25.ノスタルジアにつきまとう記憶の美化によって隠蔽された事実を暴き、真剣に過去と向き合おうとしても、過去が記憶という曖昧なものによってしか現れてこない以上、過去を否定することは、記憶によって形成された自己を否定することになってしまうのではないか。そんなことを考えさせられた。独特の色使いが良い。『書を捨てよ町に出よう』のときよりずっと洗練された感じがする。 【クルシマ】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-08-18 10:52:12) |
24.《ネタバレ》 「書を捨てよ町に出よう」もそうだが、この人の作品は内省的に心の深層をえぐりながらも、映画の志向はむしろ外の世界、未来へと向かっているように感じられる。前半美化して描かれた少年時代を否定し、後半では過去の自分と向かい合い、その半生と対局している。よくも悪くも過去の記憶は人間を束縛する。ゆえに不満足な現状と対比して、昔は良かったと嘆くこともあれば、過去の記憶がコンプレックスとして残り続けることもある。しかし、本来人間は将来の成長を志向していかなくてはならない。過去と真剣に向き合うことは、未来への飛躍の手段であり、ただ感傷的なものではない。三上寛も途中で決起を促している。寺山はそれでも過去と決別することはできなかった。映画の内容はおどろおどろしいが、鑑賞後に暗い気持ちにはならない。むしろ前向きな気持ちになれる。最期のシーンは度肝を抜いた。恐山にも行ってしまった。 【こまごま】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-08-04 12:21:37) (良:1票) |
23.不気味な映画である。主人公の幼い頃の故郷の原風景が独特の切り口で映像化されており、他のどの映画とも一線を画す。エンターテイメントとして見れる映画ではない。しばらく残影のように頭の中に嫌な感じで残っている映画である。鬼才・寺山だからこそ作れた作品といえる。 【やぶからスティック】さん [DVD(邦画)] 5点(2007-07-28 12:51:18) |
22.《ネタバレ》 さすが詩人だけあって、タイトルがいいですね。 田園風景に突拍子もないアイテムを放り込んで、それを違和感なく調和させるセンスがすごい。狂気の世界でありながら独自の秩序を持ち、不思議に整然としている。下北半島を「まさかり」に見立てて、青森県のかたちを「人の首を切り落とす瞬間」だという発想なんて、完全に逝っちゃってる。鈴木清順とはまた違ったおどろおどろしさがあり、寺山なりの世界観が確立されている。天才的に狂っている。 明らかに異次元の世界ではあるけれど、それを通して日本の土俗的精神の本質ともいうべきものを浮き彫りにしているように思った。田舎の人間=心の温かい人間とステレオタイプにいわれがちだけど、日本でもっとも自殺率の高い県ワースト3が東北の三県だったりするように、強固な農村共同体によって苦しめられてきた人々は少なくない(自分も東北の出身だから遠慮なくいわせてもらう)。寺山修司はそうした田舎の暗部を鋭く抉っているように思える。異様な世界観ではあるが、むしろ現実を端的に表した結果としてそうなったのだろう。 母子関係という中心的な題材には共感しにくかったが、最後の独白にはそれなりに胸を揺さぶられた。幻想のなかでなお、寺山を支配する人間関係という呪縛。地方の因習にも似た歪んだ精神の戒律が、彼をがんじがらめにして離さない。マザーコンプレックスについてはともかく、そうした人間同士の「呪」のあり方は理解できるように思った。 【no one】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-02-27 23:34:42) |
