182.メリックに「俺は象じゃない、人間だ」というセリフを言わせておきながら題名がエレファントマン、というところを始めとして全体的に作為的なものを感じる。そもそも自分がこの映画を見ようと思ったのは、ビデオ屋にいき、頭に布をかぶった写真を見て、(エレファントマン?いったいこの布の下はどんな顔をしているのだろう。)と思って見るわけで、要するにこの映画を見てる時点でメリックを見世物にしていた男に金を払って見ていた人たちと立場的にまったく同じなわけです。メリックの顔がなかなか映らず、とうとう看護婦が「キャー!!」と絶叫するシーンでこちら側も盛り上がる。ところがそこから話が差別から戦う話に変わっていく。エレファントマンに感情移入して感動させる話を、まず観客をその差別する側に回しておいてそこからぱっと手を離すあたりデビットリンチ只者じゃない。有名な舞台女優が出てきてエレファントマンを応援するといってくる(ちなみに彼女はあまり人にサインをしたがらないそうだ、その上彼女がエレファントマンにプレゼントしたものは自分のサイン入りプロマイドとくる)ほっといてやったらいいのに舞台が終わると彼女が観客の前に出てきて「今日は○○さんのためにやりました皆さん彼に拍手を」と言う。で、観客は総立ちで○○さんに拍手、そこが感動のシーンということですが、中にはそれって逆に差別じゃないの?とか思いながらいやいや拍手をしていた人も少なからずいたはずです。、、社会に向けて言いたいことが「俺だって人間だ」くらいしかない、絵を描くことや建物の模型を作ることや聖書のすばらしい文を暗誦するのが好きなだけの男を回りの人間が好き勝手に振り回す、という(彼の奇抜な外見を差し引いて考えれば)ただそれだけのよくある話です。彼は死んで、それらの俗世間から開放され美しい母の元に召されることによって幸せになれたのだと思います 【きれぎれ】さん 7点(2002-09-18 06:15:35) (良:1票) |
181.偏見や差別意識は誰の心の中にもあるし、外見だけで我々は物事を判断してしまう。それはごく身近な生活であっても、人種差別といった様な全世界的問題であっても同様である。だからこそ誰もがある種の痛みや辛さを感じること無く、この作品を観ることは出来ない筈だ。そういう意味では、これは紛れも無く踏絵であり、人間の偏見というものを直視した異色作と言える。 【ドラえもん】さん 8点(2001-03-16 23:20:15) (良:1票) |
180.《ネタバレ》 映画ファンを名乗りながら今更「エレファント・マン」を見ました。恥ずかしながら私は「どうせファンタジーみたいなおとぎ話でしょ?」って今日まで思っていました。 デヴィッド・リンチ作品といえばやはり名作(迷作?)「イレイザーヘッド」が思い出されますが、本作もモノクロで時折イレイザーヘッドを思わせるようなシーンもあって意味深な気持ちにさせてくれます。また、壁の絵や一つ目の頭巾などの雰囲気もとても素晴らしく、序盤から映画に引き込まれる演出はなかなか素晴らしいです。エレファント・マンことジョン・メリック(ジョン・ハート)の半生を綴る本編は基本的にリアル志向で無理な描写がありません。むしろ的確に彼の心理描写を作品に落とし込むことに注力しているようで、物語の進行もドラマチックというよりは淡々とした印象でした。 やはりトレーヴェス博士(アンソニー・ホプキンス)と彼の妻(ハンナ・ゴードン)、舞台女優のケンドール夫人(アン・バンクロフト)、婦長(ウェンディ・ヒラー)らが優しくて目頭が熱くなります。対するバイツ(フレディ・ジョーンズ)や夜警の男(マイケル・エルフィック)らの仕打ちは極めて残酷で、こちらは違う意味で目頭が熱くなります。いじめのシーンは容赦がなく見ごたえ十分ですが、ここでもメリックは告げ口をせずこの人物の人の好さがにじみ出ます。奇形者の見世物興行のシーンは痛々しく描かれていますが、実際には和気藹々と人気者街道を歩んでいたようで、彼のIQの高さとポジティブ思考、そして人の好さで意外ときちんと過ごしていたことが伺えます。(映画ではそう描かれていませんが) この映画のクライマックスはやはり駅で叫ぶシーンだと思います。「僕は象人間じゃない、これでも人間なんだ」”これでも”という言葉が涙を誘います。とにかくメリックの人柄が素晴らしくて、神様は心底残酷なことをなさると感じた映画です。この後に配置されている劇場のシーンでは、、演者でなくメリックのほうがスタンディングオベーションを受けますが、これもなかなか泣かせるシーンに仕上がっています。 ある程度事実に基づいているようですが、映画版のラストは非常に素晴らしいです。