1.《ネタバレ》 今年だけでもすでに多くのアメコミヒーローがスクリーンに登場したが、この老舗シリーズの存在感と面白さこそ真打ちと呼ぶに相応しい。
本作は「ファースト・ジェネレーション」から始まった新三部作に一応の決着を着ける体で制作されており、ドラマとバトルが渾然一体となった熱いアクション映画に仕上がっている。新三部作を予習していれば、より感慨深く楽しめるだろう。
前作DOFPで新たなタイムラインが発生し、映画シリーズも原作の平行世界の概念を持ち込んだような形になった。もしかすると日本では馴染みのないスタイルかもしれないが、「これはこういうモン」として、あまり気にせずに鑑賞する方が良い。
特徴としては、前作が時間移動を取り入れた怒涛の展開を見せたのに対し、アポカリプスは極めてX-MENらしい構成で語られることだろうか。
前半はアポカリプスの再誕を核に、様々なキャラクターのドラマが描写される。その感触はもはや群像ドラマのそれであり、DOFPのような勢いは無いものの、しっかりとクライマックスに繋がっていく。
このドラマの多彩さこそX-MENの核、そしてアイデンティティと言える部分だ。間違いない演出だと言える。
しかしながら中盤に大きな山場が挿入されなかったのは少々食い足りないか。
アポカリプスを際立たせる描写が不足していることから、具体的な強さがぼやけてしまった。もちろんアポカリプスは分子構造を操り、大陸間を瞬間移動すれば、驚異的な速さで移動することもできる。明らかに最強クラスのミュータントだ。しかし単に力の大きさを見せているだけで、敵に回すことの怖さに直結していないのが惜しい。
実際、中盤には先走ったハボックが大爆発を誘発し、それを通りかかったクイックシルバーが助けるという見せ場が用意されているが、これは少し雑な印象を受ける。例えばここを「成長して超強力になったハボックがアポカリプスの圧倒的な力の前に完敗し、学校を破壊される」という展開にしても良かったのではとも思う。これならアポカリプスの怖さを印象付けられるし、クイックシルバーも活躍できる。
過去作品と比べると、評価の高いファースト・ジェネレーションでは、ショウの恐ろしさを描くシーンがしっかりある。進化論を掲げたミュータントをより強い進化で圧倒する。皮肉の効いた象徴的な一幕がショウの悪役としての魅力を底上げしたのだ。こういう描写が本作にも欲しかった。
しかし不満点はあるものの、終盤はそれらを吹き飛ばすほどの勢いと熱量になっており興奮必至。特にチャールズを救出してからのクライマックスの盛り上がりは特筆に値する。
刀折れ矢尽きたかという場面での味方の助太刀は、まさに王道。
「お前は一人、だが私たちはちがう」「俺が裏切ってしまったのはお前(アポカリプス)じゃない」
丁寧にドラマを描いたからこそ熱い台詞がバシバシきまるというものだ。
それだけではない。様々な葛藤が入り乱れた最終戦で浮かび上がるメッセージとは、このシリーズが訴えて続けてきた「希望」そのものである。
差別や恐怖に支配された60年代に世相を反映して登場したXmenというコミックは、映画になってもより良き世界への希望を模索してきた。激しい戦闘描写の中で、この戦いの勝敗を分けうる鍵として希望に言及した点が見事である。
回想シーンにもあるが、過去作でチャールズがエリックやレイブンに送った言葉が、本作で大きな希望として集約されていることに気付く。
アポカリプスという絶望が迫る中、そこに敢然と立ちはだかったのは「X」という希望のシンボルなのだ。その熱さ、カッコよさといったらこのシリーズ屈指の名シーンになるに違いない。