8.《ネタバレ》 スピルバーグはアメリカ人になってしまったのか?
アメリカに渡ったユダヤ人って別のちょっと高い所から見ているような気がするんです。
明らかにイスラエルにいるユダヤ人とは違う。
だから中立的な立場で平和的に考えられるのではとも・・
じゃあパレスチナ側をもっと悪く描けばよかったのか?
しかしそれではただの勧善懲悪の娯楽スパイ映画になるし、
この原作を使う意味がないでしょう。
そう考えてそしてイスラエルの非難を浴びながらもこんな政治映画を作った、
そんなアメリカにいるユダヤ人のスピルバーグは度胸があるなぁと・・
チラホラ見えるそれでもアメリカ人になりきれない苦悩が、
作中にも現れている気がするのです。
その苦悩は主人公の苦悩でもあります。
ドイツで生まれイスラエルに住む主人公モサドは、
現在はイスラエルを捨て名を変えてアメリカに住んでいる・・
作中の十字を切るシーンが?だったのですが、
そういう細かいところに隠されているのかも・・
こういうこともわかった上で観賞するとまた違うかもしれない。
高見の見物、理想論は日本人にも言えること。
だからあえてこの作品は調べてから観る方が入りやすい。
このふたつの民族がなぜ仲が悪いのかも、
何1000年も前のペリシテ人(パレスチナ)とヘブライ人(ユダヤ)からきていること、
遡ればダビテ王のころですから根が深いのです。
ダビテといえばキリスト以前の時代です。
何1000年も前から何をやってるんでしょうか・・
おそらくスパイ映画にリアル感がないなぁと思われている人にも、
娯楽の面でも楽しめるように演出されています。
私はカメラワークを観るのが好きなのですが、
その点でもこの作品はよくできていました。
車を使った演出は何度も出てきましたがうなりますよ・・
映像を重ねながらの心理描写もよくできているし、
160分以上ある作品とは思えないくらいでした。
ただ・・スピルバーグが作ったということで、
映画の中に個人的な葛藤が反映されて、
観客に答えをゆだねる曖昧な作風にもなったことは確か。
そんなに痛い(精神的にも)映画を作らなくてもと思えたり、
特にラストが曖昧で映像として問いかけで終わっています。