16.相変わらずフルスロットルで展開するバーホーベン節にニヤリ。本作のミューズであるカリス・ファン・ハウテンの演技も素晴らしく、一気に引き込まれた。「生きる」ことへの執着、逞しさ、奔放さが見事に体現されている。彼女の次作に期待。 【フライボーイ】さん [DVD(吹替)] 8点(2007-08-29 20:03:47) |
15.ヨーロッパ映画の良い雰囲気とハリウッドの娯楽性が見事に溶け合って、本当に面白いです。エリスとムンチェのラブストーリーとしてもステキだと思うし戦争サスペンスとしても超面白いので、男子と女子が観るのには最適ですわ。 【グレース】さん [DVD(吹替)] 9点(2007-08-28 16:06:57) |
《改行表示》14.《ネタバレ》 2006年度ベストだろうと勝手に予測してレンタル開始初日に借りてみてみたが、なるほど面白い。 ■通常の「ナチス=悪」「レジスタンス=正義」の単純な二項対立の構図を壊して、ナチスの側も意外と人間的に描いており、逆にレジスタンス側の分裂やゴタゴタも描いている。特にナチス撤退後の「売国奴探し」における、ナチス以上ともいえる徹底したリンチや吊るし上げは、よく描いたな、と思わせられる。 ■こういう映画を評するときに「ハラハラドキドキ」などとは使いたくない。そうした安っぽい表現で形容したくないような緊迫。適当なアクションやサスペンス映画とは違い、本当に命がけでギリギリの戦いであるから。戦争や時代背景も、そうした緊迫さと、全編通して流れている陰鬱さに拍車をかける。 ■この映画を見て思ったのは、やたらと生理的嫌悪感をもたらすシーンが多いことである。この監督の作品が初めてということもあるのかもしれないが、毛染めや嘔吐のシーン、トイレでの描写、ベッドシーンでもないのにやたらと裸になることの多さ、そして服を脱がせた女を散々殴りつけた挙句、動けないところに糞尿を大量にかけるという鬼畜としか思えない行動。そしてそれらがあまりにも直接的に描かれている。ただこうした描写も、ハリウッドが描いてこなかったものとして、一定の理解はできる。ただ個人的にはやりすぎの感が否めない ■個人的にいちばん引っかかっているのは、功利主義的決断にまつわる問題である。つまり、今相手を殺さないかぎり捕虜は殺されるが、殺したならば報復として大量の市民が殺される。そしてどちらかを選択しなければならない。人数の問題ならば容易に決断できるだろうが、人間はなかなかそうはできない。 そしてこうした問題が実はこの映画でもう1回出てくる。それはナチス撤退後のオランダで、人々が売国奴を見せしめとして動物のごとく扱ったり、あるいは女性を丸坊主にしたり、というところである。こうした行動は確かにひどいものだが、そうした行動を取る事で人々の不満を解消し、全員の殺害を防ぐというメリットはある。つまり、一部を犠牲にすることで全体の犠牲を防ぐということである。このジレンマは容易には解消できない。 【θ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-25 12:56:06) |
13.レジスタンスものは、近年の戦争映画の中では少数派とも言えるが、本作ではむしろ一人のユダヤ人女性の戦争体験による、波乱に満ちた数奇な運命を中心に、戦争というものがいかに残酷で、人間の運命を狂わしていくかを描いたものである。しかも監督がP・ヴァーホーヴェンという事もあり、展開は必ずしもセオリー通りとはならず、かなりアクの強い作品に仕上がっている。ナチスとレジスタンスという明確な対立の構図の中を、女スパイとして綱渡りをするのも、肉親を虐殺された事による私憤の為であり、映画としては常識的に、彼女の復讐劇が描かれていく筈のものが、そうはならないのは、従来から既成概念に捉われず、自由闊達な視点で創作するヴァーホーヴェンの一つの特徴と言えるだろう。そういう意味においては、中盤の見せ場である仲間の救出劇や、ムンツェとのラブ・ロマンスにしても、敗北感や虚無感ばかりが覆い尽くしている。つまりは本当の意味で、溜飲を下げる要素は何一つ無いと言ってもよく、波乱万丈の大娯楽作品としての味わいとは程遠いのである。しかしながら、ただひたすら荒っぽい筋立てで、まったく先の読めないまま、目まぐるしく展開していく事と、彼の作品の特徴でもある、残虐性や露骨さ、或いは猥雑さ(中でも美女を裸にして汚物まみれにするという悪趣味の極み!)等が渾然一体となって、本作を魅力的なものにしている事も事実である。全編、既成の善悪の判断の無意味さと、欲望に駆られた人間の愚かしさが痛烈に炙り出されていくが、やがて平和を迎えた時に、かつて、仇の男と毎夜の如く情痴を繰り返していた、もう一人の女性と再会した事から物語が回想されていくのも、何やら皮肉な運命を感じさせる。女たちの生きる事への貪欲さとしたたかさに、改めて人生を教えられた思いだ。注文を付けるとすれば、何の前触れも無く唐突に出現した感のある、肝心の“ブラックブック”の(まるで葵の印籠のように)有無を言わせぬその信憑性と齎す意味に 、あまり説得力を感じない点だ。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-07-29 15:53:51) (良:1票) |
