36.《ネタバレ》 良心を持ちながらもいざという時押さえきれない衝動、思い続けていた恩人に命を奪われる不条理を見事に描いた内田吐夢渾身の大作。地道に執念の捜査を続ける伴淳三郎が渋い。成功者が暗い過去を隠すべく殺人を犯すところは「砂の器」に通ずるものがあるが、「天国と地獄」も含めて個人的には邦画の3大犯罪サスペンス大作と評価しています。 【きーとん】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2010-08-07 16:06:31) |
35.《ネタバレ》 3時間という長い上映時間は全く飽きずに映画を堪能出来ました。三国連太郎、伴淳三郎、左幸子の重厚な演技は素晴らしく本作の屋台骨を支えています。特に前半のドキュメント的な不穏な描写は息を呑みました。中盤からの左幸子演ずる娼婦・八重が三国演ずる犬飼に出会ったことによって、生きる支えを得て力強く生きていたのに、再び犬飼と再会を果たした時のあまりにも皮肉な結末は胸に詰まります。映画的魅力が数多いのでこれだけで十二分に評価に値する映画だと思います・・・が・・不満もあります。まず再会した八重を犬飼が殺した後、たまたま目撃した若い使用人を殺害し、犬飼は二人の死体を海へ捨て心中という形で偽装しますが、これはお粗末過ぎでしょう・・八重は犬飼の新聞記事を所有したままだし、そもそも二人には何の関連性もない、すぐボロが出るのは目に見えてます(普通なら死体を発見されないように隠すはず)。実際にあっけなく犬飼が疑われて取調べされます。しかも、その犬飼の警察の捜査シーンは丸ごとカットで長々と刑事達が調査結果を報告するだけで捜査のサスペンスも感じられず味気ありません。あとは、ほぼ高倉健演ずる刑事と犬飼の会話のみで物語が進行するので前半と中盤の躍動と比べると、かなり後退した感は否めません。犬飼が事件当時に極貧の中、どこまで切迫していたか、その背景をもう少し時間を割いても良かったのでは?と思いました、そこが足りないので牢屋で犬飼が初めて慟哭するシーンもこちらにはあまり気持ちが伝わって来なかったです。色々不満を述べましたがトータルで見るとやはり、エンディング時には『あー映画を観た!』という満足感は得られてしまうので個人的には好きな部類の映画なんですね。 【まりん】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-11-01 19:50:38) |
34.なんと言ってもロケーションの素晴らしさと清濁併せ持った人間描写の緻密さに驚かされる。堂々たる和製サスペンスの珠玉。蛇足ながら、お茶なしでオニギリ二個をはぐはぐと食らう三國連太郎には、ハラハラさせられてしまった。ホント、蛇足。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-08-30 21:36:21) |
33.久しぶりに、古い日本映画の骨太なサスペンスが観たくなり、週末の深夜のレンタルショップで今作のDVDを手にとった。 深夜の鑑賞で、183分という上映時間はさすがに長かった。 物語の題材も想像よりもセンセーショナルなものではなく、どちらかというとありきたりな部類のものだったので、淡々としたモノクロ映像の中で次第にまどろんできた。 しかし、ストーリーの展開以上に、映し出される登場人物たちの言動や、時代の風俗描写に惹き付けられる部分があり、そういう部分がこの映画の「力」なのだろうと思った。 時に緻密に、時に大胆に描き出される映画作りの空気感は、まさにこの時代の日本映画の力強さだと感じる。 ただ細かい展開を見ると、もう少しサスペンスとして面白味を持たせることもできたのではないかと思う。 10年という年月の間に絡む人間模様をもっと密に描くことができれば、それぞれの人間性や葛藤が更に如実に伝えられたのではないかと思った。 いまひとつ、それぞれの人間の感情が響いてこなかったことは、映画の性質上勿体なかった。 ただし繰り返しになるが、この大長編を独特の空気感で描き出すことができたこの時代の日本映画のパワーは物凄い。 現在、これほどの規模の大作映画の製作となれば、安易な商業主義に走ってしまうことは必至であり、今作のような特徴のある作品には成らないと思う。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-04-26 10:27:22) |
32.《ネタバレ》 上映三時間、劇中10年間の歳月を、ある事件・人物にスポットを当てて追ったサスペンスプチ大河ドラマ。世紀の連続殺人事件というわけでもない、どちらかといえば地味な事件をここまで飽きさせずに追っていかせたのは、サスペンスに重きを置きすぎず、人間ドラマを主軸に、濃密な生活臭を撒き散らすことに成功しているからでしょう。 ちょっとイってる左さんの快演は見事だし、主演の三国さんの不敵な表情も貫禄充分。サスペンスとしては地味ながらも、手抜きはなく、こちらに与える情報の量が絶妙で、こちらだけが知っていることもありながら、真相については知らされず、刑事側の人間の立場で物語を一緒に追っていけるような流れが巧い。 ただ、前半部の事件の見せ方が良いぶん、後半の「コロシ」に関しては、ちょっと場当たり的というか、流れに無理矢理さを感じてしまい、物足りなく感じてしまった。 【すべから】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-02-09 12:56:52) |