頭が大きすぎて横になると窒息の懸念がある彼が「いつかは普通の人のように横になってベッドで眠ってみたい」という願望を実践、そのまま亡くなってしまったであろうラストカットが素晴らしい。ストーリー上は安住の部屋を与えられ、友人には人並みに扱われ、初めての演劇で高揚していたようで、普通にベッドで眠ろうとする彼の仕草が本当に健気で泣けます。(演出上は亡くなったかどうかは不明ですが、”横なって寝てはならない”という伏線から考えると亡くなったと考えたほうが自然) 「もしも自分が化け物のような外見だったら?」と思うと生きた心地がしません。五体満足で身体の各部位が正しい位置についているだけで幸せだし、コンプレックスなど些細な事だと感じられる映画です。多少事実と異なる点はあるものの彼の心情がとても良く描かれていて素晴らしい作品でした。一生に一度は見ておくべき名作。 【アラジン2014】さん [インターネット(字幕)] 9点(2024-11-19 16:41:42) |
179.リンチは好きな監督の一人だがコレはあまり面白くなかった 【afoijw】さん [DVD(字幕)] 6点(2023-03-15 01:02:39) |
178.《ネタバレ》 まずは映像的に神秘的で美しい映画。 素顔をすぐには観客に見せないのが巧い。 見世物小屋での非人間的な扱いから解放されて、ほんと良かった。 デヴィッド・リンチはヒューマンドラマを撮らせても、標準以上に仕上げてくる。 改めて凄い才能を持った監督だと感じた。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-06-30 22:41:26) |
177.特異な容貌故に見世物にされてきた青年、その彼をこうやって商業映画の題材として描く、という事自体に、メタな要素を感じざるを得ないのだけど、それを意識しつつも、どうもこの映画には、以前から醒めた印象しか持ち得ないのです。今回久しぶりに見ても、それは変わりませんでした。 結局のところこれは、メーキャップ技術の限界を示した映画、としか思えなくて。 微妙な、デリケートな問題、であるが故に、その「作り物」感が、まずもって、気持ちを門前払いしてしまう。 かつて初めて見た頃と違って、今ではネットで調べれば、モデルとなった男性の実際の写真を簡単に見ることができ、確かに、似せようと努力していることはわかるのですが。 ストーリーも人物描写もシンプルで類型的なものとし、あの神秘性を感じさせるマスクも勿体ぶらずに脱がせて素顔(のメーキャップ姿)を画面にさらけ出させて、この「作為の無さ」という作為が、ドキリとさせる面も、これまた確かにあるのですが。 しかし、結局のところ、メーキャップでは描き切れない以上、違和感を拭いきれない以上、その姿はやはり、あのマスクの向こうの神秘に、封印するしかなかったんじゃないか、と思えてしまうのです。 ところでこの映画のテーマ曲、聞くとどうにも、童謡の「叱られて」を思い出してしまうのですが。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 4点(2021-04-17 15:04:21) |
176.思ったより象っぽくなかった←違う論点はそこじゃない。 とにかく人間のエゴと欲望と偏見と皮肉に満ちた物語で、お前はどう思う?と問われているような居心地の悪さを感じた。 いくらジョン・メリックに対して可哀想だとか、彼は本当は心優しいんだとか分かった風になっていても、その苦しみは当事者でなきゃ絶対に理解する事はできないだろう。 駅でジョン・メリックが群衆に追われ、「僕は人間なんだ!」と叫ぶ所とラストシーンには胸が締め付けられた。 【ヴレア】さん [DVD(字幕)] 7点(2020-02-13 19:34:21) |
175.《ネタバレ》 当時8歳の僕が期待したのは、見世物小屋のお客の立場で、どんな変わったものがが観れるのかだったので、ショッキングなシーンが少なく残念い思いました、知識不足もあり、普通に寝ると死んじゃうのがかわいそうと思いながら、五体満足で生まれたこと(エレファントマンに生まれなくてよかった)を良かったと感じたと記憶しています。再鑑賞したらおっさん目線で再レビューしたいと思います。 【ないとれいん】さん [地上波(吹替)] 7点(2018-03-01 17:02:40) |
