104.《ネタバレ》 サスペンス映画には必ず「犯人」が要る。フィクションとしての犯罪は勿論のこと、現実の未解決事件を題材とする場合も同様に、映画はまずもっともらしい有力な仮説を打ち立て、それに基づいた犯人像を描く必要がある。なぜなら描かれる事件の真相や核心に触れないサスペンスなど、サスペンス映画として成立しないからだ。だがそんな定石を、ポン・ジュノは軽々と凌駕する。一般のサスペンス映画において用意される「描かれる犯人」たち。彼らがどれほどにおぞましい醜悪な姿であっても、実は我々にとってそれはたいした恐怖ではない。たとえば『羊たちの沈黙』の人肉ドレスを縫う殺人鬼も『セブン』のジョン・ドゥーも、観る者を真に恐怖させることはない。その正体とカラクリを知り、悪魔の形をはっきりと認識できることに、我々は心のどこかで納得し安堵するからだ。しかしポン・ジュノは安全なその装置を、嘲笑うかのように破壊する。悪魔的な事件だけが白日の下に曝され、肝心の悪魔の姿は最後の最後まで藪の奥底に潜んだままという、得体のしれぬその恐ろしさ。それはまさに現実世界で日々我々が直面する恐怖と同種のものだ。納得も安堵も決してもたらされることのないその恐怖にこそ、我々は戦慄する。画面には不安に裏打ちされたそんな真の恐怖が隈無く充満し、むせ返るほどだ。ソン・ガンホ演じる脂ぎった刑事の無能さや滑稽さ、彼の見せるそうした生々しい人間の営みが、迫るような臨場感をもって我々の耐え難い不安にさらなる拍車をかける。雨のシーンが秀逸だ。繰り返される雨は、闇にも似た不透明さで世界を覆う。それは人間の抗えぬ不安の象徴でもある。決して止められぬ事件。なすすべなく土砂降りに打たれ、びしょ濡れで立ち尽くすばかりの刑事たち。最後まで姿を見せぬ悪魔。トンネルの壁に撥ね返る銃弾。そして世界を覆い尽くす雨と絶望。ハンマーで殴りかかってくるようなこの気迫はなんだろう。渦巻くばかりの映画的興奮が全編に渡り漲っている。いつしか私も刑事の一人となりそこに立ち、土砂降りの雨の中、ただただ自らの無力に打ちひしがれる。スクリーンで観なかったことをこれほどに後悔させる映画は他にない。傑作だ。ポン・ジュノは事件の核心にも真相にも触れぬ掟破りのこの映画を、けれどそうすることで、超一級の恐るべきサスペンス映画に仕立てあげたのだ。 【BOWWOW】さん [DVD(字幕)] 10点(2009-12-01 00:59:06) (良:2票) |
103.評価が高いだけあって期待して鑑賞した作品。時代に翻弄される人々の描写がよく伝わってきて、この事件が未だに解決していない気持ち悪さを充分汲み取る事ができた。ソンガンホの映画を初めて見たけど味のある俳優だと思った。 【おっちょ】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-11-08 13:42:33) |
102.当時の警察のいい加減さを容赦なく描いていていいですね。同じアジアの国だけど日本と韓国は似ているようでぜんぜん似ていない。文化の違いを感じられるのも面白いです。未解決事件ということで後味は悪いですが、映像の迫力が凄くていろいろな場面が強烈に頭に残りました。 |
101.未解決の連続暴行殺人事件がことごとく韓国の歴史の闇とリンクする。ことごとくである。そして物語構成に一切の無駄が無く全てが全てにからんでゆく。北朝鮮の侵攻に対する灯火規制と共に起こる事件。当たり前のように行われる警察の拷問と軍事政権下の国家権力に対する国民の怒り。怒りは容疑者から証人へと変わった男を警察から遠ざけ、またある時はデモ行進によって機動隊の出動を邪魔する。どちらが犯人か判別できないある事件の容疑者と被害者の兄の写真。あるいは都会刑事を犯人と間違うエピソード。刑事の自信と確信をことごとく失墜させてゆく展開はまさに何を信用すればいいのかわからない時代を写し取っている。強引なやり口を批判する都会刑事もまた闇に翻弄され自らを失ってゆく。そしてトンネルの闇に同化するように消えてゆく容疑者は時代の闇そのものだったのか。排水溝を覗くことの繰り返しは十数年という月日の流れの中で闇の時代が過ぎ去ったことを提示する。このあまりの完璧さに感心しながらも完璧であることに少々の不満も感じる。そしてこの完璧な構成を分りやすくする大袈裟で過剰な語り口がどうも苦手だ。まあでもボン・ジュノは社会派をエンターテインメントに紛れ込ませて見せるのがうまい。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-04-20 17:05:37) (良:1票) |