31.《ネタバレ》 たいへん高い評価を受けている理由が良く分かりませんでした。 まず、犬飼・八重・弓坂の誰にも共感できなかった。終戦直後の貧困=飢餓がそれぞれの人生を変えてしまったということだと思うのだが、その飢餓がリアルに響いてこなかったからだろう。八重を例にすると、貧農の出自ゆえに娼婦をやっていましたが、あんなに素直に健気に爛漫に演じられると幸せそうに見えてしまう。犬飼に関しても、八重の握り飯を見つめる表情には力があったけど、自分は一時的な空腹と思っていました。戦後を知らない人間にとって、飢餓的状況とは想像の範囲外で、映像の行間を読めませんでした。 また、八重の殺害シーンだけど、あんなふうにむしゃぶりつかれては、犬飼じゃなくても怖くなります。犬飼に殺す動機があったのは確かだけど、あのシーンは犬飼に同情します。 その犬飼も極悪人という類いの犯罪者ではないので、犯人として追い込まれて行く過程にカタルシスを覚えなかった。 海峡を渡ることは犬飼にとって、飢餓の彼岸へ渡ることと同義だったのだろう。その行程で犯した殺人が、どれほど犬飼を苛んで来たかは想像するしかないが、証拠能力の無い灰に観念するほどとは思わなかった。弓坂も、犬飼の自責の念に期待して灰を見せたのだと思うが、ちょっと出来すぎの感がありました。 現代のサスペンスを見慣れた目で見ているせいなのか、メインの3名の行動に微妙な違和感を感じてならない作品でした。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-30 01:28:18) |
30.《ネタバレ》 巨匠内田叶夢による邦画史上屈指の「大作」である。この映画を観て私が感じるのは芥川「蜘蛛の糸」。犬飼多吉にとって津軽海峡の暗い波頭はまさに地獄の血の池であったのだろう。そして娼婦八重はまさにそんな糸を紡ぎ出す蜘蛛であったろうし、八重にとっても犬飼は一時でも娼館を抜け出せるきっかけを作ってくれた、まさに「同じ地獄の境遇」から生還できた同士であったに違いない。だが時が経ち篤志家となった彼にとって彼女の存在は過去の罪を思い起こさせてくれるだけの邪魔者=地獄からの使者に感じられた、という悲しさ。ラスト犬飼が飛び込んだ海。それは「地獄へ墜ちていく」事の意思表示であり愛を捧げてくれた薄幸な娼婦への贖罪であったに違いない。役者は皆好演だがやはりこの映画は人間の持つ清濁性を存分に発揮した役者三国の代表作として挙げておきたい。といって私アジャパーだけではない役者伴淳三郎も、左幸子も凄いと思うんですよね。左演じる八重の犬飼への感情のほとばしり(切った爪を抱きしめ悶えるあのシーン!)、または皆様仰る犬飼との再開(「いぬが~いざ~ん!」)。刑事弓坂が犬飼に指し示す「砂」のシーン。まさに名演のオンパレード。点数は前半の凄まじい展開から後半に進むにつれ観賞疲れを感じてしまう処を考慮して。ここでは健さん、たんなるおまけだな。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-30 14:08:38) |
29.《ネタバレ》 骨太な作品でした。犬飼の流転の人生、八重の一途な人生、どちらもしっかり描けていて見応えありました。汽車での田舎臭い八重が、東京でしっかり垢抜けていました。(後半は少し病的な方向に行ってしまいましたが。)印象的だったのは東京に出て来て客引き中の八重が、取り締まりから逃げて店に入るまでの長いワンカット、狭い路地を上から見下ろすアングルで行き交う人々、戦後の混沌とした町並みが見事に描かれていました。長尺モノクロにも関わらず飽きさせない映画でした。 【ポテサラ頂戴】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-10-27 15:08:55) |
28.それぞれの人物像がよく描けていて、説得力がある映画でした。構図も見ごたえがありました。ただ、貧困にリアリティのない世代には、なかなか分かりにくいんだろうと思います。 【みんな嫌い】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-08-31 14:50:44) |
27.長かったが、印象的なシーンが多かった。それなりに楽しめた 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-03-11 18:48:49) |
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26.樽見を追い詰める所から、ちょっと長かったですね。それまでの展開が面白かっただけに、残念でなりません。 【Yoshi】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-03-07 22:09:53) |
