44.《ネタバレ》 結局、血筋だったというオチなのかなあと。
カッとすると凶暴になるという遺伝なのではないのか。
そういう意味で「やっぱり親子」だと。
…危険な親子だ。
作品中には描かれていないが、ストーリーが成立するために必須であると私が思うのは、「父親」のことだ。
父親の話は全く出て来ないが、父親はいたはずである。
「妊娠したくて(漢方の)薬を飲んでトジュンがデキた」と母は言っているから、妾とか不倫でなくて普通に結婚していたということでいいだろう。
先に死んだのなら、母親は父親の話をするものだ。
しないということは、妻子を捨てたということなのである。
すると「なぜ捨てたのか」という答えは実は作品中に明らかなので、息子が知恵遅れだということが判明したから出て行ったのである。
すると、母親の心中未遂の理由もおのずからわかるというものだ。
なおかつ、「なぜ〝バカ〟と言われると凶暴になるのか」という謎も、一緒に解ける。
「こいつのバカはお前の遺伝だ。オレには似ていない。」と言って父親が出て行ったあとに、母親に殺されかけたために、そのトラウマから「バカ」と言われると「また何かひどい目に遭うのではないか」という恐怖感から凶暴になってしまうのだ。
トジュンが殺されかけた年齢が、「知恵遅れ」であることがはっきりしてきた年齢なのである。
こういうことは一切説明されていないが、作品を見るとそういうふうな前提になっているので、作り手はそこまでの理解を要求しているのだと私は思う。
そうすると「凶暴」の種は母親が蒔いたものであったのだし、カッとなると凶暴になるという性質も母子で似ているので、父親の「お前に似た」という言葉を母親はさぞ思い出したことであろう…というのがたぶんこの作品のオチ。
鼻血とか鍼のツボとか伏線もちゃんと張ってありましたがまあ…なくてもよかったような気はするが。
…しかし、殺される少女にありがちな「淫売」という設定は、やはり発想が安易かなあ。
ご都合ではないかと思う。
私は「母もの」にはあまりピンと来ないほうなので、やはり「殺人の追憶」に軍配を。