55.小津作品によくあるパターンですが、チョイと不自然なセリフに実年齢的にチョイと無理筋な東野・杉村の父・娘。違和感が無いわけじゃないですが、人の価値観は変れど今も変らぬ人間の素顔を醸し出す登場人物に引き込まれます。繰り返される限定的な場面とアクションの無い抑性された演技、これだけで彼らの思いに共感できる映画ができることに驚嘆します。ほぼ全編セットによる撮影の中、昭和30年代の池上線の映像も印象的でした。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2016-02-01 23:22:16) |
54.《ネタバレ》 ハハハ。本当にまっ正面からなんですねえ。想定線の上に堂々と居座る無遠慮なカメラアングル。最初は違和感で仕方なかったんですが、思えばそれが引き金だったんでしょう。気がつけばもう小津ワールドの世界観にドップリ。まるでこちらに向かって話しかけられているような臨場感。「そうなんですかあ」と言われると、こっちがうっかり「そうなんですよ」と返してしまいそう。 さて、ストーリーは、娘を嫁がせる父親の心模様がテーマになっており、前半と後半で内容が別れています。 前半は特に事件も起こらず話も進みませんが、様々な「父」と「娘」が映し出されます。今まさに結婚生活を送っている義娘、未だ娘を嫁がせずにいることを引きずっている恩師、娘に先立たれた過去を持つも今ではすっかり立ち直っている海兵時代の部下。それぞれの形で今日を生きる父娘たち。その「それぞれ」を象徴するように、その時々に食べ物が出てくるのも印象的です。義娘の結婚生活はぶどう味、恩師の心境は鱧の味、と言わんが如く。 そして、後半は、そんな様々な父の一人である主人公がついに娘を嫁がせようと思い立ちます。娘がいてくれた方が便利だけど、娘の幸せを想えばこそ。娘をと嫁がせずにいることを悔いている恩師と、娘を亡くしていながらも笑顔で過ごしている元部下の存在が、その決心に踏み込ませたのでしょう。しかし、嫁がせたあとに待っていたのは、娘がいなくなった家。ラスト2分、もぬけの殻となった部屋や階段が次々と映し出され、主人公は、今にも泣き出しそうな表情を。薄暗い部屋で一人さびしく茶をすする後姿からは、娘の幸せの代償を背負う父親の哀愁が染み渡ります。 |
53.《ネタバレ》 激しく感情を高ぶらせるようなことはなく、正確な間合いで会話する登場人物たち。ひとの暮らしをモチーフにしつつ、生活臭さがない。まるでアンドロイドたちが昭和30年代を演じているようだ。その違和感がイヤかというと、そういうわけでもない。不思議な映画。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 5点(2015-01-11 10:06:17) |
52.小津映画の不思議な手法(カメラの端から見切れて登場しない、2人で向かい合って話すシーンがないなど)をたっぷりと堪能できる。 ストーリー自体は、古き良き日本を感じるなあぐらいの感想で別段どうってことないが、 自分も娘を送り出す立場になったらまた違う印象を受けるのだろうか。 【ポン酢太郎】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-12-01 00:37:56) |
51.笠智衆さんが魅力的。映画としてのよさがほのぼのとは伝わってくるが、感動、感激とは無縁。無いと寂しいが何度も見たくなるとは思えない。其れ共、笠智衆さんぐらいの年になったら見たくなるのだろうか? 【竜ヶ沢中段】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-02-08 23:47:34) |
50.《ネタバレ》 結婚後の倦怠期、娘を嫁に出した父親、嫁に行きそびれた女、そして老後の寂しい人生。登場人物たちの人生は日本人としてはむしろ平均的で、特に珍しくもないものばかりでしたが、どちらかと言えば人生のはかなさ、むなしさに趣をおいて描いている、そんな印象です。その中でも特筆すべきは、ひょうたん先生が酔いつぶれて帰った長屋の場面。杉村春子演じる娘が横で泣いている。自分の人生はこんなはずではなかったという涙であるが、人生の無情を物語る実に残酷な場面である。片や、若い嫁をもらって幸福の絶頂にある者もあれば、ゴルフクラブの購入費で頭がいっぱいという何とも呑気な者もある。人生は十人十色、様々な人生を淡々とした視点で描いており、他人の人生を少しだけ覗かせていただいたような心境になる映画でした。 【タケノコ】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-01-21 22:19:19) |
