1.《ネタバレ》 悲しい映画です。ラストでプレシャスは母の呪縛を自ら解き放ち、自立の道を歩み始めようとしますが、その彼女に未来への道が開けている訳ではなくて、限りなく閉ざされた狭い道に歩みだしただけである事がハッキリしているがゆえに悲しいのです。貧しい環境に生まれ、愛を受けず、ただじっと耐えてきたプレシャスを、誰かが救ってくれるのではなく、更なる不幸が積み重なってゆきます。希望は見えても、絶望はそれを上回って。それでも束の間の愛でも輝きをもたらすのならば、人は何をすればいいのだろう、何ができるのだろう、と。個人レベルだけではなく、教育現場の限界、行政の限界が描かれ、途中で素晴らしい国アメリカ的なニュアンスを見せたかと思えば、更にそんな幻想を打ち砕く厳しさが描かれ、子供をどう生かしたらいいのか、どう守ればいいのかを問うてきます。子供に対する虐待が毎日のように報道されるこの国も、他人事ではない話。怪物のような母親の存在が脅威的で、だけどこんな現実があちらにもこちらにも存在しているという恐ろしさ。ただ、映画自体は超悲惨版『アメリ』あるいはハンパな『嫌われ松子の一生』みたいで、ブラックな笑いを盛り込んだり、手の込んだ映像手法を駆使し過ぎていて、もう少しマジメにやろうよって思ってしまったのが大きなマイナス。プレシャスの内面世界を彩る事で彼女のキャラクターに親しみを与えようとしたのでしょうが、かえって悪趣味。