100.《ネタバレ》 土の臭いが漂ってくるような映画です。庶民的、また田舎風とも言える雰囲気が充満しています。ギャグ的要素が少しあったりするので、肩の力を抜きながら見ることができます。事あるごとに刑事が容疑者にドロップキックをするのがツボでした。逆に連続強姦殺人の犯行が発覚した時は、シリアスです。被害者は女性で性的表現が多いので、女性や子供にはお勧めできない映画です。最後まで犯人が誰だったのかタネ明かしをしません。ラストシーンでパク・トゥマン刑事が「あいつだったのか!?」というような表情をして終わります。ということは犯人は登場人物の中にいたということなんでしょうか・・・。まぁ犯人が誰だったのか謎のままでも、それはそれでこの映画の特徴なのかなって思える映画でした。 【VNTS】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-02-17 23:47:52) |
99.《ネタバレ》 犯人がわからないので見終わった後味は悪いです。スッキリしないのと犯人が今も何食わぬ顔で生きているかと思うと憤りを感じる。それだけ引き込まれた。 【茶畑】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-10-14 20:33:13) (良:1票) |
98.刑事が事件を捜査していくうちにのめり込み過ぎて自滅、あるいは生活が崩壊してしまうというのはサスペンスでは以外と多いパターンですが、この映画では適度な緊張感が最後まで持続され、見ているこちらの集中力も落ちることがない素晴らしい内容でした。ソン・ガンホの演技が圧巻。ラストシーンのあの表情はある意味、グロテスクな殺人シーンより衝撃かも。 【仏向】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-10-09 13:43:10) |
97.《ネタバレ》 韓国映画はあまり観ないので友人に勧められなければ観ることはなかったこの作品、完全に食わず嫌いでした。冒頭で未解決事件と分かってしまい「なんだどうせ犯人捕まらないのか」と思って観ていましたが、重厚なトーンと、リアルな描写、ソン・ガンホの演技力にあっという間に引き込まれ、夢中になっていました。食べる芝居ががうまい役者は大好きで、ソン・ガンホもその一人に加わりました。脚本も絶妙で、シロということでノーマークだったグァンホが実は目撃者だった、というラストへの展開は見事で唸らされました。ラストはものすごく雨をうまく使っていて、雨に滲む血や、列車に裂かれぐちゃぐちゃになる容疑者シロというDNA鑑定書など、やりきれない刑事達の思いを表現していると思う。すべてにおいて表現の巧みな作品。 【ポテサラ頂戴】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-07 12:27:10) |
96.評価高いですね。緊張感を持って展開するストーリーは悪くなかったですが、自分は韓国の田舎の風情や文化の違いを味わっていた感がありました。登場人物はニッポン人と似たような顔をしてますが、やっぱり外国ですね。 【アンドレ・タカシ】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-10-06 01:15:30) |
95.《ネタバレ》 犯人が一向に捕まらない刑事のもどかしさ、人間の心理をうまく描いていたと思います、韓国映画らしいリアルなグロテクスさがある描写もよかった。ラストシーン、昔ここでよくやったという間接的な犯人の言葉。これも実話なのでしょうか?だとしたら寒気しますね。 |
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94.《ネタバレ》 実際に起こった未解決の事件を、映画化した作品。私自身、そのことは観る前から分かっていたので、未解決の事件をいったいどういう風に作品に仕上げるのだろう、と思いながら見ていたのですが、いやはやこれは上手いですね。まず、主演男優のソン・ガンホがいい。いかにも田舎の刑事と言った風貌が、作品全体に漂う泥臭い雰囲気と非常によく合っています。いや、ソン・ガンホがいたからこそ、この雰囲気が出せたのでしょう。本当にいい意味で、スタイリッシュなどという言葉とは縁遠い作品に仕上がっていると思います。物語の展開も非常にテンポよく、"犯人は捕まっていない"という事実が分かっていながらも、「もしかしてこいつが…?」と思わせる演出の仕方も、本当にうまいと思います。ラストのまとめ方もいいですね。あれも実際に即したエピソードなのかどうかは知りませんが、他のサスペンス映画の事件解決シーンと同じくらいのカタルシスを覚えたほどでした。見応え十分、こってり濃厚サスペンスの傑作です。 |