12.娯楽映画にある軽薄さを隠すことなく、むしろその軽薄さこそが映画に必要なものとでも考えているかのようなヴァーホーヴェンの映画観が吉と出た。隠され装飾され歪められた史実から真実を暴くという大真面目な題材であるにもかかわらず、この手の題材に不可欠だと思っていた「深さ」が無い。隠れ家が爆撃された際の異常な早さの警察および消防車両の到着に代表される物語優先のご都合主義が全編で貫かれる。下手すりゃしらけてしまいかねない。それでもしらけないのはご都合主義の目的がはっきりしているから。重要なのは「戦争」ではなく戦争下で繰り広げられる恋愛サスペンスである。ナチスとレジスタンスの攻防ではなくその攻防に巻き込まれた女の性と情の攻防である。ハリウッド時代とさしてやってることは変わらない。ただ商業至上主義ゆえに見せてきた刺激物に対し、この作品はひたすら物語の面白さを見せようとする。この映画は単純である。6点くらいかなと思いつつ、その単純さの魅力に7点。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2007-07-27 13:46:23) (良:1票) |
11.《ネタバレ》 凄い!久しぶりに物凄い映画を観たような気がする。ナチス=悪、レジスタンス=善という図式を完全にぶち壊すことで物凄く見応えのある作品になっていて驚かされた。ナチスドイツ軍とレジスタンスという双方の人間関係の奥に見える想像を遥かに上回る人間としての哀しさ、刹那さが観ていてずしりと迫る凄い映画です。この映画は誰もが思い浮かぶ構図をひっくり返すことで、人間の持って生まれた宿命、人間の心の中に誰もが抱えている哀しい部分というものを見事に表現している。家族を殺された主人公のラヘル(エリス)が棺桶に入っている家族の写真を見つめている時の姿が何とも哀しくて、切ない上に観ていて何か女性としての愛の深さ、強さというものを感じられずにはいられない。そして、この映画、そういったずしりと心に響く内容でありつつも、サスペンス映画としてもハラハラドキドキ、最後までヒロインの家族を殺したのは誰なのか?まるで先の読めないストーリー展開、見事な脚本にまるでヒッチコックの映画でも観ているような感覚にさせられた。戦争映画としてもサスペンス映画としても間違いなく一流の今年、観た映画の中でも面白さという点ではダントツの作品です。最近、流行のやたらCGばかりにお金をかける見せかけだけの下手なハリウッドの大作を観るぐらいなら私はこの映画を観ることをオススメしたい。 【青観】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-07-12 18:13:18) |
10.《ネタバレ》 「バベル」でも陰部露出だの排泄行為が生々しい形で出てくるのだけど、「ブラックブック」でのそれは、陰毛染め(その後の「しみる~」がヤバい)にせよあの○○ぶっかけにせよことごとくが(本当らしさという部分もあるだろうが)フィクション発動装置であり、また同時に女の一代記として用意された厳粛な儀式と言っていい。カリス・ファン・ハウテンの表情は、最後に1回泣き崩れる以外は殆ど変わらず(彼女を泣き崩させた相手はなんと、スパイとして潜入した先のナチスのお偉いさん)、悲劇が蓄積する度にむしろ官能的な姿を形成していく。歴史に忠実な映画ではなく、映画に忠実な歴史に生きる彼女の受動性(要するにバーホーベンやりたい放題)がこの映画に見事な亀裂を与えていると思う。映画映画の最初とラストでイスラエルが舞台のシーンがあるが、こんな不安定な場所で、当時の苦しい生活を回顧しただけで終わるはずがないと思ったら、やはり鳥肌モノのラストが・・・「悲しみに終わりはないの?」。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-07-10 18:20:44) (良:1票) |