174.《ネタバレ》 子供は顔も環境も選べない。ジョン・メリックのような風貌で生まれてしまったら、奇異の視線と差別は避けられない。この悲惨な環境で純粋な心を持ち続けるのは理解者なしに不可能なものだろう。たとえそれが偽善に満ち、利用されるだけのものに見えても、彼にとっては"人間"を取り戻すための十分なプロセスとも言える。彼は人間として死んだ。幸福に包まれて、全てをやり切ったように。本作は大ヒットしたが、見世物として存在を知ることで同じ病気に苦しむ人の治療のきっかけになるかは分からない。ただ、この不条理な世界において、死んで救われる人が多くいるのも事実なのだろう。感動するだけで何もしてあげられない偽善者だらけなのだから。 |
173.《ネタバレ》 記録的・教育的な価値のある映画だとは思うが、映画として面白いかと言われると厳しい。一応、化け物だと思われていたのが段々と知性のある人間である事が分かってくるシーンあたりは良かったと思う。 【alian】さん [DVD(字幕)] 5点(2017-12-24 13:53:59) |
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172.《ネタバレ》 若きアンソニー・ホプキンスが当時から端整な佇まいでベテラン俳優の中に混じって抜群の存在感を放っています。余りにも特異な外見に接した際の人々の反応が丹念に描かれています。ギョッとするだけの者、金儲けの道具と思う者、慈悲をかける者、人となりに触れて気持ちを通わせる者。見世物小屋の仲間達がメリックを檻から逃がしてあげるシーンに、真の醜い怪物はボイラーマンやバイツなのだと痛感させられます。メリックが誰にもサヨナラを言わず母のもとへ旅立ってゆく結末は残念でなりません。「もう、十分に生きた」「もう、生きる事に疲れた」どちらなのでしょうか。 |
171.《ネタバレ》 30年ほど前に観た曖昧な記憶では恐怖映画でしたが、久しぶりに通して鑑賞すると人間ドラマだったと分かりました。その容姿で他人に翻弄され続けたメリックですが、幸せな経験をした日に自ら人生を終わらせることを選べて幸せだったのかもしれません。 【次郎丸三郎】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-09-07 01:05:02) |
170.昔の英国での、エグい話。やってることは人身売買で、身寄りのない身体障害者がサーカスの様な場で、見せ物にされている様がなんとも痛ましい。実話ということで、こんな事が実際にあったのかと思ったが、可哀想なだけで面白いと言えるものではなかった。いい先生に拾ってもらえたが、結局は見せ物には違いない。じゃどうすれば良いのだろうかと、考えさせられる作品。 【SUPISUTA】さん [DVD(字幕)] 6点(2016-11-16 23:44:43) |
169.《ネタバレ》 むかし、小学生に上がったばかりの頃に、どこかの映画館で本作の看板を見て、本能的に恐怖を感じ、長い間、ホラー映画だと思っていた。 実際に観てみると、違っていた。「イレイザーヘッド」のリンチらしい怪奇趣味的な作風はそのままで、人間の残酷さ、倫理観について、強く心に訴えかけるヒューマンドラマとなっていた。 興行師のバイツは見たままだが、ケンドール夫人の行いは、自身の名声を高めるための偽善にすぎないし、トリーヴスは「私のしていることはバイツと同じなのでは?」と苦悩する。そして、病室のメリック氏を酔客に見物させて、その見物料で稼ぐ男もいた。 この全員が、自身の生活のためにメリック氏を "利用" していることだけは事実であり、メリック氏もまた、それに依存しなければ生きてはいけない、、それもまた事実。 私はと言えば、やはり興味本位で見世物小屋を眺めるようにその様子を眺めてみて、深く心に突き刺さりはしたけど、その理由と映画の答えは、私の稚拙な表現力ではうまく言葉にできない。 →2025/1/19 追記。 デビッド・リンチ監督が亡くなり、その追悼で再鑑賞。 メリック氏が「こんな姿に生まれて、母はさぞがっかりしたでしょう」と、トリーヴス夫人に告白するところでは、とても涙を禁じ得ない。 メリック氏の心の美しさ (そのもの) 、本作が最も描きたかったのはそこであり、憐憫、善悪、損得、保身、、そういう感情が浮かんだ時点で、既にメリック氏の心は置き去りにされていることに、はたと気づく。 【タケノコ】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-09-04 00:26:20) |
