそれまでが如何せん冗長過ぎるかな。 まぁ実話ベースだしそこは仕方ないんだろうけども。 主人公が何故あそこまでビンラディンに執着しているのかが分からないから、どうも置いてけぼり感は否めない。 改めてWikipediaを見てみると突入したのはSEALDsじゃなくてそこから独立した部隊だったのね。 何が一番怖いってこの映画からもう10年経ったことだよ・・・。 【悲喜こもごも】さん [インターネット(字幕)] 5点(2022-11-17 21:59:46) |
64.面白い。 映画のキモの一つは、やはり主人公マヤのキャラクターであろう。 と言っても、彼女の素性やバックボーンはほとんど作中に描かれない。唯一わかるのは、あるシーンでちらっと映る彼女のモニタの背景画像から、どうも子供がいるっぽい、ということくらいだ。なぜビンラディンをそこまで憎むのか(通常のアメリカ人なら当然の感情ではあるとは思うが)、どういった政治信条があるのかも不明。 しかし、そういったキャラクター性は一切削ぎ落とし、ただただ彼女の執念にのみ焦点を当てることで、ストーリーを濃密なものにしている。 彼女の何者も恐れず強気に行動する様は見ていてとても惚れ惚れする。 筋骨隆々の海兵隊に平然と無理難題を押し付けたり、自分の直属の上司どころか、そのはるか上の役職にまで食って掛かる様は、しびれるものがある。 彼女のキャラクターが深く描かれていない故に、ラストシーンで彼女が涙するのも、単純に思いを成し遂げて感極まったからではなく、何か別の意味があるのではないか?と思わせる。 実際にあったできごとを、フィクションを交えつつうまくサスペンスに仕立て上げているのも見事。 良い映画だった。 【椎名みかん】さん [インターネット(吹替)] 9点(2021-04-13 06:38:37) |
63.《ネタバレ》 これと「ハート・ロッカー」結構何度も放送されていて、観る機会はいくらでもあったんですがどうもあまり気乗りがしなくてね。本作も拷問シーンでたまらずチャンネル変えたこともあったんですけど、ついに観ちゃいました。 上映時間157分だそうですがその長さを全く感じませんでしたし、最後まで緊張感が途切れず、人物を語る描くということもなく淡々としているところが逆に入り込みやすかったです。 今回CIAに対しては印象が良かったんですよね、私。相手は無差別テロリストですからなんの感情移入もないし、する気も無し。そんなことよりテロの首謀者として追われる身でありながら、隠れ家で家族と暮らし子ども産ませてるってなに?子どもの多さにもびっくりですわ。 いつ突入され、殺されるかわからないような危険な状況に幼い子供をおくってどういう神経してるんだ?子どもの目前で親を殺されるという状況を作り、子どもを巻き込んだのは親本人ですね。 そしてやはり本作も主人公は悲しげな表情で終わるのです。報復、復讐を遂げた後は皆、悲しげで苦悩に満ちた表情なんですよね。成し遂げられてもそれで全てが良くなり、元通りになるわけではない、そして次やることがわからないみたいな虚しさを感じるんですよ。 しかしビンラディン殺害が2011年でこの映画が2012年制作ってところが凄いなと、突入シーンの臨場感もすごかったです。 監督のキャスリン・ビグローって見た目は女優でもいけるくらいエレガントな美人なのよね、そしてこんな映画撮っちゃう。キアヌ主演の「ハートブルー」の監督もこの人だったのか、魅力的な人です。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-30 18:23:39) |
62.《ネタバレ》 ネットのどこかで「おすすめスパイ映画」の一つに挙げられており、初めて知った作品です。 公開された年を考えると衝撃的作品であったであろうことは、直ぐにわかります。 9.11で受けた傷は決して癒えることはないでしょうが、風化させてはいけないと思うので、 多くの人に観てもらいたい作品だと思います。 以下蛇足。 1.ネット記事からの引用ですが、 "タイトルの“ゼロ・ダーク・サーティ”とは、軍事用語で“午前0時30分”を指す言葉だ。" 2.主人公がカープ女子神3の一人に似ていると思ったのは私だけでしょうか? 【hyam】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-11-09 14:14:12) |
61.緊迫感のある映画。カメラワークも好みです。ずいぶん強引な印象のアメリカも、実行までに相当時間をかけるなど内部では慎重な面もあるんだな。 【noji】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-09-29 00:28:10) |
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60.《ネタバレ》 イラク戦争での失敗の後、信憑性に疑問符のついたCIAのテロ情報。取るに足りん情報だ、もっと確実な証拠を見せろと上はリスクばかりを気にする チームを指揮する立場にありながら未だに会議ではマトモな席に座らせてもらえない女性になぞらえるように それらの、過小評価されてしまうことへの粘り強い抗いが描かれている。恫喝も辞さぬ構えの・・・。そうした先に、表面的な勝利は訪れるのだ 見下ろすマッチョな支局長に下から歯を剥いて抗議するマヤのシーンはあからさまだった 実行部隊には含まれない女性が主人公というだけでもメッセージ性が強そうだと思ったが、描かれている内容はまさにそれであった ノンフィクションと捉えると、そういったメッセージは時折鼻につく。手持ちカメラで室内でもグラグラ揺れるのも、映ってる内容が劇映画なので単に気持ちが良くない ゲートから時間をかけて近づいてくる無言の車やアラブ人は見分けがつきにくいなど、ハートロッカーと同じ展開をよりわかりやすく語り直している キャスリン・ビグロー作品は淡々とした絶望感があって嫌な気持ちになるんだけど、ビンラディン殺害の経緯を知りたいから最後まで辛抱して観た 【うまシネマ】さん [インターネット(吹替)] 5点(2019-10-19 21:00:29) |
