125.グレースは何者なのだろうという興味と、警察がポスターをもってくるたびにグレースを取り巻く状況が変わってゆく演出に、3時間という長さも感じずひきこまれました。独特のセットも舞台だと思えばほとんど違和感がない。そういう風にうまく作品を仕上げているとおもいます。写実的な描写無しに、かなり残虐なシーンを描いているのも舞台的で評価に値します。そして舞台では出せない視点の移動や表情中心の演技で、映画で表現する意味も持たせています。ニコール・キッドマンは、しかめっ面が普通の顔の女優さんで、強い女しか演じれないと思っていたけれど、前半は自信なさげなおどおどした演技や表情でちょっと評価が上がりました(私の中では)。そして最後は、キッドマンならではの冷酷さが戻ってきます。集団社会における人間の行動パターンをうまく描いた作品だと思います。 【ひよりん】さん [DVD(吹替)] 7点(2007-02-24 21:20:16) |
124.一瞬、某派遣会社のことかと勘違いしてしまうタイトル。これは映画ではないよね。これを劇場で3時間もかけて観せられる方の立場も考えて欲しい。ストーリーは悪くは無いので、そこは評価しておきます。 【憲玉】さん [DVD(吹替)] 2点(2007-02-11 00:45:52) |
123. 奇をてらったように感じるスタジオセットでの撮影ながらも、3時間もの長尺を、飽きさせることなく見せる演出力は、この監督の認めるべき才能だと思います。多くの方が指摘されているように、演劇・小説・映画を融合させた実験は、成功したと言ってもいいのではないでしょうか。また、グロテスクな描写を排したり、ニコール・キッドマンを主役にキャスティングすることなどで、メジャーな商業映画の枠内に滑り込ませるという、バランスの取り方も巧妙だと思いました。実際、120を越えるレビュー数は、決して少なくない人たちが観賞した証だと思います。 しかし、残念ながらこの映画を見た後で、心に感じたこと、残るものはほとんど無いという印象を持ちました。3時間ものボリュームに加え、人間の暗部を描くという重苦しいテーマにも関わらず、見終わった後に観客に対して、考えさせるものがほとんど無いという、肩透かし感を強く覚えました。 その原因は、作家=監督の意見・考えが見えてこないからです。人間の醜さや、心の闇の部分、自己中心的なふるまいなどが次々と映画の中で描かれていきます。しかし、それに対しての監督の見方は決して描かれません。「人間の暗部をえぐる」といった言い回しが使われますが、えぐりとったものを監督がどう料理するのかが、本当のドラマの部分なのではないでしょうか。言い方を変えれば、人間の暗部を提示するだけなら、誰にでもできるはずです。 「どうです、人間って醜いでしょう」と提示したテーマに対して、例えば「でも、人間にはいい所もあるから好きだ」とか「だから、醜くならないように、努力して生きよう」などの監督なりの考え方の提示が必要だと思います。観客は、そこに共感や違った意見などを感じるのであり、それこそが映画における「対話」なのではないでしょうか。 才能はあるが、対話はない。映画としては、物足りない出来であったと思います。 【塚原新】さん [DVD(字幕)] 2点(2007-02-09 18:55:42) (良:1票) |
122.《ネタバレ》 まるで寓話小説でも読んでいるような気分になる本作は観賞後、ナーバスになり胸にもやもやが残る。それというのも抉り出された人間の醜悪さを自分自身の中で照らし合わせているからだ。私も村人のように確立されたコミュニティに得体の知れぬ部外者が侵入したら恐れとは言わないまでも警戒心を抱くと思う。またトムのように良識派の顔をしているが、良心とは別に物事を万事円滑に運びたいという自分本意な願望もその裏側には隠れている。さらにグレースの立場となれば一連の仕打ちに対する怒りで村を消し去りたいという衝動に駆られ、実行された時には安堵感や爽快感を覚えてしまう。だが、冷静になって考えてみるとレイプした者たち以外の人々は罪を犯しているのか疑問が湧き、さらには仮に罪であったとしても死をもって償うほどの重罪であったのか苦慮する。そのうえ人を人が裁くという行為自体にも違和感を抱く。そして様々頭脳で判断するのとは別に感情的な部分で胸騒ぎが始まり心に不快さや嫌悪感が充満する。それは己の偽善や傲慢さが暴かれそうなので湧き上がる感情かもしれない。舞台装置のような斬新なスタイルが、あたかも実験用マウスになったかのような心持ちにさせ一層不安にさせる。…このように思った時点でこの映画の狙い通りなのかもしれないと考えると恐ろしく巧妙な出来映えだと思う。・・・しかし、しかしだ。こんなことで呼び起こされなくとも自分の心に潜む邪悪な部分には十分に気付いているわけで、臭いものには蓋をし続け(この言い回しは語弊があるかもしれないが)、息苦しくならないように、正常さを保てるように暮らしている。それをわざわざ蓋を開け顔を突っ込まされるのは趣味が良いとは思えないのだ。もちろん個人的な好みによるものと思うが、点数は2点ばかり引かせてもらう。・・・って、この行為も偽善かもね。もう分ら~ん! 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 7点(2007-02-02 23:08:17) |
