28.この映画に出てくるのは、みなどこかしらダメな人たちである。演技が下手な俳優、恋愛に計画性を必要とする真面目な仕事人、詰めのあまいヤクザ。善良なだけの人も、極悪なだけの人も出てこない。しかしこの映画には、散らばった事象が時間とともに集束し、一つの結末に至る過程の美しさが横溢している。完璧な人間はいなくとも、欠けた人間たちの織り成す物語は完璧でありうる。見事な人間賛歌ではないか! 個人的には、広末涼子演じる雑誌編集長が運転するプリウスの映画的存在感に感服した。プリウスは、あの静かなエンジン音のせいで、「すっ」とスクリーンに映りこんでくる。その静けさを、「あたたかな」、「こっそりと」などのイメージとリンクさせながら撮りきった作品を、僕はまだ他に知らない。整合性のなかに散漫さを入れ込むという、この監督さんの追い続けているテーマが結実した素晴らしい作品になっていると思う。 |
27.『運命じゃない人』『アフタースクール』と観てきて、内田けんじ監督の独特の作風に感心していただけにとても楽しみな作品だった。前2作の良さ、監督の作風を確実に受け継ぎ、さらに面白さが格段にパワーアップしていると感じた。『運命じゃない人』も面白かったけど、僕には演技の素人っぽさがどうしても目について仕方なかった。それに比べて『鍵泥棒のメソッド』は、出演陣が独特のキャラクター達をうまく演じていて、とても自然に観ることができた。特に香川照之と広末涼子がよかったかな。この監督特有のプロットの巧みさに、キャラクターの面白さが加わり、尚且つ笑いがあった。そして、胸がキュンとなった。 単に面白い、といった表層的で突発的な笑いではなく、計算され、手の込んだ演出が生み出す笑いというのは重みがあり、心に残る。思い出し、噛締められる余韻がある。今回の作品は、その完成度として、プロット、キャラクター、セリフ、オチ等、全てが上手くハマっていた。よく出来たミステリーを読んだ後のような爽やかで胸に残る余韻があった。また、人それぞれかもしれないけれど、その笑いは僕のツボにもうまくハマったのである。秀作。 【onomichi】さん [映画館(邦画)] 10点(2013-01-29 20:07:18) |
26.「運命じゃない人」「アフタースクール」と見た後の衝撃は、かなりダウン気味。 普通にまあ面白かった映画。もう一度くらいは、見ても良いか。最後で1点プラス。 【竜ヶ沢中段】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-12-16 20:06:34) |
25.「運命じゃない人」「アフタースクール」ばりの内田ワールド満開。意表を付くストーリー展開、スピード感たっぷりの演出、手堅い役者たちの演技(私の苦手な女優も今回はそれなりに)。やっぱり最後は騙されちゃてました。それが快感。 【Q兵衛】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-11-27 13:22:30) |
24.今までのようにラストのどんでん返しがすごい映画ではなかったが、普通によい映画だった。香川照之の演技の幅の広さには驚かされた!! 【しっぽり】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-11-25 19:46:53) |
23.《ネタバレ》 広末に魅力を感じない。それよりも、ちょいちょい登場する女性達のほうが魅力的。まあ確かに地味な女性という役柄ではあるものの、はっとするような色気というか、『おくりびと』の奥さんのような、実家に帰られたら死にたくなるような女には見えなかった。そんな広末に惚れる立場の香川照之ってのも、おまえが広末と結婚かよって首を傾げてしまう。 そんな香川はさすが役者!この前テレビで市川中車襲名披露口上を見たが、歌舞伎の伝統的口上でさえしれっとやってのけられるくらい上手な役者だなあと感じたものだ。堺雅人はいつも以上にあの顔の皺に頼っていた。 内田作品の醍醐味は、なんといっても巧妙に仕組まれた脚本だろう。序盤まき散らした写真が、ラストのきっかけになるとか、車の警告音が胸キュンの音に重ねられていくとか、とにかく巧妙。 これはまるでピタゴラ装置を見ているときのような、神々しささえ感じる。どうやって考えればこんな台本が考えつくのだろう。制作過程を見てみたい。 |
