1.ひとりの女子高生が、ある夏、四国巡礼の旅に出る…と言うか、家出する。そして彼女が出会い、体験する人々とのあれこれを描いて、これがもう全編に詩と現実がせめぎあい、溶け合う、本当に「美しい」日本製ロードムービーの傑作でした。主演の高橋洋子が実に初々しく、途中の旅芸人一座とのエピソードではヌード&レズシーンまで演じてしまうのだけど、これがハッとさせられるものの少しもいやらしくない。むせ返るような緑したたる四国の夏が、画面からも感じられるようなオールロケの映像は、10代の少女が見た・感じた・記憶した心象風景をヴィヴィッドに捉えています。そこに被る吉田拓郎の音楽も、単なるBGMじゃない画面とのコラボレーションとして、見事に渡り合っている。監督の斉藤耕一は、この年、もう1本『約束』という”冬”の映画を撮っていますが、対照的なこの2本の傑作を作りあげただけでも、彼の名は永遠です。