9.《ネタバレ》 スピルバーグにしろ、ポランスキーにしろ、石原慎太郎にしろ、映画製作者が「戦争映画」を作るとき、戦争が持つ残酷さや悲しさを描こうとする作品は数あれど、まさかエンターテインメント―――それも男女の愛と裏切りが渦巻くサスペンス映画に仕上げてしまおうなどと考える奇怪な監督はそういない。その、世の映画監督たちが誰も思いつかなかった(いや、ひょっとしたら、思いついても誰もやろうとしなかったのかもしれない)映画を、ポール・バーホーベンは堂々と完成させてみせた。その心意気と、作品の圧倒的な完成度の高さに対し、最大限の賛辞をここに贈りたい。彼の生い立ちについて少しでもかじっている人なら知っているとは思うが、バーホーベンは戦争中に幼少時代を過ごし、街中で死体の横を歩いたり、兵士に銃を突きつけられ失神したという経験の持ち主であり、そういった経験が『スターシップ・トゥルーパーズ』に反映されているような戦争批判の精神につながっているのだという。しかしこの映画では、戦争の悲しさや残酷さといった、様々な映画監督たちがゴマンと描いてきたものは描かれていない。この映画が描いているのは「人間が持つ愚かさ」であり、戦争はあくまでそれを描き出す為のファクターでしかないのだ。なぜ戦争を体験し、なおかつトラウマを抱えているはずの彼がそんな描き方をしたのか?それはバーホーベン自身が、戦争というものの本質が何であるかを理解しているから。彼は戦争を憎んではいるものの、戦争がなくなるとは思っていない。彼はおそらく、諦めと嘲笑に満ちた目で人々の争いというものを見つめているのだろうと思う。なぜならこの映画でも描かれているように、争いは人間が持つ愚かさから派生するものだから。つまり、愚かな人間は腐っても愚かな人間であるように、戦争はいくら時が経とうとも絶対になくなる事はない、とバーホーベンは言っているのだ(それがラストシーンで描写されている)ハリウッド時代の作品に比べて暴力描写が物足りず、バーホーベンらしさが少し感じられなかったのは正直、否めない。だが、それが何だというのだ?「戦争反対」「いじめや差別はダメ」「話し合いで解決」などと上辺だけで無責任な叫びをあげる糞人間どもにバーホーベンが放った、この渾身のメッセージに圧倒させられずにはいられない。 |
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《改行表示》8.《ネタバレ》 下にも書いている人がいますが、冒頭のシーンで主人公の現在を知っているのに 物語が進んでいくとハラハラ・ドキドキ。 裏切りモノは誰?彼は助かるの?本当のこと言っちゃうの?? もうグイグイ引っ張られました。 主人公は、絶世の美女と言うわけではないけれど、何とも目に力がある女性。 「悲しみに終わりはないの」と絶叫するシーンでは、切なくて・切なくて。 いい映画みたなぁ~と。 沢山公開されていた映画はあれど これを選んだ自分もやるな(ニヤリ)と自画自賛。 【あずき】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-05-24 06:58:12) |
《改行表示》7.《ネタバレ》 大傑作「スターシップトゥルーパーズ」で出会って以来、気になっていたバーホーベン監督。今回は、SF系ではなくて、歴史ドラマだそうで、でもどうせありがちなホロコースト映画にはならないんだろうなと期待して観ました。 結果は、「満足」の一言。SFのぶっ飛んだ感じはないが、映画のつくりとしてかっちり出来上がっていて、なおかつ監督のエログロ的要素も垣間見えるあたりのバランス感は絶妙です。「いい『映画』を観たなあ」と満足感に浸れる点は、作風はぜんぜん違うけれど、イーストウッド監督作品の感想とも共通します。バーホーベン監督の底力が見えた気がします。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-05-06 22:55:25) |
【まぶぜたろう】さん [映画館(字幕)] 10点(2007-05-04 23:36:23) |
5.なんか久々に面白いサスペンス見ちゃったなー。ええ~っ?はぁ?と思ってるうちに終わっちゃったけど。 【mimi】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-04-19 02:25:09) |
4.《ネタバレ》 流石はバーホーベンという出来。ハリウッド捨てて正解でしょう。バホらしいエロスとバイオレンスを盛り込みつつも、重厚なサスペンスドラマとして非常に見応えがあります。主演の女優さんも役者魂が感じられて素晴らしい作品になってました。 |
