81.《ネタバレ》 スティーブン・キングの作品はどれもシンプルなアイデアなのに執拗な心理の書き込みによって登場人物に感情移入させる。この作品もそう。
脚本は比較的淡々と進むが、これはこれでよいだろう。
キーマンとなるのは元婚約者。この人の家からの帰りで事故に遭うことになる。
五年後、再会して少し静穏な心を取り戻す。これで記者会見となるのだが、ひともめして、母の死亡、実家に閉じこもる。
子供と一緒に尋ねてきたとき関係が戻って明るくなり、連続殺人捜査に協力することにする。だが殺人犯の母親に撃たれて負傷、一人で閉じこもることになる。
家庭教師をしている少年とのエピソードではからまないが、上院選挙のボランティアとして登場、握手して議員の未来をみるきっかけをつくり、暗殺時も元婚約者の赤ん坊が楯となる。そして主人公を看取るのも元婚約者。また真実を記した手紙を書いた相手も元婚約者。
普通結婚し、子供のいる主婦が、五年間も昏睡状態となっていた元恋人と関係が戻らないと思うのですが、そこは恋愛の神秘。女性のほうから身をまかせます。
「もし若いときのヒットラーに会ったら殺すか?」という質問ですが、
歴史が変わればいいわけで殺す必要はないでしょう。
いい就職口を見つけてやるとか、いい結婚相手を見つけてあげるとか。
平凡な人生を送らせてあげればいいでしょう。
それでも心配な場合は、顔を焼くとか、盲目にするとか唖にするとかして、カリスマ政治家になれないようにすればいいですね。
それにウォーケンさん、そんな急ぐ必要はないでしょう。核戦争は、まだまだ先のことですから。未来を変える能力があるんですから、じっくりと機会を待ちましょうよ。
わざわざ大衆の面前で射殺する手段を選ぶこともないでしょうに。
少人数のとき、支持者を装い、そっと近づいたほうが確実です。
完全犯罪にすれば悲劇は起こりません。自分が犠牲になることはありません。
もっともこれは悲劇を際立たせるためのキングの演出なのですが。
低予算ながらよくできている映画と思います。