3.《ネタバレ》 「クロール」は、ハリケーンとワニというフロリダを悩ます自然の脅威がタッグを組んだサバイバルスリラーだ。
カトリーナの被害が残るニューオーリンズを舞台にした「バッド・ルーテナント」にも、妙なところでワニが出ていたように、この2つのアイコンだけでアメリカ東南部を強く意識させることができる。本国に住んでいる人たちにとっても、地域色の強さが出た興味深い組み合わせかもしれない。
しかしながら去年は去年でハリケーンと強盗(ヘイスト)を組み合わせた「ハリケーン・ヘイスト(邦:ワイルド・ストーム)」なるトンデモ映画が作られていたが、ハリウッドではビーストと自然災害とのマッシュアップが流行り始めているのだろうか。まぁ本作「クロール」の中でも火事場泥棒が出るあたり、ハリケーン・ヘイストも含んでいるが。
さて、主演は「メイズランナー」シリーズで快走を披露したスコデラリオだ。
腹ばいで迫る(クロール)ワニの群れに、華麗なクロール泳法で挑む。この人、泳ぐのも速いんかい(笑)
全体的には面白さがあっていいと思う。題材は奇抜であるが、悪い意味でのバカっぽさはぎりぎり感じられない。
ただドラマ面に偏重している分、テンポを損ねたかという印象か。
また、同じく可憐な女の子がサメに挑むサバイバルスリラー「ロスト・バケーション」で見られるような切迫感を醸す工夫は少なく感じた。
資材が多すぎるのである。発煙筒にしろ銃にしろ、弾薬少なく後生大事にしまっておいて、ここぞというときに使うからこそスリルがでる。
水の増加によって舞台が変わってくというシチュエーションがなかなか面白かっただけに、攻略法についても工夫があれば良かったなと思う。
ちょっと面白かったのはバリー・ペッパーが演じたお父さんか。
「ワニは金属音を嫌う」「ワニは脳みそちっさい」「ワニは飛沫の音に寄る」などと微妙なワニトリビアを並べ立てた挙句、後は頼んだだの、(ワニの中を)泳げだのと、ハチャメチャな注文を投げかけてくる。
わざわざワニだらけの中をボートで移動すると言うもんだから、どんなすごい鉄砲水が来るのかと思ったら、そこそこの威力で拍子抜けしてしまった。最初から自分の家の高所に非難するのはそんなにリスキーだというのか。
大体の見せ場はこのワニトリビアおじさんが招いていないか。
ともあれ、ワニは強くて大満足。
以前ワニ釣りができるという文句に釣られ、ベトナムのスイティエン公園というヘンテコなテーマパークを訪れてみたが、飼いならされているからか、そこのワニさんはホノボノ穏やかだった。
なのでワニには満足なのである。こういうワニが見たかったんですよ僕は。怖いワニ。デスロール!
ちなみにエンディングテーマは「シーユレイター・アリゲイター(またね、アリゲーターの意)」という洒落た選曲である。
この曲が由来である「シーユレイター・アリゲイター」という表現は、英語話者がたま~に使う別れ際の挨拶のことで、レイターとアリゲイターをかけたダジャレのようなものだ。
では、実際にネイティブにこう言われたら何と返すか。
そんな時には、ワイルとクロコダイルをかけて「アフターワイル・クロコダイル(またね、クロコダイルの意)」と笑顔で応えよう。
どうですお父さん、僕のワニトリビアも中々のものでしょう。