21.《ネタバレ》 田舎を、田を、畑を母を、切り離そうと考えるばかりに、土着的な人格、習慣や因習を卑しいものと捉えすぎる、また作品内に取り込みすぎている嫌いがあるが、それもまた寺山の回帰への抵抗と考えれば可愛らしいものである。 過去を捨てるということ、過去があり現在の自分があるということ、記憶(映画)の中で母を殺し、故郷を捨て現在の自分と異なる自分を求めたこと。思い通りに動いてくれない20年前(記憶の中)の自分、映画(記憶)の中ですら田園を捨てることのできない寺山、少年の童貞を奪うことで父なし子を捨てさせられた復讐となし村を捨てようとする女、息子を捨てない母、世を捨てる男女。 雛壇は川を流れ、空の色は明暗を彷徨う。暗闇で映えるタバコの煙。支配する赤。支配する舞台装置。新宿区新宿字恐山。魔術はまだ完成を見ぬが、それでも尚頭一つ抜けた演出の才。寺山修司とは、事件である。 【stroheim】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-09-24 12:15:39) (良:1票) |
20.話はいつもの如く理解しがたい。しかし、映像は寺山修司らしい美しさ、おどろおどろしさに満ちていて 物凄く濃い世界をつくりだしている。ここまでくるとちょっと不気味。人によって評価は分かれると思うけど、どっちにしろ強く印象に残ることは確かな作品。 【新井】さん 10点(2005-02-28 23:49:01) |
【よしふみ】さん 6点(2005-02-26 13:13:30) |
18.自らを見つめ直して、自滅したインテリ馬鹿風の前作からグッと個人的なテーマで普遍的なイメージを描こうとしたことには好感が持てます。故郷を三途の川の畔に見立て、生者と亡者がひしめく地獄の一歩手前に設定したのには共感しさえする。陳腐なアングラ演劇臭も、前作同様の田舎者コンプレックスにマザー・コンプレックスを足しただけの陳腐なテーマを描くのには合ってる(江戸っ子の上、マザコンの気が全く無い私には通用しないけどね)。でもとにかく、この映画は単純に面白いよ。最後まで観てて飽きない。ということで、えも言われぬ空気女のエロティシズムに、6点献上。 【sayzin】さん 6点(2004-09-24 16:10:43) |
17.懐かしのATG映画作品ですよね。たしか中学のときに公開されたと思います。友だちと「砂の器」を見に行った時に予告編を見ました。私がこれを見ようと思ったきっかけはただひとつ、高野浩幸くんが出ていたから。ポスターも彼がガクラン着て時計を持って立っているのね。NHK少年ドラマシリーズ「なぞの転校生」の岩田くんね。民放のドラマでも活躍してました。劇場で見たわけではないです。中高生のころ夜中にATG映画がたまに放送されていてこれもひとりでこっそり見たなあ。あのころの私には奇抜で気味悪くてわけがわかんなかった。「ひゃ~高野くんがこんな映画に出てるぅ」とただただショックだったわね。この点数はドラマでは見られない高野くんが見られたことに対するものです。ミーハーですいません。 【envy】さん 6点(2004-08-31 20:26:21) |
16.この幻想的な世界は鈴木清純に近い。まあ、寺山の方はカルト的な雰囲気が感じられるけど。 まあ、個人的にこういう作風はあまり好きじゃないんだけど、母と子っていうテーマが面白かったので6点。 【夏目】さん 6点(2004-08-31 11:25:14) |
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15.《ネタバレ》 『昭和58年の仏様を降ろして下さーい!』 寺山修司の超皮肉を込めた故郷がこの映画には映し出されているのではないでしょうか?明らかに村には妖怪が住んでいるし、新高恵子は赤ん坊を間引きするし、やってきた修学旅行生は全て老人だし。そんな環境の中、少年はとうとう家出を試みるがその願いは果たされずに映画は終わる。ちなみに「家出のすすめ」「書を捨てよ町へ出よう」などで青年層へ「親不孝」を散々勧めた寺山本人は九条映子と離婚し、母一人子一人の生活をもう一度してこの世を去っている。きっとこの映画はそんな矛盾した寺山の気持ちそのままだ(憎むほど愛していたという母親への気持ち)。だが母親より早くこの世を去った寺山は最後の最後に親不孝を果たしたといえるのではないでしょうか? |
