2.しまなみ海道を原付で何度か渡ったことがある。海風がとても気持ちよく、風景は抜群に良い。
しまなみ海道を原付で通行する際、橋の部分では自動車専用道路の測道を通行し、各島々に入ってからは、一端島内の一般道に下りて海岸線をぐるりと回ってから、再び橋の部分から自動車道に戻る仕組みになっている。
この映画のクライマックスでは、その細かな部分もきちんと描写されていた。
他にも映画全編に渡り瀬戸内の島の普遍的な“生活感”を描き出せていたことは素晴らしかったと思う。
その一方で、ストーリーそのものは大したものではない。
妖怪たちとの不思議な交流も含めて、どこかで見たことがあるようなありがちな世界観だった。
妖怪たちの造形と動きはユニークだけれど、キャラクター性そのものに目新しいインパクトは無く、存在感の薄さが気になった。
アニメ映画として、妖怪たちのこのキャラクターの薄さは非常に残念な部分だったと思う。
妖怪たちのキャラクターの薄さに対して、ヒロインはとても魅力的だった。
傷心し、身も心も渇ききった少女が、同じく心傷ついている母親と共に瀬戸内の島に移り住む。
少女にとっては「異世界」とも言える新しい生活環境の中で、戸惑いつつも、異形のものの“雫”に触れ、降雨に濡れ、さざ波を感じながら涙を流し、次第に“潤い”を取り戻していく姿は、まさしく文字通りに“瑞々しさ”を感じた。
この映画を彩る様々な要素は、とても有り触れたもので、それが物足りなさにも繋がっていることは否めない。
ただ、その普遍的な世界観伝える感動が、シンプルに響いてくることも事実で、観賞後にはヒロインと同様に心の潤いを覚えた。