25.出ているメンツからして、公開当時は超大作といった感じだったのではないでしょうか。でもどなたかも書いていらっしゃいましたが、よくあるパターンという印象なんですよね。個人的には砂の器のほうが好きですね。それにしても、三国連太郎さんは全然変わらないですね。 【マー君】さん [DVD(邦画)] 6点(2008-03-01 15:16:37) |
24.《ネタバレ》 犯罪者が何年後かして名士となって地位を築いていた。「砂の器」や「人間の証明」などよくあるテーマで新鮮味を感じなかった。左さんの演技はすごかった。 【がみがみ】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-12-11 23:43:23) |
23.僕は初めて日本映画に恋した。左幸子にも恋した。 【トマシーノ】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-11-13 00:43:35) |
22.《ネタバレ》 序盤からカメラアングルに唸らされる。煙の上がる家から男達が歩いてくる描写、SLの車輪から後方を捉えるアングルなど妙な迫力がある。東北の暗い雰囲気をモノクロで拍車をかけ、サム・ライミが撮っているかのようなホラー的なカメラワークも緊張感を醸し出す。別に何か出てくる訳でもないのだが、パンをして戻ってくるとそこには・・という動きが多い。その度に条件反射して小心者の僕はドキドキしたりする。実際には東北の底なしの暗さに象徴される降霊したイタコや恐山の地獄のような風景描写がホラーよりも精神的にこたえる。また犬養と八重のおにぎりが結んだ運命的な出会いと犬養の良心の呵責か恐山の怒りか得体の知れないものの繋がりをネガ調のフィルムで演出するあたりも寒気がするほど怖い。これで三味線でも弾かれたら僕はTKOです。まったくもってこの辺りまでは満点つけようかと思うほど大満足だったのですが、これからウソのように長い時間が延々と続くとは思いもよらなかったのです。もちろん、その後の話の展開は悪くはないし違和感もないのだが八重の10年や警察連中の捜査が長すぎる。核心に迫っているのに高倉健が函館と舞鶴を行ったり来たりするだけで一向に前へ進まない。ここを半分、いや三分の一にまとめれば評価はグンっと高まったに違いないのに・・。中盤までは楽しめたが全体的にはとても惜しい作品となりました。残念。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-11-09 21:58:15) |
21.あのおにぎりのシーンがいいねえ。あのおにぎりは、お金には変えられないありがたみがあるね。樽見は地獄の底の底まで落ちてしまうだろうね。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-10-08 18:59:41) |
20.傑作と誉れ高い本作、いざ鑑賞してみると…う~ん。鑑賞のポイント(僕はサスペンスとして観ていた)がずれているのかもしれませんが、思っていたほど面白いとは思わなかった。前半の弓坂刑事と後半の味村刑事の捜査がうまくつながらないうえ、終盤などわずかな状況証拠をもとにただ自白を強要してるように思えてならない。当時はそれで良かったのかもしれないが、今の視点から見ると違和感を感じてしまいます。樽見の存在もどこか中途半端に思えるし、八重も純粋と言うよりはちょっと迷惑な自己チューに見える。ただラストの唐突な展開は意外だったのでこの点数に。 【とかげ12号】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-02-28 23:11:09) |
19.《ネタバレ》 設定自体はとりわけ複雑ではないが、貧困、不信、疑念、執念、感謝、後悔、と多くのエッセンスが詰まっていて3時間と言う長尺も充分納得できる内容。特筆すべきは、保身への葛藤から八重を殺してしまうシーン。巻き込まれたのではなく実際犯してしまった罪への後悔、愛情が画面に溢れている。やたら陽気な八重ちゃんに笑ってしまったり、貧乏な刑事に違和感を覚えたりしてしまったが、この映画が火サス系サスペンスの頂点にあることは自分の中で変わらない。そんなジャンルねぇよ、と怒られたとしても、自分の中で、変わらない。 【stroheim】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2006-04-15 12:51:22) |
18.かつて日本映画界に名匠がいて、名役者がいて、名スタッフがいた時代の秀作。モノクロしかも3時間強という上映時間に怖れをなし、長い間観るのを躊躇してましたがここの評価通りずっしり見ごたえある重厚な作品でした。ただ強烈な存在感を放っていた情深い娼婦、左幸子が画面から姿を消したあたりから(代わって若き日の健さんが登場してくるのだがやはり貫禄負け)凧の糸が切れたみたいで、緊迫感が薄れてくるのが残念。普段フツーに生活してるとなかなか気づかないけど、食欲と性欲と物欲ってやっぱ相関関係あるものなんだよなあ。 |
17.スケールが大きく人間ドラマとしても完成度は高い。 【PAD】さん 9点(2004-10-13 15:11:15) |