211.《ネタバレ》 かつての大林宣彦版『時をかける少女』が観客に最も印象づけたのは、主人公芳山和子を包み込むラベンダーの匂いであった。ある日突然和子の身に起こる不可思議な出来事を、大林は、思春期における心と体の違和そのものとして描いた。つまりタイムリープは、不安定な思春期の少女に起こる未知なる変調であり、その異変への凶兆として禍々しく立ちのぼるラベンダーは、成熟に伴い生じる少女の不安や畏れの象徴であった。その意味で、抗いようもなくラベンダーに囚われる和子はそうした脆弱な思春期の只中にいたからこそ、絶対的な異変として襲いくる時間の波にもまた為す術なく傷つき翻弄されたのだ。ところが一転、本作細田守版はそのラベンダーをあらかじめ切り棄てる。アニメーションで描かれる美しく晴れ渡った青空同様に、快活で能動的な紺野真琴の思春期には一片の翳りもなく、そんな彼女が和子のように不穏なラベンダーを嗅ぐことはない。成熟や性の匂いから切り離されひたすら無邪気なままの真琴は、それゆえ畏れを知らぬ恋する冒険者としてしゃにむに勇敢に時をかけることができたのだ。大林と細田のこの大いなる違いは、それぞれの思春期の解釈の決定的な違いでもあるのだろう。芳山和子はラベンダーに限らず、尾道のノスタルジックな「風景」に、永遠に反復される窮屈な「時間空間」に、前時代的に儚くか弱い「少女像」に、囚われあるいは奪われ、その痛みに打ち震えるばかりの少女であった。その最たるは、「タイムトラベルする未来人は関わった過去の人間の記憶を消さなくてはならない」というSFジュブナイルの絶対的な掟による、かけがえのないその初恋の喪失だろう。あたかも蝶の翅を捥ぐかのように、大林は、和子の時を記憶をそして初恋を奪い、彼女をそこに閉じ込めることで少女の思春期を表現した。これに対し細田は、大林版とはことごとく真逆のベクトルを用いることで新たな『時をかける少女』を提示する。紺野真琴にとって時をかけることは、奪われることではなく、むしろ翅を与えられ自由に解き放たれることなのだ。記憶の抹消という旧作における痛ましい主題がラベンダー同様意図的に省かれるのは、おそらくそのためだ。彼女の初恋が和子のように残酷に失われることはない。細田はそうして少女の思春期を、胸を掻き毟るかなしみや痛みではなく、輝かしく軽やかな羽ばたきとして、ここで新たに表現したのだ。 【BOWWOW】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-07-30 15:54:21) (良:1票) |
210.《ネタバレ》 ある程度の年齢に達してしまうと、青春ドラマというのは、こっぱずかしくて敬遠しがちになります。けどこの作品みたいにとことん描いてくれると熱中するし、応援してしまいます。主人公が超アクティブ(どれだけ走ったんだ?)ですがすがしい。ストーリー的にも、「お前、タイムリープしてね?」から雰囲気がガラリと変わって、ドキドキしながら見られました。ラストでは涙も。爽やかだ~! 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 10点(2010-07-24 04:19:14) (良:1票) |
209.《ネタバレ》 何より細田守監督の演出力に恐れ入りました。画面中を動き回るキャラクター(てんぷらを揚げるだけで魅力的)と線路前でのストップモーションの対比はアニメの快感に溢れています。ジブリ映画の様な大きな口を開けガハガハと笑う真琴は見ていてとても楽しい。動画としてのレベルが兎に角高いと感じました。しかし中盤までが単なる日常系の学園ドラマになっているのは個人的に辛かった。この日常の部分が、終盤で千昭が真琴の前から姿を消してしまう時への布石になっている事は十分理解出来るのですが、やはり単なる日常では少し詰まらない。何かしら中盤まで興味を引っ張る様な展開が欲しかった。ともあれ多少の不満はありましたが、昨今の邦画の青春映画の中では群を抜いた出来だと思います。 【民朗】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-07-13 23:48:18) (良:1票) |
208.《ネタバレ》 【タイムリープ(TL)】設定は女子高生が後ろ向きに倒れて過去に戻る映画「タイムリープ」に酷似。胡桃でチャージ、腕に度数表示、記憶は保持。他人がTLした場合、度数はそれに応じて戻り、記憶は失う。真琴が事故で偶然にTLしたのが最初。跳躍で実行。どの過去に戻るかは跳躍距離による。胡桃は未来から千昭が持ってきた。千昭は度数ゼロでも時を止める能力も持つ。未来へも行ける。TLすると「自分の得」が「他人の損」となり反映。真琴の事故が、功介と後輩の事故へ転換するなど。【千昭】この時代でしか存在しない絵を見るためにきた。「川が地面に流れているのを初めて見た」「こんなに人が沢山いる所を初めて見た」「この時代好きだよ、野球もあるし」荒廃した未来を暗示。過去の住人にTLの存在を知らせた罪で姿を消す。【おば】TLを容認。経験あるという。絵を修復。彼女の写真の隣にラベンダー。原作の主人公芳山和子であることを暗示。【恋愛】千昭が真琴に告白。真琴は戸惑ってTL。