49.《ネタバレ》 淡々と家族を描いているのが良い。 岩下志麻さんが超絶に美しく、笠智衆さんのほのぼの感たら尋常じゃない。 嫁入り前のシーンでは、こっちまでフワ~っと胸にこみ上げて来るし、 お勝手で『あぁ~ひとりぼっちか・・・』なんてセリフが他人事には思えず、劇中の堀江氏のように若い嫁でも貰おうかしら・・・と。因みに、あっちの方の薬はまだ不要です。 小津作品は、そう多く観ている訳じゃないけど、何だろうこの見入ってしまう感覚は・・・と考えたら、小津作品は日本人にとってサザエさん的な安定感に近いのでは?と思えました。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 8点(2013-11-18 14:32:09) |
48.学生時代に名画座で鑑賞。これが初めての小津作品でした。てっきりお客は映画マニアばかりかな、と思っていたら、会場は近所のお爺さんお婆さんで大盛況!終始笑い声が漏れて楽しい上映でした。この時の上映のおかげで、「小津作品はシネフィルだけが見るマニアックな映画」というようなイメージを持たずに済みました。今でこそ小津調の演出には馴れましたが、はじめて見たときはセリフ回しやその撮り方、編集の仕方など、いままで見てきたどの映画とも違う異質なものだったので、えらく驚きました。そのスタイルのおかげか、これがただ単に「庶民の生活を見つめた心温まるホームドラマ」とは思えなかったのも印象に残っています。ただホノボノしているわけじゃない、監督の激烈な感情が奥に込められている、そんな映画のような気がします。 【ゆうろう】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-07-13 04:05:03) |
47.笠智衆がそこにいるだけで、もうなんだか安心している自分がいる。剛でなく柔の迫力、「ふぅん」という相槌のまろやかさ。「良かったじゃないか。戦争に負けて」とこの人ににこにこと言われると、そ、そうですねと涙ぐみそうになる。棒読み台詞にも慣れた。笠しかり、岩下志麻しかり、美しい日本人がここにいる。ひょうたん先生をあんまり苛めないでほしかったなあ。 【tottoko】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2012-11-27 16:24:29) |
46.人生って秋刀魚の味だと言う事なんでしょうね。生まれる前の映画だとは思えないほど映像も綺麗でした。しみじみとした人生の悲哀を描いた傑作だと思います。 【東京ロッキー】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-06-11 13:45:00) |
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45.《ネタバレ》 娘を嫁にやるという基本線はほかの小津作品と変わりませんが、時代を感じさせるところがあります。なんといっても女性が強い。息子の佐田啓二なんて、嫁さんの岡田茉莉子にぽんぽん言われてやり込められています。岩下志麻も、原節子が「お父さま」なんて言っていたのとは大違い。隔世の間があります。それと関係があるのか、嫁に出すまでが長い。娘はすぐに結婚する気はないようです。以前ならそれでも父親は早く結婚させようとしていましたが、本作では父もそれほど急いでいない様子。妻が亡くなっているということもあるのでしょうが、時代を感じさせます。 父親が積極的になる原因は恩師瓢箪先生にありますが、この先生のお言葉がすごい。曰く「結局のところ、人間は独りです」……。これが本作の最終的な結論であると思えてしかたがありません。本作は小津監督の遺作となりました。ご当人はまだまだ映画を撮るつもりだったのでしょうが、結果として最後となった映画のテーマが「人間なんて結局はひとりぼっち」というのは、文字通り筆舌に尽くしがたい感慨を抱きます。すごすぎます。参りました。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-05-08 22:46:55) |
44.冒頭からセクハラで訴えられそうな展開にハラハラドキドキ。 でも、この時代にはセクハラという概念自体がなかったようで、その後もやりたい放題。 嫁にやるとか、貰うとか、ほとんど物扱いではあるけど、そこには愛があるように感じられた。 序盤は淡々としていて物語に起伏が感じられなかったけど、縁談が動き出した中盤以降は一気に面白くなった。 行き遅れたら負け組という前提条件はどうかと思うけど、嫁に行けるかどうかの瀬戸際にそれぞれの登場人物の優しさのようなものが感じられて感動的でした。 あと、稀にぶっ込んで来るつまんない嘘も滑稽で面白かったです。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-04-19 16:38:30) |