121.DVDを観始めて、あれ特典映像にしちゃったか?と最初思いました。うーん、どうしてあんな演劇セットにするんだろう?普通のセットで撮ってればどうだったのかな?エンディングはあれでいいのかな?などなど、よかったーと思える映画では全然なかったけれど、映画の制作的なことであれこれ考えさせられたってのはどう評価すればいいんだろう?(?ばかり) 【ROONEY】さん [DVD(吹替)] 6点(2007-01-21 01:34:11) |
120.《ネタバレ》 たしかに下手な偽善よりは露悪の方が良い。この映画における様々な露悪は一つ一つでは理解できるし、ラストは積み上げた露悪を焼き尽くすあの壮絶なカタルシス以外ありえなかった。だけれど納得できない。なぜかと考えるに、そもそもこの監督自体が好きではないのだと気づいた。こういう考え方をして、それを映画に撮り、他人に披露する、そういう人間が僕は嫌いだ。と、これでは映画のレビューになっていないけれど、映画を撮るのが人間である以上、それはしょうがないじゃないか。 【小塚】さん [DVD(字幕)] 0点(2006-12-27 18:03:39) (良:1票) |
119.ただ白線を引いただけのセット。あたかもそこに家があるかのように、壁があるかのように、ドアがあるかのように役者が演じる。その不自然な様を我々は知らぬ間に受け入れる。家を想像し、壁を想像し、ドアを想像し、無いはずの背景が我々の頭の中で作られる。観客は映画を自分流に解釈する。それを逆手に取った手法といえる。そして観客はすべてを見ることが出来る唯一の存在としてトリアーの投げかける「人の行い」を直視する。目の当たりにするのは資本主義のいびつな形。何かを与え何かを得る、のではなく、何かを得るために何かを与える。見返りというものを常に念頭に置いた行いが露呈される。この異様なセットのように自分本位な醜態がさらけ出される。主人公の善意はこの自分本位の資本主義の世界に翻弄される。しかし主人公の善意もまた見返りが前提としてある。その見返りが無かったとき巨大な力が発揮され解決という名の終焉がもたらされる。アメリカ三部作の1本目は強大な力を持つアメリカ、自由の国アメリカが、出来得る限りの皮肉を込めて描かれる。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-12-18 14:33:03) (良:1票) |
118.この暗さと重々しさと奇妙なBGMの組み合わせが恐ろしく良かった。反面その閉鎖感にかなりストレスを感じたけど、それがまた良いというような。 【亜空間】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-12-16 23:35:30) |
117.楽しい映画とは云えないが、斬新な脚本、演出とその表現には感心する。プラス1点。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-11-08 22:26:06) |
116.《ネタバレ》 いやー点数つけるのが難しいですねえ。3時間と長いはずですけど、意外と退屈にもならずに最後まで見れました。僕は「男って結局キンタマで動いてんのかい」ってのがウケましたね。男の登場人物殆どがタダのキンタマだったからなあ。味方だと思ってたトムもゴタク並べてるだけで、結局はヤリたかっただけですからね。多分自分だけヤれなくて腹立ってたんでしょう(笑)それでいて、グレースに心を見透かされた途端に彼女に対して怒りの感情を抱く。こいつは最低だと思いながらも、ちょっとはその気持ち分かる…。最後の「答えを求めても仕方がない、だからここに答えはないのだ。」ってのは3時間も見せられてそれで終わらすのか!とムカつきましたが、何かそれでいい気がしますねえ。人間みんな欲望のままに生きてる。自分に都合の悪いものは自分の前から排除したい。このような倫理的な善悪に答えがすでにあったら、哲学って学問はもうないはずですからね。あと言いたいのは、最後の陽気な音楽と写真が何を意味してるのかよく分からなかったです。 |
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115.《ネタバレ》 前半は壁のない舞台劇の世界になじめずダレ気味でしたが、後半の展開とラストの結末には引き込まれていました。ストーリー的には良かったので舞台劇じゃないほうがもっと感情移入できたのではないかと思う。しかし、ニコールの美しさは反則です。+1点 【nishiken】さん [インターネット(字幕)] 7点(2006-09-28 05:08:42) |
114.《ネタバレ》 トリアー作品は人間の嫌な部分をこれでもかというくらい描くので好き嫌いが分かれそうですが、個人的にはラストの爽快感(?)とこの作品に出演したニコールキッドマンの役者魂に10点。 【MEL】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-09-09 06:06:50) |
