4.中村鴈治郎のひょうひょうとした自然体の演技が良かった。浮き草暮らしの旅役者がようやく腰を落ち着けて家族と暮らそうと思っても長年の空白は埋められない。突然の父の出現に息子は拒絶反応をし母はあきらめたように寂しく見送るしかない。寂しい気持ちでまた旅の生活に戻っていく。若いときはともかく年をとってくると浮き草暮らしは辛くなり、どこかで落ち着いて暮らしたいという気持ちはよく分かる。この父の気持ちも母子の気持ちもまっとうなんだけど交わらないのが切ない。相棒の京マチ子が再び旅の道連れになったのはまだ救いがあった。一座での彼女の赤城山など見られるのも面白い。