22.《ネタバレ》 「結婚します。相手はまだいません。」冒頭から香苗と社員のやりとりがおかしくて引き込めれます。脚本の完成度が素晴らしく、伏線の回収、予想外の結末がこの監督の真骨頂。今作はそういった部分が少し弱かった気がしますが、主演3人、特に香川照之の演技が素晴らしく、多いに笑わせてもらいました。しばらく車の盗難防止アラームが耳から離れそうにないです(笑) 【nyaramero】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-11-05 17:08:50) |
21.《ネタバレ》 内田けんじ監督&オリジナル脚本の強味は、本作でも発揮されていた。 しかし、脚本の強引と都合の良さも、同時に弱みとして散見されたようにも思う。 冒頭の音楽が、後に効果的に使われるなどの、布石の数々も面白い。 又、「金より恋」という恋愛至上主義的な監督の主張も、最後の最後まで貫かれていた。 それに対し、それらの演出を効果的に見せる為、細かい不自然さについては、観ているこちらも意図的に目を反らすしかないだろう。 なぜなら、この監督の映画を楽しむには、監督に気持ち良くだまされるという姿勢が重要だからだ。 「この部分はおかしいだろ!」とか、「ここの展開は都合良すぎだろ!」とか、いちいちツッコミを入れると、十分には楽しめない。 キャスティングに関して言えば、広末涼子が恋に奥手な女性を演じたのは、少しミスキャストかな、と個人的に感じた。 香川照之はやはり巧かったが、歌舞伎俳優になってから、急に眼光が鋭くなったのは、ひょっとして整形では?と勘繰りたくなる。 境雅人も好演していたように思う。 さて、ここまで発表する作品に、極端なハズレの無い内田けんじ監督だが、少しワンパターン化してきた感がある。 次回作では、是非、新境地を見せてほしい。 にしても何にしても、とにかく香川照之のダサ服装が最高に面白かった! あれは、全くもって似合ってない(笑)。 チェックのシャツと、だぼだぼのジーンズ。 香川照之が着ると面白過ぎ! 【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-18 21:09:19) |
20.序盤のテンポの悪さは若干気になったが、クスクス笑える安定した面白さ。 人生とっかえっこモノとは、また古臭いネタではあるが、この野暮ったさが内田けんじ監督の持ち味であったりするので問題はないか。 堺雅人の表情の作り方が好きな私としては、本作の雅人を観ているだけで、幸せな気持ちになれる。いつも以上に饒舌な顔芸を見せる雅人には、もはやセリフなどいらないのではなかろうか。香川さんのショボくれ若作りもなかなかステキだったけど、雅人の顔芸では全てが霞む。 面白かった!けど、直球すぎやしないか。 監督、もしかして、幸せになってしまったんですか?(失礼) できれば、今度は無名キャストでひねくれた作品を撮ってほしい!もしくは中村靖日、山中聡を再起用してほしい!! ・・・でも、それだと売れないか。 【すべから】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-17 23:08:11) |
19.《ネタバレ》 きれいに作られたノートブックは、人の心を打つのだ。【追記】プロモーション活動で損した映画じゃないかと思う。ポスターや舞台挨拶のときに真ん中にいたヒトが、物語の中心じゃないんだ。 【なたね】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-13 15:06:48) |
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18.《ネタバレ》 今までの内田けんじ作品は出てくるヤクザの描写が余りにもリアリティに欠けていて真面目に観れなかったのですが、今作くらい完全にコメディで通してくれたら全然オッケーです。今作のキャラクター造詣はとにかく無茶苦茶で、ヤクザが金を手に入れただけで簡単に手を引いたり、殺し屋が仕事前に暢気にクラシック聴いてたり、観客が主人公と思っている堺雅人演じる売れない役者が完全に人間の屑だったりします。とりわけ広末涼子演じるヒロインは見ず知らずのオッサンを自分の車で送ったり、数々の無茶苦茶な発言等の為、完全な狂人にしか見えないのですが、それらの現実ではまずありえないような人物描写も劇中の"メソッド演技"に掛けており、この話は完全にコメディでありつつ現実でもあるという作品のバランスにリンクしており上手いなあと思います。ただ皆さん絶賛されている香川照之の演技は個人的に余り好きになれず。最近の彼のオーバーアクトが演技力の高さと言われている風潮はなんだかなーと思います。だってある意味最もメソッド演技から遠い演技じゃないですか? 【民朗】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-08 00:39:12) |