59.《ネタバレ》 ハートロッカーほどの面白さ、臨場感は感じられなかった。 全体的にやや冗長だが、楽しめた。 銃撃戦のアサルトライフルの音がちょっとしょぼく感じる。 【チェブ大王】さん [DVD(字幕)] 8点(2019-01-03 20:11:59) |
58.《ネタバレ》 ビン・ラーディン殺害のクライマックスシーン、結果も分かっているし真っ暗で何も見えないのに実話ならではのこの迫力と緊張感。国家機密絡みの物語の真相は情報公開まで闇の中ですが、主人公の執念が実った何もしないリスクを避けた指導者の決断、イラクの二の舞にならなくてよかったですね。この種の映画を見ていると、危機管理に限りなくリスクゼロを求めようとする理想主義社会も少々不安になってきます。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-07-25 00:08:48) |
57. ドラマ的な演出を排し、優れた「再現ドキュメント」に徹した映画。そのためプラスアルファ(メッセージなり喜怒哀楽や葛藤等の“人間”を描く)が乏しい。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-07-08 15:47:56) |
56.丁寧によく作られた作品という印象は強い。 ドキュメンタリーのようだが、映画としてのクオリティーをきちんと保っている。それでも、長いな。飽きるわけではないが。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-07-07 11:12:09) |
55.事実であれフィクションであれ、 えぐいな( ´ー`) そしてそこで心を壊し始めながらも、 人を招き入れたら、大切な人へ危害を加えられる。 そこで狂人のごとく、復讐を(国家的にではなく個人的に)誓うのが、 実にフィクションのようであるが、 恐ろしさが現実的である。 終始、真の笑顔がなく、 戦争のむごさを知るのに十分な作品。 【元祖】さん [インターネット(字幕)] 6点(2018-06-16 21:18:24) |
54.なんだかすっきりしない。結末はわかっていたが、本当に気分が悪い。そりゃそうだよな。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-15 22:48:54) |
53.《ネタバレ》 ウサマ・ビンラディン殺害の背景を知ることができて満足。 事実は小説よりも奇なり。同じ世界で起こってる実感がしない。 アジト発見までがやや冗長なのは否めないが、長きに渡る緻密な捜査が、実を結ぶラストは爽快。 【カジノ愛】さん [インターネット(字幕)] 6点(2017-05-20 21:02:45) |
52.登場人物のヒゲ率、高すぎだろ!! ひげのおかげで誰が誰かわかりません。 まぁそれはさておくとして、こういう実話物の場合、ストーリーの結末についてはそもそも誰でも知ってます。 相当な情弱でもなければオサマビンラディンの最後についてはざっくりくらいは知ってるわけで、ある意味最初からストーリーはネタバレしているわけです。これは映画として相当なハンデです。 しかも実話だけに映画的な脚色もしづらいという面もあります。うかつな事をすると訴訟問題とかになっちゃいますから。 逆に言えば、ストーリーの背景説明をある程度端折れるというメリットもありますし、実話ならではの緊迫感もあるわけですが(フィクションは所詮作り物だから…と考える人は一定数います)そのメリットとデメリットの狭間で難しいカジ取りを要求される、実話物ってけっこうむつかしいジャンルの映画だと思うのです。 さて、近年造られた「実話テロ物映画」というと「アルゴ」が有名ですが、個人的には「アルゴ」はイマイチでなんか退屈な映画でした。 しかし一方、こちらの「ゼロダークサーティ」は、終始映画に引き込まれ、最近にしては長尺な157分を最後まで飽きずに観る事ができたのです。 その理由を分析的に考えてみたのですが、まったくわかりません。 単なる個人の感覚的なもので「アルゴ」はなんかつまんなくて「ゼロダークサーティ」は面白かった。 まぁ映画なんてそれでもいいのかな、と思います。 【あばれて万歳】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-11-28 19:46:27) |
51.《ネタバレ》 4つ目見たさに鑑賞。 爆発や銃撃の度にぐらぐらさせるカメラワークは、またかと正直うんざりしました。 アジトを突き止めるまでは延々マヤを追っていた視点が、抹殺作戦実行の途端にチーム6を 主眼にしだしたのは一貫性が無いです。あくまで、作戦本部の受信機やモニター越しに得られる わずかな情報から滲ませる、マヤの不安や期待の表情を見せ続けてくれれば良かったのにと思います。 特殊部隊の活躍については、各々私生活のゴタゴタや悲しみ・憎しみを抱えつつ、 無抵抗の女子供は殺さず銃を向けてくる相手には容赦せず粛々と任務を遂行する姿が見られ、 後ろ暗い後日談も伝える『ネイビーシールズ:チーム6』で充分でした。あ、4つ目には満足しました。 ただ、長年かけた執念のすさまじさには畏れ入りました。(まぁお金持ちの住んでいそうな邸宅が 豪華な装飾ではなく有刺鉄線の施された高い塀に囲まれている、って時点で超怪しいですけど) また「友達はいるの?」という問いへの答えに、心臓がぎゅっと握られた気がしました。 さて、証人保護プログラムのあるアメリカですから、テロ首謀者の抹殺に関わった人達を復讐から守るため、 人物像やその後の生死について、映画で語られた大半の情報は偽りかもしれません。 チーム6は撃墜で全員死亡した・・・事にされ、新しい名前で元気に暮らしていると思いたいです。 マヤは若い女性ではなく、本当はむさいおっさんではないでしょうか。 そしておぞましい拷問を繰り広げたおっさんが実は・・・ 【ぱいなぽ】さん [地上波(字幕)] 6点(2016-11-10 23:01:55) |