6.《ネタバレ》 正直いって、「X-MEN」シリーズはそれほど好きではない。
自分とブライアン・シンガーとの相性の悪さもあるが、純粋に楽しめる作品に仕上がっておらず、アクションエンターテイメント作品としてはどことなくヌルさを感じていたところである。
ただ、監督が代わったこともあってか、「ファイナルディシジョン」からは面白いと評価できるようになった。
このような経緯もあり、それほど期待していなかった本作だったが、何も考えずに楽しめる合格レベルのエンターテイメント作品に仕上がっていると感じられた。
それぞれのミュータント能力を活かしたバトルシーンは上手くかつ熱く描かれており、見せ場がたっぷりだ。
また、意外と丁寧な作品作りがなされていたことも好感がもてる。
戦場でしか生きることができなかった兄と弟の間に、微妙なズレが生じていくことを一連の戦争の歴史の中で描き出している点は上手いの一言。
さらに、兄と弟の関係や姉と妹の関係も描かれているのも面白い。
兄弟でいくらいがみ合っていても仲直りできてしまう点や、妹のために自分の愛さえも犠牲にできてしまう点など、切っても切れない“血”という宿命の面白さも感じられる。
ウルヴァリンと恋人の関係(特に名前に刻まれた想い)や、老夫婦とウルヴァリンの関係なども、短いながらも心にきちんと残るように丁寧に描かれており、監督の力量が窺われる。
命名の由来のエピソードは完全には理解できなかったが、恋人の“月”と引き裂かれた“ウルヴァリン”は、ローガンの方ではなくて、恋人の方だったというのは面白い。
確かに、孤高となり静かに夜に輝き続ける“月”と、孤独なローガンの姿は少々ダブるところがあるかもしれない。
展開は恐ろしいほど拙速なものとなっているが、極力無理がないように上手く編集されている。
各キャラクターの心情や動機を窺うことができるほど、心の深い部分まではきちんと描きこまれていないのは確かなことだが、エンターテイメント作品なので、この程度でも許されるのではないか。
しかし、ウルヴァリンが記憶を失うという“既定路線”に対して、上手くリンクできなかったことが悔やまれるところか。
「そうなっているのだから、しょうがない」と取って付けたような仕上がりにせざるを得なかったのはもったいない。
“続編”という手段もあるので、あまり急がなくてもよかったのではないか。