千昭を避けるが、千昭が友梨と付き合うと、千昭のことを好きだったことを知る。最後のTL後、再告白を期待するが期待外れ。未来での再会を約束。【感想】先ず背景画が美しいのに感心。二度と戻ることの出来ない青春の一頁。過去に戻る力を手に入れても、結局過去は取り戻せない。恋愛に無垢な女子高生真琴のオバカぶりはとても面白い。走りっぷり、泣きっぷりが弾けていた。人の心を踏みにじることはもうしないと決意するも「お前TLしてるだろ」と言われ思わずTL、結果度数ゼロ。プラスされたTLを千昭のために使ったのは偉い。絵は何百年も昔の大戦争と飢饉の時代、世界が終ろうとしていた時代の菩薩像。絵を見るためだけに危険を冒してやってきたロマンティストとガラの悪い茶髪少年の間にギャップがある。彼が去ると、級友からぼろくそに噂されていた。千昭は未来に戻れなくなる犠牲を払って功介達の命を救ったが、代わりに誰かが事故に遭う筈。千昭は「未来で待ってる」というが、違う時代の人とは会えない。真琴は「やりたいことが見つかった、それは秘密」と話すが、何か?再会を早めることだとして、何をする?それとも絵を未来に伝えるとか、荒廃しない未来を作ることか。尚遮断機に自転車が突っ込んでもスルーして飛びません。ブレークが効かないのだから。いじめられっ子の最終形を見たかった。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-06-21 15:42:40) (良:1票)(笑:1票) |
207.《ネタバレ》 男子高出身でさっぱり同年代の女性と縁がなかったし(号泣)、そもそも高校を卒業してから幾年月なんで残念ながら真琴の心情を本当には理解できませんでした。 ただ、放課後の学校の雰囲気はなかなか上手に描写できていてノスタルジーは感じました。(「土曜日の放課後」でないのが残念ですけど、塚、今土曜日学校休みですもんねw) あと、実は前作に比べてこちらの方が、過去を改変することによって思わぬ変化がおとずれるという「バタフライエフェクト」を描いている分真っ当で正統的だとも感じました。 また、叔母の写真の横にそっとラベンダーが生けられてるとか前作に対するさりげない リズペクトも感じられたのでその分も好印象でした。 ただ、残念なのは作画がね。全体的に綺麗な感じなんですけれど、時々「何、これ?」って思わせるような、雑で見苦しいカットがあったように感じたのは残念です。 【rhforever】さん [DVD(邦画)] 7点(2010-06-14 14:00:28) |
【michell】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-05-06 22:56:59) |
205.《ネタバレ》 面白かった。 設定や登場人物の芯の部分はすでにある「時をかける少女」から持ってきたことで、旧作をあまり面白いと思わなかった私には単純なリメイクをしてももの凄くつまらないアニメになると思っていたが、そうではなくかなり楽しむことができた。 設定や人物の基本的なところが共通だが、本作オリジナルのキャラクタや舞台設定や世界の広さが旧作よりも遙かに上手に作られている。旧作と違いマーケティングと印象操作で一人歩きした評価ではなく、どこの国の人が見てもおそらく面白いであろう映画にきちんとまとめ上げられている。 この作品の最大の魅力は、原作の持っていたジュブナイル小説的なキュンとくる味わいをさらにキュンと昇華させてキュンキュンくるお話にある。主人公とその友人の3人の関係のゆっくりと静かに回る時間が、何とも懐かしく切ない感じを思い出させる。本当の高校生活であればあんなに放課後がノンビリしている訳はないのだが、そういう部分も意識させない世界観作りが巧妙だった。 願望と記憶と現実を上手に割り切ってみせるストーリーはアニメ映画ならではの巧さを持っている。萌え要素に頼らない日本のアニメ映画は、何となくレベルが凄く高くなった感がある。特にここ何年かは同年のジブリのアニメよりも面白いんじゃないかと思える作品もある。凄く良いことだと思う。 【黒猫クック】さん [地上波(邦画)] 8点(2010-05-04 21:14:52) |
204.一回は観られます。くだらないことでタイムリープするなら、「サマータイムマシンブルース」ぐらい、徹底的にくだらないことでタイムリープしないと。 【ダルコダヒルコ】さん [DVD(邦画)] 4点(2010-05-03 22:39:02) |
203.《ネタバレ》 行き当たりばったりで簡単に過去に行ったりする時をかける少女、真琴。 そんなまっすぐな少女だから後半の必死さ、全力感が伝わってきました。 時をかける方法はユニークで笑えます。 未来から来た少年も真琴たちの世界の生活に馴染んでおり、ユニークでおどけた性格の彼だからこそ別れのシーンは爽やかながらも切なさも残りました。 あらすじだけ言ってしまえばありそうな作品ですが、綺麗な画を上手い構成で仕上げている良作で、オススメです。 【コショリン】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-04-19 04:29:17) |