17.《ネタバレ》 人がそこにいるだけで笑いがこみあげてくる日本映画を久しぶりに観た気がします。この監督の作品を他にも観たくなりました。 絶妙の間とか、立ち位置、カメラの視点、空間などいろんな要素が計算されているんでしょうね。 広末がおもむろに結婚宣言。堺雅人がおびえる。香川照之がボロい服に着替える。 なんかもうひとつずつがおかしい。 広末良いなぁ。なんでしょう、あの不思議な空気感。オーバーな演技でも笑顔を見せるでもなく、でもキレイというかカワイイというか。いつの間にか器用な役者になったなぁ。昔から色々と言われる人でしたが、女から見て好きです、この女優。 【denny-jo】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-10-07 20:40:21) (良:1票) |
16.面白い.後味が良い.良作でした! 終始,映画館のみんなで声を出して笑っていました.久しぶりにヒットです. エンドロールの途中で,ワンシーンが入ります.早々に退席しない方が良いです.ワンシーンの後,またメインキャストからエンドロールが始まります. 文房具好きな人は,いろいろ反応できると思います. まず,ツバメノート.普通,病院の売店には売っていませんよ. それから,モンブランのボールペン(イングリッドバーグマン?)とCカンパニーのシステム手帳.美術のセンスが良いです. もう一度,思いだし笑いをしたい方は,パンフレットにすべてのシナリオが書かれているので,お買い求めになるとよろしいかと思います. 【ursla】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-10-04 01:27:00) |
15.《ネタバレ》 ぷぷ やべーすげー面白い もう香川さんが面白すぎる! ジーパンとかチェックのシャツとかとにかく似合ってない(笑) これはキャスティングの大勝利 さりげないしぐさにものすごく丁寧なモノを感じ かつ すごく高レベルな演技力を悟らせないスゴサ こういうのをホンモノというんでしょうね 広末さんも堺さんもよかったです 一言一言が計算されているけど自然で面白い いやー久々に笑ったな~ 終わり方も温かく優しい良いエンディングでしたね 吉井和哉氏の歌も良かった(イエローモンキー時代からのファンなんです)広末さん最高にかわいく写ってます お見事でゴザイマシタ 【Kaname】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-10-03 19:44:09) |
14.入口からこれははまる!と思わせられた作品です。内田けんじ監督は、過去作品はどれも面白く観賞させていただきました。そして今回も最後まで面白く、これは今後監督の代表作になるんじゃないでしょうか。山崎と桜井が直接対決したあたりから少し中だるみしそうになりましたが、終盤巻き返して終わり方も文句なし。それにしても最近観る映画観る映画香川さんが出てる気がする。香川さんと言えば、歌舞伎役者に転向して市川中車になったと思うんですが、俳優として引っ張りだこで、逆に歌舞伎界から敬遠されないか心配です。歌舞伎役者さんも俳優業してますけど、あくまでもメインは歌舞伎の方ですから。香川さんの人生なので何にも言えないけど。でもこの作品で1番光っていたのは山崎演じる香川さんでした。 【Yoshi】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-02 14:14:25) |
13.《ネタバレ》 このサイトで高評価なのを見て、興味をそそられて鑑賞。過去の内田監督作品は未見。コメディーとして、面白く鑑賞できました。 香川さん演じる便利屋の方が話としては中心で、ラストもうまくまとまるのですが、それに引き換え、鍵泥棒さんの方は少し物足りないかな。事件をきっかけに、鍵泥棒さんの方は(クレジット中のおまけシーンは別として)なにか変わったのだろうか? あと、首をくくる動機がお金(生活苦)ではなく彼女の結婚だとすると、鍵を盗む動機がかなり不純になってしまうのだけれど。 【Northwood】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-09-30 18:40:11) |
