1. チャップリンが、名作『ライムライト』 (1952) 完成後の渡欧中に、アメリカ司法局から再入国は保障せず、という事実上の国外追放の通告を受けて、そのまま住み着いたヨーロッパで撮った、最後の主演作。確かに、前作に比べてちょっぴり太めになったチャップリンは、「放浪紳士チャーリー」の頃の全盛期よりも切れこそありませんが、どの時代になっても変わらぬ、彼らしい愉しい演出を見せてくれます。僕が好きなのは、シャドフ王がホテルの浴室で、隣の浴室でシャワーを浴びながら歌を歌っている女性を覗き見ようとするシーンと、アン・ケイと一緒に出かけるナイトクラブでの、2人組コメディアンのパントマイム・ショウのシーン。どちらも、チャップリン自らがじっくり演技指導をしたに違いない、彼の動きや表情、仕草をそのまま忠実に再現したような、実に愉しいシーンに仕上がっています。また、この映画ではホテルのルームサービスや、レストランで料理を注文するシーンが、やたら多く出て来ます。チャップリンの映画では、食べ物が特に丹念に写されることが多いと思うのですが (例:『犬の生活』でのホットドッグ、『キッド』でのパンケーキ、『黄金狂時代』でのドタ靴や豆スープとコーヒー、『街の灯』でのスパゲッティ、『モダン・タイムス』でのバナナや自動給食機でのとうもろこし・スープ・ケーキ、カフェテリアでのお盆2つ山積みの料理の数々…などなど) 、この映画を観た後、僕もホテルに泊まってルームサービスを注文してみたくなりました。