113.《ネタバレ》 人間の群衆心理や本能、外界の人間を排除したがる部分丸出しの、まさに犬の村壊滅までの一部始終でしたね。まぁダラダラダラダラ人間ドラマを3時間。しかも倉庫のセットにラインを引いて小道具だけ持ち込んでドアも何も無しのスタジオでずっと変化なし。こんな観客までも試すかのような作りに加え、相変わらずのラース・フォン・トリアーの手ブレ補正機能のついてないグラグラカメラワークは本当に観る人を選びます。物語的には突っ込みどころ満載ながら、村の人間の立場で観ると、最後の最後にそりゃあないぜとも思えるし、反対にグレースの立場で観ると、ラストの大虐殺に正当性を感じてしまうから不思議な作品です。偉大なるオトリ捜査かつ人間の心理を突いた大実験。この村人達に対して死をもって制裁を加える事に必ずしも賛成ではないのですが、法云々を盾にして大虐殺を起こしかねないのもまた人間だと思うし、嫌悪感たっぷりの展開の中に少なからずあの終わり方に救いを見出せた自分もいたので複雑でした。「カンヌ映画祭、無冠にして最大の問題作」の触れ込みはダテじゃありません。でもニコールが主演だったからこそ活きた作品。 |
112.《ネタバレ》 実は3回目のトライで最後まで観れました。疲れてるときに観た所為もあれど、1回目は5分後に眠りに陥り、2回目は30分後に寝てました。そして3回目。なんとなく結末だけ楽しみに淡々と観てましたが、結末で吹き出したのでまあまあ楽しめたって所ですね。どこで吹き出したかって?グレースの最後の殺しの指示。父ちゃんも立場を失う、マフィア顔負けの指示に笑い。こんな感想しか持たない僕にマトモな倫理観など期待しても無駄だろう。だからといって自分を疑ってもいない。これってこの映画的にどうなの? 【おぎ】さん [DVD(字幕)] 5点(2006-04-29 18:00:30) |
111.まっすぐ素直な目線で鑑賞すると、観た後どーーーんと落ち込む映画。もう観たくない。 【ふぉんだ】さん [DVD(吹替)] 5点(2006-04-15 15:48:26) |
110.これを見た今現在、ちょうどこの映画の中で扱われているもの(他人への好意、嫉妬、性欲、傲慢などなど・・・)について悩んでいる青春真っ只中なので、「監督!オレにどうしろっちゅうねん!」と思った。いやー、キッツイ映画やわぁー。 【ゆうろう】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-04-03 19:20:49) |
109.最初なチョークで書かれた街並みにかなりの違和感がありましたが、だんだんとその光景が普通に慣れてきて映画の中に吸い込まれていくようでした。人間の嫌な感情があからさまに描かれすぎてて辛くなる所もありましたが、最終的にはスッキリした気分になれた私って・・・。(笑)舞台のリハーサル中のようなセットの中で映画が作れたのはビックリです!! 【愛しのエリザ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2006-01-28 14:39:47) |
108.う~ん正直、一見の価値はあるけどもう一回観る必要は感じないだろうな~。この映画のテーマはそれほど新奇なものでは無いし、表現方法も特段独創的では無い気がする。“ドッグヴィル”は人間世界を象徴的にミニチュアライズしたもので、そこを外界から訪れるグレースとギャングのパパは超然とした存在のメタファーだと思う。グレースを“天使(善)”と言ってもいいし、パパを“サタン(悪)”と言ってもいいが、映画の中で親子として描かれるようにそれは表裏一体なのだ。そして村の中で唯一、神(あるいは悪魔)と村人(人間)の間を取り持とうと画策するトムは、人間でありながら自分は人間を超越していると考え、人々をコントロールしたがるタイプの人間(権力者、 聖職者、学者、映画監督 etc.)のメタファーの様に見える。これは寓話としては使い古されたネタだ。これを今やるなら、もっと現代的な舞台(例えば映画撮影現場やNGOとか)でやったほうが芸術としての意味もあると思うのだけど。 【トマシーノ】さん [地上波(字幕)] 5点(2006-01-25 00:22:46) |
107.一連の悲劇は何が原因で起こったのか。誰が悪くて、何が正義なのか。終わったあとそんなことが頭にぐるぐる回りました。考えるけど決して答えは出ませんでした。もう一度みて考え直したいところですが、重すぎて、心に体力が相当あるときじゃないとできないですね。セットは奇抜ですがシンプルでよかったです。 【サイレン】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-01-14 20:23:43) |
106.《ネタバレ》 「アルジャーノンに花束を」を思い出した。普段の素行が大事ってことですね。「アル~」では主人公が他人の弱みを見つけ、しかし誠実に対応します。そして、最後主人公の立場が弱くなったときに助けられるのです。「ドッグヴィル」では同じテーマを逆の手法で描いています。最後はすっきりしました。●後味が悪くならなかったのは「同じ状況でも、あのような行動は人間はとらない」と確信できるからです。あんなことをした人間が許されたらそれこそ納得がいかない。●壁のないセットが平穏な日常の すぐそばにある人間の醜さを効果的に表現していたと思います。●女性は見ておいて損はないかと思います。レイプの8割は顔見知りによって行われるとのことです。 【承太郎】さん [インターネット(字幕)] 8点(2006-01-11 00:59:33) |