12.《ネタバレ》 とても良くまとまっていて、良く出来ています。物足りなさ蛇足一切なく、最初から最後まですっきりとまとまっているのは、監督脚本力でしょう。広末演じるヒロインが雑誌社のアルバイト募集の条件に「健康で努力家の人」と挙げ、そのままの男を結婚相手に選ぶ所、無駄がなく説得力があります。バイトにも採用して。確かに健康で努力家の人間に間違いは無い。そんな感じで全てのシーンは無駄なく説得力を持って最後まで繋がっています。心地良いです。前半はふわっとソフトなコメディで、香川に記憶が戻った所から香川×堺の演技対決のような緊張感漂うサスペンスコメディ(?)風に変わります。後半は二人の本領発揮という感じで、別人を「演じる」演技は素晴らしかった。 【ちゃか】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-09-29 15:31:10) |
11.《ネタバレ》 メイン3人は性格の違いこそあれ、いずれも「メモを取る事によって計画を立てる人間」だったりします。そのメモは設計図でありシノプシスでありプロットであり台本であり、つまりそれぞれが「そういう人を演じる事」を常に前提として生きている訳です。日頃から演技をして生きている3人が、更に違う人間の演技をするハメになるというのがこの映画のポイントで、そして見どころなんじゃないかな、って。誰だって多かれ少なかれ日常の中で自分を演じている訳で、でも、じゃあ演じる必要のある無しってどう判断すればいいんだろう?自分にとって大切な事はその演技の中と外とどちらに存在するんだろう?と。そんな日常の中の「人間としての演技」を面白おかしく拡大してヒネって見せてくれるこの映画、大変に楽しませてもらいました。記憶を無くした殺し屋、彼が模索する「自分」に対する違和感が生み出す笑いを香川照之が絶妙な演技で醸し出します。脚本上の仕掛けも上手く機能していてスキが無く。ただ、ちょっとヤクザ部分にザラついた感じがしてしまったのは荒川良々という、およそヤクザの親分には見えない人を起用したためでしょうか。逆に妙なリアリティが出てしまって、このお伽話の世界からややハミ出しているようにも思いました。あと、堺雅人は毎回困った笑顔だけで通っちゃう役柄ばかりですね。も少し幅は無いのかな? 何はともあれ見終わって素直にああ面白かったと思えたこの映画、脚本と、そして何と言っても香川照之の勝利ではありました。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-09-28 23:39:14) (良:1票) |
10.奇跡の話ですかね?石鹸、人を傷付けない優しいヤクザ、人と人の出会い方、偶然の発生する確率、人々の願望とその達成の仕方、などなどなどなど。全てがあまりにも都合が良く、必然性もなく出会うべくして出会い、起こるべくして起こる事が終始積み重ねられていくストーリー。まるで作り手の手が画面に入ってきているかのような圧倒的な奇跡の連続。人物設定に関しても実在感がない記号的でまったくの奥行きのない表層的な設定で、安易で陳腐。これがよく出来た脚本なの?本当に?こんな理屈の伴わない偶然が連続してても?冒頭で、これは奇跡の話ですって始めてカエルを落とすPTA監督の「マグノリア」ぐらい奇跡の話にして頂けないと、まるっきし実在感のない嘘の話にしか観えません。あと、香川さんが「芝居」とは?と考える場面、あれを複線としてなぜあの程度の回収なのだ?せっかくカタルシスに活かせたのに・・・ただ一点、遺書を読む場面は人物逆転劇として映画的でした。 【ボビー】さん [映画館(邦画)] 3点(2012-09-26 23:56:37) |
9.参考書を買っただけで満足して精進しないダメ男、胸キュンセンサーが錆びてきている女、何事もきっちりノートにメモを取り、ひたすら努力しているまじめな男という登場人物たちにとても親近感がわきます。そんな彼らが右往左往しながら少しずつより良い日々に向かっていく様子が軽快で爽快に描かれていて、文句なしに楽しめました。 ふとしたきっかけで何気ない日常が、刺激的で面白い日常に転がって行くかもという前向きなメッセージを受け取れました。 とにかく一番次回作が楽しみな監督は内田けんじ監督です。 【バナナシェイク】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-09-26 23:26:29) |