3.《ネタバレ》 “家族”を繊細に描き切った良作といえる。本作には“家族”の中に微妙な不協和音が常に奏でられている。その微妙な“空気感”が見事に演出されている点が素晴らしい。
問題ばかり起こす妹に対して、自分の結婚式は自分が主役だとばかりに邪険に扱う姉と、久しぶりに家族に会える喜びがあるのに祝福されない妹の間には、いつ爆発してもおかしくない空気が流れている。また、キムには弟を事故で死なせてしまったという拭い去れない過去があり、“家族”の中でもわだかまりが消えずに残っている。楽しく笑顔で溢れていた「食器洗い合戦」中にも、死んだ弟の影がかすめると、一気に笑顔や笑い声が消えてしまうような繊細さが描かれている。
このような問題を抱える“家族”であり、お互いにいがみ合い、憎しみを抱くような脆さもあるが、なかなか壊れることのないものだと感じさせる。どんなに罵り合っても、抱しめ合えば、憎しみも消えてしまう。ラストの風呂場での姉妹の姿は実に感動的なものだった。特別な言葉も何も要らないのかもしれない。姉妹というものはそういうものなのだろうか。
キムの“家族からの愛”を求める姿が痛々しく描かれている。
アン・ハサウェイがアカデミー賞にノミネートされたのも分かる演技だ。
どんなに愛されたいと願っても、まるで「はれもの」のように扱われてしまう。
姉の結婚を祝福する輪の中でも完全に浮いている姿が印象的だ。
心の中では「謝罪」で溢れており、心の中から楽しむことはできないのだろう。
キムには弟を失わせてしまったという苦しみを抱えているが、それを抱えているのは彼女だけではなく、母親もまた弟の死の責任を抱える存在でもある。
弟の死が離婚の原因ともなっていそうだ。
母親が素直に結婚を喜んでいないのは、キムと同じ境遇だからなのかもしれない。
愛を求めて母親に会いに行っても、同じ境遇同士が傷を癒せるはずもない。
ラストではキムは施設に戻っていくが、自分には“帰る場所”があると分かったのではないか。最後のキムには何かが“吹っ切れた”感じがした。
悪い意味のものではなくて、良い意味のものだと思いたい。
ホームビデオ風の映像もなかなか面白い。
まるでイラクから帰ってきた軍人が撮っている映像を見ているかのようだ。
監督の狙いは、観客は結婚式に呼ばれた客であり、あの場面に遭遇しているかのようにという意図を込めているのかもしれない。