202.主人公の真琴ちゃんのキャラは、女子高校生とは思えないだろう・・・(せいぜい小学生か?) タイムパラドックスものは、考えちゃうから見るのも難しい。 ちなみに、原作小説も未読、オリジナル映画も見たことない。 【あきぴー@武蔵国】さん [DVD(邦画)] 5点(2010-04-15 19:26:22) (良:1票) |
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201.最初はタイムリープを私利私欲のために使いすぎてるんで、なんだかな…って思ったけど、最後はほんと良かった。「今」の大切さを教えてくれる素晴らしい映画だと思います。声の演技に関しては主要3人の中では千昭役の人だけは多少気になる部分があった。超絶棒読みの妹などは論外ですが。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-03-26 18:30:38) |
200.これ『時をかける少女』ってのは間違ってないけど、『岸辺のふたり』の日本版とも言えますな。そっちのパートの方が個人的には好きです。 (詳細はブログにて) 【エスねこ】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-03-21 09:09:36) |
199.物凄く甘酸っぱいです。自分も同世代な為か感情移入しまくりで素直に心を揺さぶられました。やはり青春っていいなぁと思える傑作。素晴らしい。 【ピンフ】さん [地上波(邦画)] 10点(2010-03-09 02:59:56) |
198.《ネタバレ》 ヒロインとぼくはたぶん20年以上も世代が違うはずなのに。なんなんだろう、この共感は。この共感こそが、この映画を名作たらしめている最大の要因。(共感をよぶために細田監督は夏の風景やプリンやカラオケなど最大限の努力をしているけれど)胸がしめつけられるような切なさが最初から最後まであふれています。なんというセンチメンタル。すばらしい。 【ケルタ】さん [DVD(邦画)] 10点(2010-03-01 11:50:36) |
197.主人公の圧倒的なキャラクターに惹かれました。絵と声と性格がとても合っていたように思います。魅力的な主人公とあの脚本(絵コンテ?)があれば、鬼に金棒ですね! テンポよく、ボリュームのある90分に、時間を忘れて観入ってしまいました。 【ようすけ】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-02-02 00:58:26) |
196.《ネタバレ》 なかなか面白かった。途中までは青春映画ぽくて入り込みづらかったけど,中盤からはSFミステリー。 おまえタイムリープしてる?の台詞のところはゾクっとした。 主人公に感情移入できたらもっとよかったのに。 【Yu】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-12-22 08:49:46) (良:1票) |
195.清々しく苦々しい青春時代を思い出させてくれる良い作品でした。 やりすぎると逆に嫌みになるSFファンタジー要素も、ほどよく物語にとけ込んでいて、演出陣の力量の高さを感じました。 作画も丁寧で、映像を見ているだけでも心地よかったです。 タイムリーな時期に見ていたら、評価はもっと高くなっていたかもしれません。 【sirou92】さん [地上波(邦画)] 8点(2009-12-06 02:25:14) |
194.《ネタバレ》 “時をかける少女をアレンジするとこんな感じになるんだ~”見たいな感じ。 千昭の未来から来た理由があまり好きじゃないな~ 【アスモデウス】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-12-06 01:15:02) |
193.ひょんなことからタイムリープ(過去に戻れる)ができるようになったマコト♀高校二年。元気いっぱいのマコトが経験するひと夏の冒険と淡い恋心。深く考えるとよくわからんくなるけど、まぁ、笑えるところあったから面白かったかなーて感じ。しょせんアニメですから。 【kaneko】さん [DVD(邦画)] 5点(2009-11-18 21:15:43) |
192. 大林監督のバージョンは観たことないのですが、観賞前から偏見が入り、きっとロリコン映画に違いないと思って観たら、それを見事に裏切ってくれました。 少女の人物設定に力を入れたようで、ホントの現代風で親近感が湧きます。 逆に男友達二人は古臭く見えました。なんか「ビーバップ」を感じます。 タイムトラベル映画は何をやっても面白いです。似たような映画で「サマータイムマシンブルース」なんてのもありました。 因みに、シナリオコンクールの応募作品は圧倒的にタイムトラベルものが多いとの事です。 全ての登場人物が主人公のためだけに生きているみたいで納得いかないところもありましたが、不明瞭な点は、きっと「観客の想像におまかせ」ということでしょう。 90分で終わるので楽しく観賞できました。 【クロエ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-11-02 02:42:40) |