9.《ネタバレ》 「死」を覚悟した年老いたカリスマ女流作家が言う。
「余韻」を残せない人生をなど絶対嫌だと。
彼女の想いがほとばしるように、この映画のラストは、衝撃と甘美を併せ持った上質な「余韻」に埋め尽くされる。
もう3度目の鑑賞となると思うが、その余韻に対する感慨は更に深まったような気がする。
4年前に死んだカリスマ女流作家のもとに集う5人の女たち。五角形の食卓の上で交錯するそれぞれの疑惑と偽りによって展開していくストーリーの構成力が凄 い。
4年越しの疑惑が更なる疑惑を呼び、ついに導き出された真実。そして、それを更に包み込む壮大な“くわだて”には衝撃を通り越してため息が出る。
数日前に初めて恩田陸の原作小説を読んだ。
物書きの死をめぐる物書きたちの精神を、緻密な文章世界で表現した秀作だった。
その一方で、数年前にすでに観ていたこの映画作品の完成度の高さをまざまざと思い起こさせた。
この作品は、数少ない原作小説を越えた映画の一つだと思わずにはいられない。
原作世界の世界観を完璧に踏襲すると同時に、テーマに対するディティールを深め、より深遠な人間模様とその精神世界を表現することに成功している。
上質なミステリアスによって導きだされた本当の人間の姿。
もうそこには、サスペンスの驚きを遥かに越えた感嘆しか存在しない。