14.すごいな、寺山修司の世界。一歩足を踏み込めばそこから逃げ出せないような妙な感覚に陥ってしまう。そして見ているとぞくぞくと鳥肌が立ってしまった。いきなり恐山、白塗りの人々、異様なサーカス団、、時間と空間のねじれた間で物語はすすんでいくようだった。三代前のおばあちゃんを殺したら自分はどうなるのか?と問われ、その答えを探し過去の自分と出会う。過去なのかと思ってみたら現代だったり、ことごとく期待を裏切られた。これは日本人にしか描けない世界なのだろうな、あの映像、、。この世とあの世をつなぐ場所、恐山はまさにぴったりであった。余談になりますが、主役の高野浩幸君、昔「なぞの転校生」などにも出てたのですが、今彼はどうしてるのかなと、思ってしまいました。 【fujico】さん 7点(2004-04-02 22:11:07) |
13.”現在の私”が出てくるまでは正直、またかよと言った感がありつまらなかったが、”現在の私”が出てくる段階で私のような観客の考えを見透かしアッサリと超えていかれた。見切っていたつもりがスッカリ見切られていた。そこからはどこまで付いて来られるかを試されるようで参りました。ウソで彩られた”想い出の私”を捨て去り、真実の”過去の私”と向き合い、新たな私を見つけようと模索する。「家に時計は一つで良い」と過去を柱時計で縛る母、犯され男となり腕時計を付けた私は自らの時間を歩むが、どこへ行こうが母と本籍恐山は付きまとい、離れられない存在である。東北のフェリーニといった感じのする傑作。 【亜流派 十五郎】さん 9点(2004-03-16 00:15:55) |
12.強烈です。ほんとに強烈です。鑑賞後はあんまりいい気分ではないが嫌いな作品と言うわけでもない。もうこれは、寺山修司のディープな暗い世界へと引きずりこめられてしまったからでしょうか。ふるさとに対するイメージの映画はすきだが、これもその一種でしょう。でもおれはタルコフスキーやアンゲロプロスのほうが好きだ。 【たましろ】さん 7点(2004-02-05 00:19:33) |
11.はたして自分に、表現するに値するほどの内実があるのだろうか・・・そうした検証なしに安易な「自己表現」が垂れ流されてる現実を苦々しく思っている人間としては、こういった映画を手放しで絶賛するわけにはいかないような気がするんです。出来損ないのエピゴーネンだらけでしょ? 世の中。 【じゅんのすけ】さん 8点(2003-06-18 19:48:43) |
10.まずはその映像美にひかれる。その後に何かが残る。映画には内容を共感し感動、興奮するものと、見た後なんだったのかよく解らないが、ずーっと自分の中に残っている映画がある。両者共とてもいい映画だと思う。もちろん田園に死すは、私にとって後者だ。寺山の作品はどれも、皆の思春期に訴えかけてくる。ある種自分のトラウマというか、そういうものに触れてくるのだと思う。だから鮮烈にイメージに残るしどこか共感してしまうのだ。 【MxX】さん 8点(2003-05-20 14:35:54) |
9.青森のいや東北の貧しさの中での強烈な母と子の関係を始めとしたタブー。見ていて辛かった。でも見たい。まさに見せ物小屋。それだけじゃないのかもしれないけれど、強烈な印象。思春期に見ていたら人生が変わってしまうかも。 【てっつん】さん 8点(2003-04-17 03:05:32) |
【えたひにん】さん 8点(2003-04-08 13:23:49) |
7.映画に明確な意味を求める人は絶対に観ない方が良いです。意味が無いからじゃありません、観ても絶対に理解できないからです。私もはっきりした意味はよくわかりません、でもあの強烈な映像だけで十分な価値はあります。 【ナオキ】さん 9点(2002-12-10 00:15:19) |
【貯炉】さん 10点(2002-10-02 18:01:03) |