43.《ネタバレ》 家族にも人生にも悲喜こもごも、繰り返す日々にドラマがあります、色んな思いがあります。変わり行く時代の中でそれを捉え切り取り続けた小津監督はやっぱり偉大だと思います。娘を嫁にやる父と、もはや戦後ではない時代に忘れ去られようとする戦中派が重なり、ひとつの役目を終えた世代への慈しみとペーソスを感じます。 |
42.《ネタバレ》 ストーリーは相変わらずで、娘が嫁に出る出ないの話。もっとも、岸田今日子がいたり岩下志麻がいたりと、新鮮味を感じることはあった。その他は、観たことあるようなセットと役者。だからといって、作品の出来が悪いわけではない。ほのぼのとしていて上品で、どこか残酷。ひょうたんに感情移入したり、笠智衆に感情移入してみたり、岩下志麻に感情移入してみたり、誰に感情移入するかで、感じ方を選んで楽しめそう。昔は、子供の縁談は親が決めていたんだろうけど、いつからか自由恋愛が尊重されるようになった。この作品の時代がちょうどその境目くらいだったんだろうか...とか思いながら見ていた。 【VNTS】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-01-16 19:26:49) |
41.説明台詞の連続、なぜか分からない棒読み演技、わざと面白くなくしているとしか思えない単調なカメラ。見ていてイライラし通しでした。どこがよいのかほとんど理解できませんでした。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2011-10-31 22:53:25) |
40.2011.10/31鑑賞。小津監督作品はしっかり観た記憶なし。この作品は遺作らしいが本当に良き時代の日本の社会、生活、家族が描き出されている。絵画的映写技術と豪華名優の競演に万歳!! 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-10-31 21:35:53) |
39.娘を嫁にやるお父さんの心情を美味しいけれども、はらわたの苦味もある秋刀魚の味に例えたらしい小津監督の遺作。いい息子がいて、いい娘がいて、実に幸せなもんだな~と思いながら、それでもというか、だからというか、寂しくてたまらない笠智衆がなんとも言えない。その一方で随所に見られる小津監督のユーモアも光る。ゴルフクラブを買う、買わないの岡田茉莉子と吉田輝雄は二人で漫才してるみたい。飲み仲間の中村伸郎、北竜二も毒づいたり、どっきり仕掛けたりと、あんなおっさんになりたいもんだなー。大きな感動があるわけではないけど、じんわりと良さが感じられる小津らしい(のかな?)映画でした。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-10-25 18:03:43) |
38.《ネタバレ》 嫁にやりそびれて嘆き、嫁にやってしまって悲しむ・・・。 小津監督の映画の中で、唯一映画館で見ることのできた映画。少年の頃見た思い出は、他の映画と違って淡々とした感じで、花嫁さんが大変きれいだったということくらいで、監督の名はもちろん、俳優さんや女優さんの名前すら知らなかった。 後にテレビやDVDで2度3度と見ているうち、なるほどこれが「オズワールド」というものかと、次第に映画の良さに引き込まれていった。 軍艦マーチに乗って敬礼をするシーン、同窓生が集まり酒を酌み交わすシーン、瓢箪先生の何とも言えぬ酔っぱらいシーンなどなど・・・、すべてが絵になる映画だと思う。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-04-10 10:12:35) |
37.現代で見るからこそ、より一層この映画の芸術性・美しさが分かる気がします。ALWAYS三丁目の夕日が物凄く偽物っぽく感じる。 それにしても、みちこちゃん(岩下志麻)のような強烈なべっぴんと見合いできた男ってラッキーすぎ。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-10 20:13:05) |
36.《ネタバレ》 暖かい空気感がいい。いま失われかけている日本の美意識があった。ほっとする映画だった。 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2008-10-12 10:31:16) |