168.《ネタバレ》 大昔、途中でビビって断念した本作、相当な年月を経て再鑑賞致しました。あ、アンソニー・ホプキンスだ、若ーい、意外にエレファント・マンすぐ出てきちゃうんだ、など新しい発見や意外な展開に軽くビックリ。でもこれって実話だったんですね、知らなかった。とても重い内容で正直なところもう一回観ることはそうそうないけど、頑張って観ただけのものはあったな。なかなか深く良い映画だと思います。 【Kaname】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-07-02 07:57:17) |
167.《ネタバレ》 悪趣味でゲテモノな映画を観てみよう、という歪んだ気持ちで観始めたんだけど、実際観てみるとちょっと違った。自分の道徳心、倫理観に訴えかけてくる。ちょっとハートウォーミングなところもある。普通の映画ではないことは確か。下の下の世界。 【VNTS】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-02-07 19:10:49) |
166.《ネタバレ》 以前から観よう観ようと思いつつ、手が出ていなかった映画です。自分のリンチ監督作デビュー作でもあります。この映画の特徴は各々のキャラクター(劇中で「普通の容姿」を持つ人間)に対して単一的な描き方をせず、重層的に描いている点にあります。例えば、ケンドール夫人がジョンに対してキスをするシーンでは、ケンドール夫人からは「偽善」という言葉で片付けてしまうにはあまりにも崇高な「無償の愛」が感じ取れました。ですが、演劇のフィナーレにて、観客にジョンに対しての拍手を煽るシーンで感じ取れるのは「偽善」以外の何物でもありません。トリーヴス博士にしても、彼がジョンに対して見せた姿勢は「偽善」だけではなく本心から彼の身を案じての行動も数多くありました(行方知らずになっていた彼を抱きとめるシーンなど)。しかし、彼はついにジョンに対して彼自身の口から「友達」と呼ぶことはありませんでした。結局のところ、ジョンが「ベッドに横たえて眠る」ことで、自らの人生を終わらせるという行為に至ったのは、そんな「普通の容姿を持つ人間」である彼らと「醜い容姿を持つ自分」とでは分かり合えない壁があることを感じていた為ではないかと思うのです。彼は「普通の人間」として生きたかった。そんな彼が見せたせめてもの行為が、「ベッドに横たえて眠る」こと。こんなのって哀し過ぎる…。ジョンは本当に自分の人生に満足して死んだのでしょうか。せめて、トリーヴス博士がジョンに「おやすみ、我が友よ」と声をかけるだけでも結果は変わっていたのではないでしょうか…。 【bolody】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-08-09 23:46:07) |
165.《ネタバレ》 デビットリンチ強化月間につき、まずこちらを拝見。 何だか素直に感動しましたねえ。悲惨な扱いをされる描写は見てるこっちも辛く、やるせない気持ちになるのですが、かく言う自分も、なかなかエレファントマンの顔が出てこない演出にまんまとハマり、「どんな顔なんだろう」と単なる興味で見てみたいと思ったのは、見世物小屋に集まる観客と同じなんですね。 所々で、人間としての尊厳を訴える純粋なジョンに悲しさを覚えたものですが、やはりラストシーンで仰向けに寝るシーンは一番悲しい。私だって人間なんだ、普通の人間と同じように眠りたい。母を想いながら最期を迎えるジョンは、安らかな気持ちだった事でしょう。こうして皆と同じように人間として眠りにつくことで、今までの苦しみから解放されたのだと捉えなければ、あまりにも辛い。 作り手の意図はどうであれ、僕は彼の純粋さにとても心を動かされました。 |
164.《ネタバレ》 一瞬でも、どんな容姿なんだろうと興味本位で見てしまった自分がいるだけに、只々『僕は人間だ』というジョン・メリックの言葉が突き刺さります。 おめかししてトリ―ヴス博士の家に招かれ、奥様との会話中『美しい女性に優しくされたの初めてなんで』と嗚咽するジョン・メリック・・・ この場面だけで如何に今まで虐げられてきたのかと、彼の純粋さがわかる。 この映画は、何度も観れる映画ではないかも知れませんが、多くの人に観てもらいたい・・・そんな映画です。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 9点(2012-03-23 15:26:22) |
163.優しいけど悲しい映画。美しかったり醜かったり、人間の様々な一面がよくわかる。 【noji】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2012-02-23 00:31:46) |