93.《ネタバレ》 いかつい。つくりは重厚、演技は迫真。久しぶりにこんなにいかつい映画を観た。2人の刑事の関係性の変化、事件の展開、どちらも濃厚で見ごたえは十分。筋は忘れたけど、ジャック・ニコルソンの「プレッジ」を思い出した。派手な映画を好きな僕としては、点数を低めに抑えがちなジャンルなんだけど、ここまで骨太な感じで押してこられると、あっさり寄り切られて高評価になっちゃいます。刑事映画が好きなら外せない一作であることは間違いないでしょう。 7点か8点かで迷ったけど、ソン・ガンホのラストにやられたので8点。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-06-21 23:30:15) (良:1票) |
92.韓国発ミステリー映画でまた騙されるのを思いつつ鑑賞いたしましたが、脚本がしっかりしている為、最後のエンドロールまで飽きずに鑑賞できました。特殊効果無しに人間の心理に迫る作品でした。 【SAT】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-06-04 18:32:07) |
91.韓国映画は普段全く観ません。でも「本当に面白いから!!」という友人に勧められて暇つぶしのつもりで鑑賞。・・・納得。本当に面白かった。犯人らしき人物を見つける度に「コイツが犯人に違いない!」と思わせるところにグイグイ引きこまれました。アメリカではDNA鑑定が20年も前からあったんですね、それにも驚きました。 【二矢PUNK】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-05-23 22:39:29) |
90.《ネタバレ》 暗そうな映画と思いきや、コメディっぽさも出しつつ良いテンポで進んでいって飽きる事はありませんし、ひきつけられます。 後半は重厚になっていき、話も加速していくのですが、実在の未解決猟奇事件をテーマにしたと知らずに見たので、オチのなさには不満が残りました。実話らしいから仕方ないのかもしれないけども。飛び蹴りがスゴイです。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-04-18 18:47:02) (良:1票) |
89.《ネタバレ》 極上のサスペンス。でっちあげてでも犯人を挙げようとする田舎刑事がギラギラしていてよい。そして証拠の積み重ねで犯人を捕らえようとする都会の刑事がよい。カメラの視点が実にすばらしく、ときに客観的に、ときに登場人物の感情に沿って映像を見せてくれる。戦慄を覚えながら鑑賞した。 【ジャッカルの目】さん [DVD(吹替)] 8点(2008-04-11 22:21:39) |
88.なかなか。ぐいぐい引き込まれました。映画としても実際問題としても犯人が捕まらないってのは遣る瀬無い。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-03-22 18:29:54) |
【Yoshi】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-03-15 19:30:54) |
86.ありえないほど杜撰な手がかりの与え方、ありえないほどの捜査の手際の悪さが鼻につきますが、「実話を元にしたフィクション」の故なのでしょうかね。 【K】さん [DVD(吹替)] 6点(2007-12-10 22:13:46) |
85.未解決事件を扱うのなら、真っ当な作家はこうするだろうというアプローチ。 ただ、いち刑事が連続殺人という派手な事件だからといって、ラスト付近の描写に至るほど執着していく過程がわからない。 真相に迫っているような内容であれば、固執していく心理も理解できるのだが、どうにも間の抜けた証拠ばかりで、説得力を欠く。 展開自体も間抜けが目立つ。 捏造や半端な確信で尋問している容疑者の扱いは、尋問中に新たな殺人が発生して容疑が晴れる、という展開の方が納得し易いと思うのですが(現実にあった展開に即したのかな)。 【カラバ侯爵】さん [DVD(吹替)] 6点(2007-11-15 19:39:50) |