3.《ネタバレ》 大いなる陰謀とは、本作をゴールデンウィーク中に「大いなる陰謀」と思わせぶりのタイトルを銘打って拡大公開することではないか。
本作は見るのに適した“対象者”が限られており、一般的な日本人が楽しめる内容の代物ではない。
「アメリカ人が何を考えなくてはいけないか」という問題提起をした作品であり、日本人向けの映画ではない。
92分という短い映画ながら、流れに付いていけない観客が多数発生し、周囲のイライラ感が伝わってきた。
また、セリフによる情報があまりにも多く、字幕を読む作業に終始しなくてはならないのも問題だ。字幕の必要がないアメリカ人ならば付いていけるが、日本人にはこの点でも不利になる。
映画自体はそれほど難解でもなく、単純なプロパガンダ映画というわけでもなかった。
「何かを考えさせられる」面白みを感じられる作品だ。
テーマは「理想と現実」だろうか。
国会議員、ジャーナリスト、大学教授の三者の理想と現実のギャップが見え隠れする。
国会議員は、「アメリカのために団結すべき」と理想を主張し、戦争を正当化しているが、大統領への階段を昇りたいという現実が裏にある。
新たな作戦の失敗も成功したことにせざるを得ない事情があり、まさにプロパガンダが必要なのが政府及び国会だ。
ジャーナリストには、真実を伝えるべきという使命と理想があるが、結局のところは政府の言いなりにならざるを得ないという現実もある。
イラク戦争を国民に支持させたのもマスコミのチカラであり、国民の支持を失ったのもマスコミのチカラによるものだ。
政府の言いなりになるのか、それとも真実を伝えるべきなのかというジャーナリストの本当の姿を問うている。
大学教授にも優れた論文で世界を変えたい、優れた学生を発掘し、優れた国民に教育したいという理想があるが、論文は何も役に立たず、優れた学生も戦場に行ってしまったり、無駄なことと学業そのものから逃げ出してしまうという現実や無力感がある。
学業から逃げ出した学生を現在のアメリカ国民に見立てて、今のアメリカの「表と裏」を見せながら、アメリカが抱える難題を問う姿勢は好感的である。
「答え」は明確には出していはいないが、レッドフォードとしては逃げずに「戦う」ということの重要性を二人の兵士の姿を通して描いた。現実から逃げてばかりの国民(羊)に連れられるアメリカ(ライオン)に対する嘆きは伝わってきた。