《改行表示》3.さーて正式レビュー行きまっかー! この映画、ホントに不思議な造りだよねえ。 (冒頭と最後に置かれた戦後シーンを除くと)いきなり途中から始まって、中間をすっとばし、「その後」をカットして進んでいる。主人公が平和に過ごしていた時期は、観客が違和感を持とうがどうだろうが「5ヵ月後」などのテロップひとつでジャンプしやがる。「平和」が全て削除されているじゃんよ(ついでに言えばバーホーベン映画だってのにベッドシーンもない!)。人物・伏線的には緻密な物語構成だけど、この「間隙」は相当クセモノだと思う。 本作はラヘル・シュタインという一人のユダヤ人の回想形式を取る。回想形式なのに「幸せ」がカットされているのはどういう事か。そこで何となく、一人称映画独特の「主観が物語までもねじ曲げる」という大トリックが仕掛けられている…てなコトに気付くのだ。 確かにラヘル・シュタインは、ナチス統治下で地獄のような目に遭った。だが多少とも幸福な時期はあったし、安全な時期もあった。彼女はそれを思い出せないのに相違ない。転じて、それが現代のイスラエルの駆動原理であり、もっと言えば旧約聖書で展開される出エジプト記の原理にもなっている(そこで聖書のエピソードがまた大量の間隙で構成されている事に留意すべきかもな)。 劇場で2回観たんだけど、この、怪しい奴だらけの人情迷路で、端役のクセに超重要である人間が2人ほどいた。全体構成を理解して、各キャラの腹の中を想像しつつ観ないと、その人物は浮かび上がって来ないので、最低2回は観る必要がある(断言)。 その人物たちが本作では端役になっちゃってるのは、主人公の心がそれを認めたくないから、だろう。彼女は戦争の被害者であって、あの戦争で、彼女と同じ虐げられた側にいながら彼女より幸福に生きた奴らがいるなんて、認めたくないわけだ。 物語の始まりが削除されているように、本作では物語の終りも削除されている(処理し残した伏線から考え、オイラはそう見ている)。 この嫌らしいトリックを、バーホーベン監督はわざとやっているはずだ。 なぜなら、現実のイスラエルの物語はまだ終っていないんだから。 【エスねこ】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-04-07 14:04:30) (良:4票) |
2.この監督の一貫して人間のありのままの姿を描こうとしている姿勢が好きだ。ハリウッド時代の作品では、商業的制約の中で監督の暴力と性へのオブセッションばかりが拡大されたきらいもあるので、母国に戻って撮った今作はこの巨匠への正当な評価の端緒になるかもしれない。僕が思うに『ロボコップ』においても『氷の微笑』においても今作においても監督の姿勢は非常に一貫したところがあると思うが、世間一般に理解されないのも仕方ないだろう。あの吐き気を催すような『ロボコップ』の暴力描写から、今作を見終わった後に考えさせられるようなメッセージを汲み取るのは容易ではないだろう。しかし僕はあえて言いたいのだが、今の時代バーホーベン以上に、映画という芸術や、その果たすべき社会的役割、更には娯楽性までを統合して完璧を目指している映画人がいるだろうか? 【トマシーノ】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-04-02 17:08:26) |
1.いやぁ~凄かった。実話を基にしているみたいですが、政治的なことより単純に娯楽として面白かったです。何が凄いって回想シーンから導入していくので主人公の無事が完全に保証されているのにもかかわらず、劇中ハラハラドキドキしっぱなし。ポール・ヴァーホーヴェンが「女王階下の戦士」以来、正統派の映画も撮れるんだという事を見事に証明してくれました。もちろんエロもグロも要所でしっかり見せますが人間模様、殊に女性の描写がやっぱり良いです。内容についてはネタバレしてしまうとつまらないので控えますが、ヴァーホーヴェンの新しきファム・ファタール、カリス・ファン・ハウテンの美しいこと美しいことっ!歌声も素敵なんですが、彼女の素晴らしさはニコール・キッドマンのような気品が良い意味で無いこと。自由奔放と言いますか、あけすけと言いますか早い話がエロいんですねぇ。女性はどう思うか知りませんが男はああいう女性に弱いんですよ。鏡の前で下の毛を染めるシーン、汚れた足を便器の水で洗うシーン、もうやりたい放題で参っちゃいましたよ。それから彼女の友人となるロニーもまた凄いキャラクター。強いと言うか、しぶといと言うか、まぁたくましいんですね。もう生命力が溢れ出ているのです。この魅力的な女性たちと取り巻く多種多様な男たちとの妙、最後まであっという間に時間が過ぎてしまいました。 【ミスター・グレイ】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-03-28 18:47:40) (良:2票) |